表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/129

鑑定結果

「じゃあ、開けるぞ…」


浅葱(あさぎ)が持ち帰ったメディアを保管する為のケースと思しきものを受け取った千治(せんじ)が、しばらく縦にしたり横にしたり裏返したりと慎重に確認していた。外側には縦一センチ横五センチほどの黒い縞模様のようなものが描かれているだけで、他には文字のようなものすらなかった。恐らくはこの縞模様が文字の代わりなのだろうと推測されているが、それが何を意味するのものなのかは、鑑定師である千治にも分からなかった。


既に三千年以上の昔、人間が、かつてのこの惑星上で繁栄を謳歌していた頃の文明も技術も、度重なる災害や地下への避難の間に失われ、今では言葉さえ満足に伝わっていない。だからこそ、それを取り戻すべく砕氷(さいひ)達は永久凍土を上へ上へと掘り進むのだ。


外側を確認し終えた千治が、ケースの横にある合わせ目らしい箇所の一部が出っ張った部分に指を掛けて、ゆっくりと力を加えていった。


パカ。という小さな音と共に、合わせ目が広がる。それを見詰めていた浅葱(あさぎ)の胸も激しく鼓動を刻んでいた。


その視線の先で開かれたケースの中には、いくつもの小さな四角い板状のものが整然と収められていた。縦三列、横六列、合計十八個の黒い小さな四角い板状のものを見た千治が、


「これは……<メモカ>というやつだな……」


と呟いた。


「メモカ?」


重蔵が問い開ける。ベテラン砕氷(さいひ)の彼ですら初めて見るものだった。


「おそらくメディアの一種だと推測されてるものだ……ただ現状ではこの中に記されたものは見られない。それを読み取る装置がないんだ」


苦々しく千治が応えると、重蔵が重ねて問い掛けた。


「…と、いうことは…?」


「残念だが、今のところ、あまり大きな価値はない。このケース一つで銅貨三枚といったところか…」


銅貨三枚となれば、一食分にも足りない程度だった。


「……」


その結果に、浅葱(あさぎ)の顔に明らかな落胆の色が浮かぶ。


「せっかくの発見だが、古すぎるんだ。恐らくこれは、我々人間が地上で暮らしてた頃のものだ。だから本当はとんでもない価値を秘めてる可能性もある。しかしこの中に記された情報が読み取れない限りはやはり、な……」


千治自身も残念そうにそう言った。


とは言え、


「壁いっぱいに同じようなのが棚に並べて置かれてた……数だけならかなり。当分の間、メシには困らないかな…」


重蔵を見上げて、浅葱(あさぎ)は精一杯の笑顔を作る。


だが、次に彼女が発した言葉に、千治が明らかに驚いた顔をしたのだった。


「そこには、人間の形をした何かも置かれてた……人形みたいな…」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ