機能
『私も、お手伝いしてよろしいでしょうか?』
ひめのその申し出に戸惑いながらも、浅葱はそれを聞き入れた。
「じゃあ、この辺から十時の方向に向かって掘ってみてくれ…」
方向を指示したのは、あまり適当に掘り進めると他の氷窟にぶつかったり氷窟の強度を下げてしまったりする危険性があるからである。大まかな氷窟の構造は頭に入っており、互いにそれを考慮しつつ掘り進んでいる。やたらとでたらめに掘っている訳ではないのだ。
「十時の方向ですね。分かりました。他の方が掘っている氷窟に影響を与えないように気を付ければいいのですね?」
そう確認するひめに、浅葱が「そうだ…」と頷く。
「承知しました。では、改めて氷窟の構造を把握させていただきます。こちらのハンマーをお借りしてよろしいでしょうか?」
と言って彼女が手にしたのは、普段はあまり使うこともないただの金属製のハンマーだった。「ああ…」と承諾をうけたことを確認し、ひめはそれを右手に持ち、左手と右耳を氷窟の壁に付け、ハンマーで壁を数回叩いた。そして別の壁を同じようにして叩く。それを何度か繰り返し、「はい、分かりました」と告げてハンマーを戻した。
「これで大まかな氷窟の構造が把握できました。あと、この位置から真っ直ぐ三十メートルのところに人工的な構造物による空間があります。私はそちらの方に向かって掘り進めばよいでしょうか?」
と、浅葱が指示したところとは少しずれたところで指を差し、ひめは言った。
「あ…、ああ、それでいい…」
それからひめは浅葱からバールを借りてそこを掘り始めた。決して乱暴ではないが、しかし驚くほどの速さで掘り進めていく。
呆気に取られた浅葱が見守る前で、すぐに体が隠れてしまうほどの穴を掘ってしまった。
だが、あまり一度に掘り進めると、出た土を運ぶのが大変になってしまう。だから浅葱は、
「今日はそのくらいにしておけ…」
と、二メートルくらい掘り進めたひめに声を掛けた。
「承知いたしました」
浅葱に言われて彼女も素直に従い、掘り出した土を残土袋に詰め始めた。普通なら残土袋が一つか二つで済むところが、持ってきた袋では足りず、明日また運び出すことになった。
「あまり一度に掘り進めるのもかえって非効率になってしまいますね」
ひめもそれを理解したらしく反省していた。
そうして帰りにひめが発見された物置でメディアを回収。残土袋も背負って出口へと向かった。
櫓まで戻ると、ダストシュートのようなものがあり、そこに残土袋から土を出して落した。その下は掘り出された土の集積所になっていて、それはまた別の専門の人間が回収し、そこから金属や鉱石を抽出して資源とするのであった。




