子供達
学舎で子供達と交流したひめは、満足気に笑顔を浮かべながら学舎を後にした。清見村とその周辺三つの村の子供達が通うそこから、子供達が安全に通えるように作られた<通路>を通って家へと向かう。
だがその時、
「待ってくれ…!」
と後ろから声が掛けられて、ひめと浅葱は振り返った。するとそこには、さっきの学者にいた子供が三人、小走りでついてきているのが見えた。
ひめと浅葱に追いつくと、そのうちの一人の少年が、
「俺、砕氷を目指してるんだ…! 俺もお前みたいのを見付けられるか…?」
と、決して大きな声ではないし弾んだ感じでもないが、力強く確固たる意志を感じさせる声で問い掛けた。
けれどひめはその問い掛けに対して、
「どうでしょう。それは分かりません。でも、砕氷にならないと発掘はできないんですよね? では、見付けたいのでしたら砕氷になるしかないんじゃないでしょうか?」
などと、身も蓋もないと言えばその通りな答えを返した。
だが、ひめはロボットなので<嘘>が吐けないのである。
人間ならここで『必ず見つけられますよ!』と、<方便>や<言葉のあや>としてそういう言い方をするかもしれないが、実際には何の保証もないのだから、『必ず』と断言してしまえば厳密には<嘘>になる。
だから、メイトギアは、
『努力すれば夢は叶う』
とは言わない。
『努力もしないで叶う夢は滅多にありません。努力もせずに夢が叶うのを願うのは、朝、目が覚めたら見ず知らずの人が自分の枕元に大金を置いてくれているのを願うのに等しいと思われます』
とは言ったりもするが。
でも、ひめの言葉に、その少年は目を輝かせるのが分かった。
「そうだな。お前の言うとおりだ……だったらやっぱり、俺は砕氷になる。そしてお前の仲間を探してやる…」
少年の言葉に、ひめはハッとしたような表情を見せた。そんな彼女に、少年と一緒についてきた少女が言った。
「お前は今、一人なんだろ…? 仲間がいないのはさみしいよな。私も砕氷目指してる。私も探す…!」
さらにもう一人の少年も、
「俺もだ。俺も探してやる…!」
と。
すると、少年達の言葉に、ひめが泣いてるような笑ってるような複雑な表情をしつつ、大きく頭を下げたのだった。
「ありがとうございます。皆さんの気持ち、すごく<嬉しい>です。だから私も、皆さんの為にこれからも頑張ります…!」
<心>を持たないロボットであるひめは、当然、<嬉しいという感情>も持たない。ただ、人間に気遣われたことに対する謝意を示すにはその言葉を用いるのが確実であることを知っているので、『嬉しい』と言ったのだった。




