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惨禍

銀河歴〇三四四年(西暦三〇一七年)。人類の植民惑星の一つ、ハイシャイン(=輝ける星)と名付けられたその惑星で、未曽有の災害が起こった。


これは、正史には記録されなかった、人類の負の歴史の一つである。




人類が太陽系を超えて銀河系へと進出した当時。開発されたばかりの恒星間航行技術(ハイパードライブ)により、宇宙の海を冒険し新天地を目指す、第二の<大航海時代>とも呼ばれたこの時代、火星や木星の衛星イオをテラフォーミングによって居住可能な惑星へと変えた人類は、新たに居住可能な惑星を発見し開拓すべく、各国や巨大複合企業体がそれぞれしのぎを削って太陽系の外へと飛び出していった。


しかし、最初期のそれは、過度な競争による無謀で杜撰な計画に基づいたものも決して少なくなく、それに伴う事故も多発したという。しかも、それぞれの勢力は互いに自らの面子にこだわるあまりその事実を隠蔽。結果として正史には記録されていない無数の悲劇を生み出すこととなった。


この頃、それぞれの勢力は自治を盾に自分達に属する人間を独自に管理してた為に、人類全体としてそれを把握するシステムが形骸化していたことも拍車をかけたのだろう。


正確には三千年が経過した今なお判明していないが、一説ではこの時期に失われた人命は一億人を優に超えるとも言われていた。恐らく、<人災>という意味での災禍としては、これまでで最大かもしれない。とは言え、正確なデータが存在しない以上は迂闊なことは言えないとして、一種のタブーのように扱われていたのだが。


幾度もの破滅の危機を乗り越え緩やかに繁栄を謳歌している人類ではあるが、その裏にはやはり表沙汰にはできない闇も潜んでいるということなのだろう。


惑星ハイシャインに起こったこともまた、その一つだった。


当時のハイパードライブ用の主な機関であった三〇式甲種縮退炉を積んだ入植用恒星間航行船<しおかぜ号>の縮退炉が暴走、重力崩壊を起こし、それによって生じたブラックホールの影響を受けて、惑星ハイシャインは恒星イ三七七を軸とする公転軌道を外れ、イ三七七太陽系の外へと飛び出してしまうという大惨事に見舞われたのだった。


その時点での惑星ハイシャインの人口は一千万人あまり。行政府は直ちに住人の脱出を図るが、準備できた恒星間航行船の定員は、すべてを合わせても僅か十万人。推進機関を備えた一時滞在用スペースコロニーに収容できる人数は、理論値ギリギリまで見積もってもせいぜい二十万人。殆どの住人は、太陽を失い永遠に宇宙を彷徨う自由惑星と化したハイシャインに取り残されることになったのである。


しかもハイシャインの開拓を行っていた複合企業体国家があくまで自力での対処に拘りこの事態を公表しなかったことで地球や他の植民惑星からの救援も届かず、<輝ける星>と名付けられた惑星ハイシャインは、地表の平均気温マイナス百五十度、厚さ数キロの氷の檻に閉じ込められた監獄の如き<凍結惑星>として、災厄から三千年以上が経過した現在でもなお、宇宙を彷徨い続けていたのであった。


また、この失策により、巨大複合企業体<JAPAN-2(ジャパンセカンド)>から暖簾分けする形で独立した複合企業体国家<ネオジパング>(旧名JAPAN-3(ジャパンサード))は急速に力を失い、再び<JAPAN-2(ジャパンセカンド)>へと吸収されることとなったということも明記しておこう。




銀河歴から星歴へと暦が変わり、星歴二二一八年。


凍結惑星ハイシャイン。


人口、七万人。人間の平均寿命、四十八歳。厚さ数キロの氷の檻の下、地熱発電により電気と熱と光を得た人々だったが、大災害に伴う急激な人口減少で知識も技術も失われ、おそらく二十世紀頃の地球と同等の文明レベルを辛うじて維持しつつ、細々と生き延びていた。


しかしそれも、もう、数百年しかもたないと言われている……



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