査定額
ところで、浅葱と同じ砕氷は、現在、五十人ほどが存在する。それぞれ、町ごとに櫓を持ちそこから氷窟を掘っている。ちなみに櫓は人が暮らす場所からは離れて建てられていた。そして氷窟も、原則として居住区の上には掘り進めないことが前提とされている。でないと、天蓋の崩落の危険性が増すからだ。
なお、清見村には全部で七人の砕氷がいる。村はそれぞれ地域によって、<砕氷が多く住む村>、<技術者が多く住む村>、<商人が多く住む村>といった形で構成する住人に偏りがある。清見村は、特に砕氷が多く住む村だった。
しかし現在、氷窟を掘り進める作業を主に行っている者は、浅葱を除けば圭児と遥座および開螺の三人だった。残りの三人は、現在、掘り当てた遺跡から遺物を搬出する作業に余念がない状態である。
浅葱が帰り際に回収しているメディアのように小物であればついでにということもできるのだが、なかなかの規模で大物が多いので、専念することになってしまうのだ。搬出作業そのものは専門の業者がいるものの、氷窟内の作業についてはどうしても砕氷の知識と監督が必要になる。
しかも蒸気用の配管に使えそうな品質の良い配管も見付かったという。これで老朽化が進んだ配管などの交換の目処も立つだろう。おかげでそれを見付けた砕氷は生涯、生活が保障されたも同然だった。
そうなると気になるのが、<ねむりひめ>の価値とそれを発掘した浅葱に対する評価なのだが、実は現時点ではそれはまだ確定していない。どう評価していいのか、価値を算定するべきか、鑑定士や技術者、研究者らが集まって検討している最中なのだ。
「しかし、どう評価すればいいのか…」
彼らは顔を合わすたびにそう言って頭を抱えた。千治参加していたが、彼も他の者達と同様だった。
地熱発電所の危機を救った点からも見て彼女の師である重蔵が受けた<永世名誉町民>を上回る<永世名誉市民>の称号が贈呈されて然るべき発見なのは違いないものの、だからといってひめに天井知らずの価値をつけてしまっては褒賞が払いきれずに経済的に破綻しかねない。なので、今の時点での最も有力な案としては、生涯の生活を保障しようという形が上がっていた。
ただ、市長の舞華の気持ちとしては、
『それでもまだ足りない……』
というのが正直なところだった。浅葱が見付けてくれたひめのおかげでこの世界の当面の危機は回避されたのだ。まさに救世主である。それに対しての褒賞としては不足しているのではないかと思ってしまうのだ。
とは言え、限度というものがあるのももちろん分かっている。彼女の気持ちとしてはそれこそいずれ市長になってほしいくらいの気持ちもあるのだが、市長の職はそういう形で授けられるものではない。あくまで調整役に向いているという実務的な適性こそが重要なのであって、決して名誉職ではないのである。
ちなみに、ここでは既に<政治>というものはほぼ機能していない。人口は僅か七万人しかいないので住民の要望などはそれぞれの村や町の長が拾い上げ、要望という形で市長に提示する。市長はそれらを調整するというのが一番の役目なのだった。




