仕事
ひめが掘り当てた居住スペースへの氷窟を塞いでいた残土は撤去され、舞香らが選出した調査チームが調査に入ることとなった。後は彼らに任せればいいだろう。もし自分の力が必要ならばその時には言ってもらえればいい。
そこでいよいよ、ひめが地表に向けての坑道を掘る計画が本格的に始動する。
それは、万が一にも人間達が暮らす場所に影響を与える訳にはいかない為、<森>の奥の壁をまず水平に掘り進み、数十メートル進んだところでそこからは垂直に、最短ルートで地表を目指すというものだった。
垂直に坑道を掘り進めるなど人間には非常に危険だが、メイトギアである彼女にとってはそれほどでもなかった。もちろん、何十メートル何百メートルの高さになってそこから転落するようなことがあればさすがに無事では済まないから安全対策はするものの、やはり人間よりは頑強なので神経質になる必要もない。
本当はこういう作業は、それに適した<レイバーギア>というロボットがあったのだが、今は彼女しかいないのでやむを得ない。
坑道を掘ることで出る残土は、人間が専門のチームを作り、搬出する。それには、始閣、九縁、宗臣、蓮杖、角泉、釈侍という、十一歳から十二歳の、砕氷を志す少年少女が選ばれた。
六人は皆、まだ学校に通っている段階だが、実習という名目で三人ずつ交代で作業に当たることになる。
ひめから見ればまだ年端もいかない子供達が勉強の時間を削って手伝ってくれると知り、彼女はいたく恐縮した。
「申し訳ございません。皆様の学業に支障を与えてしまうことをお許しください」
しかし、そう言われた六人は、むしろ戸惑ってさえいた。
「いや、これも俺達の仕事だから…」
代表して始閣がそう応える。やはり彼ら彼女らの感覚としては、たとえ子供であっても既にこの世界を支える人材であるという認識なのだろう。そしてここでの完全な庇護対象としての<子供>とは、十歳以下を言うのだった。だから始閣らは、成人こそしていないがもう限りなく大人に近い存在なのだ。
以前、ひめが学舎を訪ねた時に『砕氷になってお前の仲間を探してやる』と言ってくれた子供達も、既に己の目標を見定めた上でそう言ってくれていた。
ひめは思う。
『立派な方々です……』
こうして結成されたチームと共に履帯トラックに乗り込み、<森>が作られた時に敷設された管理道を通り、森の奥の壁へとひめは辿り着いた。
トラックには、掘削の為の道具も積み込まれていた。どれもひめの為に用意されたものだ。発掘品の非常に硬い金属を利用して作られた<バチ型ツルハシ>に似た掘削道具やバールなどがいくつもある。数キロの坑道を掘るのだから、おそらくこれらも消耗品でしかないだろうが。




