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満足

突然の<異星からの救助隊>の到着に、現市長の朋夢(ほうむ)はうろたえた。無理もない。前市長の舞華(まいか)から引き継ぎは受けていたと言っても彼女自身はまだ市長になって三年ほどである。単純に市長としての役目については慣れてきていても、こんな事態に対処するのは初めてなのだ。


「これは…前市長に指示を仰がねば…!」


彼女はそう言って秘書らを連れて、前市長が現在入院している病院へと向かった。


前市長の舞華は、その役目を終えてほどなくして体調を崩し、入院することになったのである。彼女の年齢は五十八歳。既に平均寿命を大きく超えて、今のハイシャインでは立派な<高齢者>だった。内臓機能も衰え、恐らくあと一年はもたないだろうと言われていた。彼女自身も、役にも立てずにこのまま生きながらえるよりは、早々に休みたいと思っていたのでその境地としては非常に穏やかなものだったが。


しかしそこに、現市長の朋夢(ほうむ)が驚きの情報とともに訪れたのだから、さすがにベッドに横になってもいられなかった。


体を起こし、


「それは本当なのか…?」


と、すっかり老人のそれになった顔を強張らせて舞華は言った。彼女がひめから聞いていた話では何百年何千年と後になるかもしれないものだったから安心していたが、どうしてそんなことになってしまったのか。


「私はどうすればいいのでしょう…?」


縋りつくように尋ねる朋夢(ほうむ)に、舞華は敢えて厳しい顔で言った。


「今の市長はお前だ。お前がそのような態度でどうする…!」


とは言ったものの、自分も、『自分の代では異星人と接触する心配はないようだ』と思って胸を撫で下ろしたという過去もある。あまり朋夢(ほうむ)のことを言える立場でもなかった。


なので舞華はすぐにその表情を緩め、


「お前の気持ちも分かる。正直、私も動揺している。だが、来てしまったものは仕方ない。とにかくこれから準備する筈だったものをすべて前倒しにし、すぐに実行に移らねばならん。が、その前に彼らとの話し合いだな」


自分達の世界に来た<異星からの客>をまずもてなさなければと、舞華は考えた。


「そ、そうですね。まずは相手と会わなければ話になりません」


ハッと気付いたように応えた朋夢(ほうむ)が秘書らを連れて出て行くと、舞華はゆっくりと体をベッドに横たえながら、


『こんなに早く駆け付けてくれるとは、私達は見捨てられていた訳ではなかったのかもしれない……


そうか…そういうことか……』


自分の考えに一人納得していた。


『ひめ…人生の終わりにまさかこんな贈り物が届けられるとは思わなかったぞ……お前は本当に私達を驚かせてくれる……


思えば有意義な余生だった。私はもう新しい世界を見ることは叶わないだろうが、人々のことをよろしく頼む……』


そんなことを思いつつ満足気に微笑んだ彼女が息を引き取ったのは、その日の夜遅くのことであった。


己の役目を次の世代へと引き継ぎ、やるべきことを全て果たしたかのように満たされた顔をしていたという。



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