新たな計画
掘り当てた居住スペースの中でタブレットAIのニュートに出会ったひめは、これもまた役に立つと思った。自分が地上への穴を掘削している間、自分の代わりにニュートにこの世界の技術を記憶してもらおうと思ったのだ。幸い、有線の充電器が共に置かれていたことで、充電も可能である。そしてこのニュートは、浅葱が見付けたあのメディア、<メモリーカード>が読み込めるものだった。
本体の記憶容量が不足しても、メモリーカードに保存すればいい。ひめと一緒に保管されていたメモリーカードで、浅葱が持ち帰ったものにはまだ十分な空き容量があるものも少なくなかった。その空いた部分に記録させてもらえばいいだろう。
自分が地上に向けた穴を掘っている間に技術を収集するにはどうすればいいかと考えていたがこれによってほぼ解決したと言えるだろう。
できれば自分以外のメイトギアが発見されてくれればそれに越したことはなかったものの、これだけでも相当な役に立つ。
しかも……
「廊下が続いていますね。この先にも施設がある可能性があります。これは出直した上で調査するべきでしょうか」
ひめはそう結論付けて、今回の探索を打ち切ることに決めた。ニュートだけでも非常に大きな収穫だ。慌てる必要はない。
ニュートをバックパックに収納し、ひめは、掘り出した凍土で殆ど埋め尽くされた氷窟の僅かに残された隙間を這って進み、浅葱が掘っていた本道へと抜けた。そこで、手持ちの残土袋に詰められるだけ詰めて、バックパックと残土袋を担ぎ、帰り道を急ぐ。
櫓まで戻ると、残土袋の中の土はシュートに落とし、慌てることなく下って浅葱の待つ家へと帰った。
「ただいま戻りました」
そう言ったひめを浅葱が「おう…」と出迎える。彼女は既に夕食も風呂も済ませて寛いでいるところだった。
少し時間は遅かったが、ひめは、市長の舞香に電話を入れて、テレビ会議を通じて報告したいことがあると告げた。
それからテレビ会議室と化した部屋へと入り、テレビカメラの前で語る。
「本日、居住スペースだった空間を発見しました。その奥にはさらに施設が続いている可能性があります。つきましてはそちらの調査はお任せしますので、私は新たな計画を提案したいと考えます」
「計画…? それは何だ…?」
「私自身が、地表へと抜ける坑道を掘削し、救難信号を発信する為の施設の建設に向けた準備を行いたいのです」
「…な…!? 地表へ、だと…?」
「はい、地表です。皆様方にはおそらくマイナス百数十度となっているであろう地表に出ることは極めて危険ですが、メイトギアである私ならば、簡易な耐候服があれば十分に可能です」




