地熱発電所
『彼らに助力してやってほしい』
市長の舞香にそう言われて仁左及び天振と共に地熱発電所へとやってきたひめは、その施設の老朽化ぶりにまず一言、
「耐用年数を大きく過ぎているように見受けられますね」
と評した。彼女の言ったことは正しい。この地熱発電所が作られた時点での耐用年数は精々二百年。もっとしっかりしたものを作ろうと思えば作れなくもなかったものの、当時はとにかく当面の電力を確保する為に仮の発電施設として建造した為にそれで十分と考えられたのだ。
しかし、その後も技術の失伝は続き、正式な発電所を作る為の計画もままならないうちに結局は頓挫したのだった。
メイトギア自体は決して技術的な専門職を担わせる為に作られるものではないが、ひめが作られた当時でもこのタイプの地熱発電所は非常に簡便なものという認識であり、実際には放射線を電気に変換し電力を得る方式が主流だった。イメージ的に言えば、太陽光発電の太陽光の代わりに放射線を当ててという感じだろうか。これなら、非常に強い放射線が常に存在する宇宙空間であれば恒星が近くになくても発電でき、実は二十一世紀頃に大量に出た放射性廃棄物の有効活用ということを目的に実用化されたものでもあった。
発電効率そのものは太陽光発電に若干劣るものの強い放射線さえあれば常に発電できるという点での実用性が評価され、宇宙に設置された大規模太陽光発電と並んで主力として運用されていた。
だがその発電パネルの製造には高い技術レベルが必要であり、かつ高度な設備を要することから惑星ハイシャインでは早い段階で廃れてしまった。ひめにすればその辺りの技術水準が基本なので、この方式の地熱発電所だと、水車で発電機を回して発電してる程度の認識かもしれない。特別な知識でも何でもなかったのだった。
三基ある発電機の内の一基は制御装置の不調が問題だったが、それも自己メンテナンスの為に自身の構造を理解しているひめにとっては玩具に等しい程度のものでしかない。たちどころに問題のある個所を突き止め、その場で修理してしまった。
次の一基は地下の配管が一部破損しており、蒸気が漏れて出力が安定しなかった。
「防護服はありますか?」
そう訊いたひめの前に持ってこられたのは、非常に旧式のそれだった。
「かなり旧式ですね。ですがこれでも大丈夫です」
などと、捉えようによっては失礼とも言えるかもしれない発言だったが、ある意味では無理もないことかもしれない。断熱性能がひめの知るモノとは格段に差があるからだ。実際、それを着ても人間では破損している蒸気配管に近付くこともできなかった。
技術の失伝によって、ひめが知っているような性能の防護服が作れなかったのである。




