パーツ
「メイトだ…」
「すげえ…」
「これがメイトか…」
突然、学舎を見学しに来たひめに、子供達は口々にそう言って興味深そうに彼女を見た。大騒ぎはしないが、静かに興奮してるのが分かる。
「今日は、この折守市の恩人である<ねむりひめ>が来てくれている。しっかり集中しろ」
言葉だけを見ればきつい物言いにも思える教師のそれも、決して強い感情が込められてる訳ではないので、やはり意外なほど高圧的でもなかった。子供達も特に気にするでもなく指示に従う。と言うよりは、有名な<ねむりひめ>を前にして、いいところを見せようとしているのかもしれない。
それでも、休憩時間になるとほとんどの子供がひめの周りに集まって、少しでもよく見ようとしたり、中には恐る恐る手を伸ばして触れようとする者もいた。
「触っても大丈夫ですよ」
子供達の様子にひめが笑顔でそう言うと、さすがに興味津々だったのかこぞってひめの体に触れてきた。
「柔らかい…」
「さらさらしてる…」
「あったかい…」
口々に素直な感想が飛び出してくる。
確かに、ひめはメイトギアと呼ばれるロボットではあるが、人間と共に人間社会の中に違和感なく溶け込めるようにと、極めて人間に似せて作られている。メイド服にも見えるその外装パーツの下にあるのはロボットとしてのメカニズムであって人間のような体がある訳ではないものの、手足の素肌に見える部分は人間の肌の質感に非常に近い、柔らかくてあたたかみのあるそれだった。
メイド服のような外装パーツも、さらさらとした触り心地のいい仕上げが施されていて、とても機械とは思えない。
「ひめは機械なのか?」
子供の一人が問い掛ける。すると彼女はにっこりと笑って、
「そうですよ」
と屈託なく応えた。
それでも『信じられない』という表情で見る子供達の前で、ひめは、
「ほら」
と言いながら胸の部分のメンテナンス用のハッチを開けて、その中を見せた。
「うわ…っ!」
突然のことに子供達は驚きの声を上げながらも、ハッチの中に覗く、複雑な模様が入った透明な板状のパーツがびっしりと並んでいる様子に、
「おお…!」
という静かな感嘆の声も上げていた。
子供達が想像していた<機械>とはかなり違っているが、それでも明らかに人工物と分かるそれに、ひめが機械であることを納得する。
ちなみに、ひめが子供達に見せたのは、<メインフレーム>と呼ばれる、彼女のシステムの中枢を構成するものの一部分である。そこに見えた透明な板状のパーツ一つ一つが、おそらく今の折守市を支えるシステムのすべてを内包してもあまりある高度な人工知能でもあった。それが、防水の為に特殊な樹脂でコーティングされているのである。
だから機械と言っても、パーツ一つ一つの防水が完璧なので、たとえ内部を水洗いしても故障はしないのだった。




