共同生活
ユーザー登録を済ましたものの、そのままではバッテリー残量が心許ないので約十日間を要した充電をようやく終えた後、浅葱は自分の家にメイトを連れ帰っていた。
『今後はお前がそれの管理を行え』
十三歳ではあるがこの世界では既に立派な成人扱いである浅葱に管理を任せるのは当然かもしれないが、世界をひっくり返すかもしれないものを自身が預かることについては、身が縮む思いという面もあった。
小さな閉ざされた空間であるここでは、誰かが大きな失敗をしただけでも七万人の命すら左右することもある。それを幼い頃から繰り返し説かれ自覚と責任感を植え付けられるのだ。その所為もあり、彼女達は常に重責を背負わされている感覚が染みついていて、それこそ酒の力でも借りなければ陽気に笑うことすら出来なくなっていたのだった。
そういう世界でも人間は生きている。生まれてきた者の責任として、己の命を精一杯生き、そして死んでいく。ここでは命というものがとても濃密だった。
『何の為に生きるのか?』
そんなことを考える者はまずいない。それを考える暇もないからだ。
『生きているから生きる』
それだけである。
平均寿命四十八歳。少し油断しただけで簡単に死ぬからこそ短い命を精一杯生きることを運命付けられた浅葱の下にやってきた機械の人形。命を持たぬそれをどう扱えばいいのか、彼女は途方に暮れていた。
しかしまず、どちらも『あさぎ』なのが紛らわしい。そこで浅葱は、問い掛けていた。
「お前に名前を付けることはできるか…?」
その問い掛けに対し、<あさぎ>は笑顔で応えた。
「はい。そのようになさる方もたくさんいらっしゃいます。からあさぎ様のお好きな名前でお呼びください」
だから浅葱は迷うことなく、
「<ねむりひめ>…お前の名前は<ねむりひめ>だ……!」
と告げた。それに対して<ねむりひめ>も、躊躇うことなく受け入れた。
「はい、承知いたしました。私の名前は<ねむりひめ>です」
こうして、浅葱と<ねむりひめ>の奇妙な共同生活が始まることとなった。
だがそれは、実は殆どここでは暮らしておらずずっと重蔵と生活していた浅葱にとっても正直、落ち着かないものだった。
「浅葱様、何なりと御用をお申し付けくださいませ」
そう言われても、何を申し付ければいいのか分からない。自分のことは自分でするというのが染みついているこの世界の住人達は、家事でもなんでも他人任せにするという習慣があまりないのだ。結婚してもそれはあくまで<共同生活者>であって、千治のような研究者の場合は助手としての役目をしてもらったりすることがあるだけなのであった。




