同行
「私は浅葱様のお仕事を理解したいと思います。同行することは可能でしょうか?」
朝、自ら食事の用意をする彼女に向かって、ひめはそう静かに問い掛けていた。それに戸惑いながらも浅葱は、
「分かった…ついてこい」
と応えた。あれこれ口で説明するよりは確かに見てもらった方が早いと判断したのだ。そして用意を済ませ、まずは重蔵の家に向かった。裏口に繋がった通路を通って。
「なるほどこうして通路を繋げておけば、極寒の外に出なくても済むということですね」
感心したように、ひめがそう声を上げる。「そうだ」と浅葱は短く答えた。
と言っても、非常に複雑で無計画に作られたそれは、集会所を通じて村のすべての家にも繋がっているとはいえ、先にも言ったとおり外を通った方がはるかに近い場合もあって、必ずこちらを通る訳でもなかった。千治の家に行く際には外を通ったように。
しかし、同時に建てられた十軒ほどの家とはちゃんと考えられて作られているので、こちらを通るのが便利ではある。
「師匠…今日はこいつと一緒に行きます」
重蔵にそう告げて、「おう」と短く返事をもらい、浅葱は改めてひめを連れて櫓へと向かった。彼女には必要なかったが、防寒用のマントを身に着けてもらって。何しろ、裾の広がったスカートに半袖の服を纏っただけで腕も足もそのまま放り出しているように見える彼女の姿は、もう痛々しくて視線を向けるのも苦痛になるからである。
そうして櫓に向かう途中、圭児と出くわした。彼も櫓に向かうところだった。
「連れていくのか…?」
「ああ…」
短い会話だったが、彼女らにとってはそれで十分だった。そこには挨拶も労いも全て込められていたからだ。
それに倣って、ひめも「よろしくお願いします」とだけ声を掛けた。「ああ…」と圭児が応える。
櫓の下にある小屋で改めて防寒装備を身に着け、櫓を上る。小屋の中には開螺の宇宙服を再利用した防寒装備がなかったので、彼女が先に上がっていることが分かった。
圭児には先に行ってもらって、浅葱はそれに続いてひめと共に櫓を上っていく。
高さ百メートルの櫓を上るだけでも大変な行程だった。
「これを毎日ですか?」
ひめの問い掛けに、「ああ…」と短く応える。
続けてひめが「厳しい仕事ですね」と呟くように言ったことにはもう応えなかった。必要ないと思ったからだ。それに応えたところで仕事が楽になる訳ではないし、浅葱自身、これ以外に仕事を知らないので、厳しいと言われてもよく分からなかったからであった。




