表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/129

救護

この世界の状況と在り様を理解し、ひめは改めて人間達の為に自らを役立てることを決意した。


と言っても彼女はロボットであり人間のような心はない。心はないが、自らの在り様を最適化させることを良しとするという考え方はできる。だから彼女はそうするのだ。


浅葱(あさぎ)から借り受けたバールで氷窟を掘り進め、ひめはまず目先の役目をこなすことに専念した。だが、その時、彼女の表情がハッとなる。


浅葱(あさぎ)! 遥座(ようざ)様の身に何かあったようです! 救護に向かう許可を戴きたく思います!」


自身の氷窟の掘削に集中していた浅葱(あさぎ)にそう声を掛けたひめは、戸惑いながらも「あ、ああ。頼む」という返答をしてくれたことを確認し、まるでネズミのように氷窟を駆け抜けた。そして遥座(ようざ)の担当する氷窟に入り駆けつけると、そこには顔を押さえて倒れ伏した彼の姿があった。


遥座(ようざ)様、お体に触れさせていただきます」


と断りを入れて彼を助け起こした彼女の目に、割れたガラスのようになった氷の破片が刺さった様子が見えた。


あまりの寒さで血は流れ出た途端に凍りつき、そのおかげで出血はそれほどではなかったが瞼に刺さった氷の破片が眼球を傷付けている可能性があった。慎重にそれを取り除き、自らのポケットからガーゼと絆創膏を取り出して傷口に当てる。


こういう事故は決して珍しくない。それによって命を失う者もいるし、命は助かっても砕氷(さいひ)としての生命線は経たれ引退する者もいる。目をやられたとなれば仕事を続けられなくなる可能性も高い。


遥座(ようざ)様、しばらく辛抱してください」


ひめは彼を背負って体にハーネスを掛け、固定する。そして氷窟を慌てずしかし迅速に移動して(やぐら)まで戻った。そこで非常事態を告げる鐘を二回鳴らす。それは怪我人が出たことを知らせる合図だった。浅葱(あさぎ)から聞いていたことを実行したのである。


その鐘の音を聞きつけた者が病院に連絡を入れ、六輪トラックを改造した救急車が櫓の下に駆けつける。そこにちょうど遥座(ようざ)を背負ったひめが下りてきて、救急隊員に彼を引き渡したのだった。


幸い、遥座(ようざ)の怪我は眼球そのものには傷を及ぼすものではなく、瞼を十針縫うことになっただけで済んだ。傷が癒えれば再び砕氷(さいひ)の仕事にも戻れるという。


彼には妻と幼い二人の子供がおり、まだまだしっかりと働かなければいけない時だっただけに大事に至らずに済んで誰もが胸を撫で下ろした。


浅葱(あさぎ)も仕事が終わってからそれを聞き、ひめに言った。


遥座(ようざ)を助けてくれてありがとう。私からも礼を言う…」


そんな浅葱(あさぎ)に、ひめは、


「いえ、これが私の役目ですから」


とただ笑ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ