あさぎ
「メイト…。こうして見るとそんなに途轍もないものとは思えんな…」
千治の家に来た市長の舞華は、台の上で静かに横たわるメイトを前にして、そんなことを口にしていた。
無理もない。見た目には、裾の広がった、<スカート>と呼ばれる大昔の衣装をまとった、華奢な女にしか見えないのだから。
短い袖から伸びた細い腕も、ただただ綺麗なだけで酷く頼りない。つるりとして節もない指などまるで幼い子供のようでさえある。こんなものが本当に世界をひっくり返すというのか…?
とは言え、メイトはそれ自体が<失われた技術の塊>なのだ。その存在そのものが途方もない意味を持つ。
と、言われてきた。
しかし……
市長直轄の鑑定士兼技術者である仙山と鹿丸は、共に四十年の長きにわたって解析を続けてきた専門家として実はその評価には懐疑的であった。
彼らは言う。
「確かにこの市が出来たばかりの頃にはいくらかはこの技術を理解できた者もいたかもしれない」
「だが今ではこれを理解し再現することさえできないのだ。その為の資材もない」
「かつて発見されたメイトを我々は解析した。だが調べれば調べるほど分からなくなる」
「我々の祖先は、いったい、どうやってこんなものを作ったというのだ…?」
そう。ここに詰まった技術を利用できるほどの技術さえ、今は失われてしまったのだ。
ただ、同時に、
「しかし、これがもたらす過去の記録は、我々にとっては<毒>かもしれない…」
「そうだ……かつてこの惑星が楽園のようであったことなど、知らない方がいい…」
「……」
仙山と鹿丸の言葉に、舞華も美園も言葉がなかった。専門家でさえお手上げだと言われてしまっては、ただ無駄に過去の記録をもたらすだけの無益な存在にも思えてしまう。
だが、仙山と鹿丸に比べればまだ若い千治は、二人の意見には納得できなかった。
「私は、あなた方のように諦めてしまえない……
それに、かつて発見されたものと違いこれはまだ動く可能性がある。動くなら少なくとも労働力としては使い道もある筈だ。記録に寄れば人間以上の力を持つという。それをただ捨てるのは惜しい」
そういう千治に、仙山と鹿丸は冷めた視線を向けるだけだった。
「私達も、お前と同じ頃にはそう考えたかもしれない。だがな、調べれば調べるほど益より害の方が多いとしか思えなくなる」
「我々はそれを見過ごすことはできない」
それでも、千治は言った。
「ならば、あなた方自身の目でそれを確認してもらいましょう」
そして、
「起きろ、あさぎ…!」
とメイトに命じた。
その瞬間、ヒューンという微かな音と共にメイトの目が開き、仙山と鹿丸に視線を向けたのだった。




