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歴史的遺物

「三七三五年前だと…!?」


折守(おりかみ)市市長、舞華(まいか)は、そう声を上げずにはいられなかった。


この折守市の基となる地下都市ができたのは今から約三百五十年ほど前らしいということは聞き及んでいた。だから、遺跡の中から発見されたものであるなら精々それよりは数百年程度古いものだろうと考えていたのに、完全に一桁違ってしまっていたことに理解が追い付かなかったのである。


つまり、この<メイト>は、この惑星ハイシャインが公転軌道を外れ太陽を失い凍結惑星となることになった銀河歴〇三四四年(西暦三〇一七年)より更に三百年近く昔に、それこそハイシャインが発見さえされていなかった頃に造られたということなる。


その辺りの詳しいことは、既に正確な記録が失われているのでこの場にいる誰も知る由もなかったが、それでも三千七百年以上前に造られたとなれば、彼女らにとってはもはや神代の時代と言えただろう。


だが…。


「メイトは、三千七百年もそのように美しいままでいられるものなのか…?」


舞華の疑問は当然だろう。現在の技術で作れるものの寿命は精々数十年。発掘品にはこの市が出来上がる以前からそのままで使われ続けているものもあるが、それにしたって三千年以上となれば想像の域を超えてしまう。


それに対しても<あさぎ>は淡々と答えた。


「私の内部に記録として残っているメンテナンスのスケジュールにつきましては、最新のもので西暦六一〇六年にフルメンテナンスが行われたとあります。その際に、リビルド品や製造当時のパーツを再現したものを用いて可能な限り製造時の状態に近付けようとしたようです。


私どもメイトギアの一般的な耐用年数は百年となっておりますので、私は、メイトギアの歴史を紐解く資料として保存されていたものと思われます」


「資料…?。なるほど…」


そう言われて、一同は納得がいったと胸を撫で下ろしさえした。そもそもが歴史的遺物として保管されていたものが、こうやって再び発掘されたということか。


舞華はさらに問う。


「お前達メイトが人間に逆らう可能性はあるか?」


これもまた重要な点だった。むしろそれが一番重要か。


「その可能性は、ありません。私は自己診断におきましても、バッテリーの劣化は二十七パーセントと高いですが、それ以外につきましては良好な状態を保っていると申し上げます。私どもメイトギアは、人の為に存在するのです。人に逆らうということは、私どもメイトギアには不可能なのです」


「確かか…?」


「はい。私どもメイトギアにはそのような機能は与えられておりません」


その<あさぎ>の返答をそのまま鵜呑みにはできないとしても、この時点ではそれを疑う必要も、その場にいた誰も感じなかったのだった。



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