蜂の巣をつついたような騒ぎ
「宇宙人…」
「宇宙人だ…」
「宇宙人だな…」
防寒用として宇宙服を着たフィーナQ3-Ver.2002ら六機のメイドギアを見た子供達は、ひめの後ろに隠れつつ顔だけを覗かせ、口々にそう言った。
ひめが着ているのも、開螺から借りた、宇宙服を再利用した防寒着であったが、ひめのそれはあくまでも民生用であって全体的にやや『緩い』印象のある白いそれだったのに対し、フィーナQ3-Ver.2002らが纏っているものは、青味がかった黒で統一された、さらに体の動きを邪魔しないように、精密で繊細な動きが可能なようにより体にフィットして、ヘルメットもどことなくヌメっとした印象のある光沢を持ったスマートなものだった。
それを外しつつ、
「これは失礼いたしました。私共は、セルベリス軍政府直轄特殊事案対応部隊一課所属、第二次<惑星ハイシャイン>捜索隊の、コードナンバーKG18292641、機種名<フィーナQ3-Ver.2002>以下六名であります」
ひめに向かってしたものと殆ど変わらない、非情に堅苦しい軍式の敬礼と挨拶だった。ただこれは、自らの立場を明確にする為の儀礼的なものであり、彼女らがこういう態度しか取れないという意味ではない。事実、そのすぐ後でふわっと相貌を崩し、
「初めまして、小さなエージェントさん」
と、自らの膝に両手をついて上半身を屈め、肩までの銀髪をさらりと揺らしながら微笑みかけたのだから。
その美しさに、三人の子供達は、男の子も女の子も関係なくフードから僅かに覗かせた顔を赤らめた。
『ひめ以上に綺麗だ…』
などと、口には出さなかったが思ってしまったりもした。まあ実際、造形という意味では、親しみやすさを重視してデザインされたひめに比べ、作られた当時は、トップメーカーのフラッグシップモデルであり、<洗練された強さを秘めた美しさ>をコンセプトにデザインされたフィーナQ3-Ver.2002の方が確かに美しかっただろうが。
それでも、<ファーストコンタクト>は比較的良好なものだっただろう。
「彼女達は、皆さんの暮らしをより良くする為に他の惑星から来てくださったんです」
というひめの説明も、子供達を<ワクワク>させた。と言っても、他の惑星では普通である、落ち着きなくそわそわと動き回って群れたり質問攻めにするようなことはなかったが。あくまで静かに興奮しながら、<お伽話の世界からの来客>に興味津々といった素振りを見せるだけであった。
しかしその後の折守市は、それこそ『蜂の巣をつついたような騒ぎ』だった。
無理もない。前市長の舞華の話では、これから数世代後に救援が来るかもしれないという話だったのだから。
ただし、それもやはり、あまり感情を表に出さない折守市市民らだけあって、他の惑星で言う『蜂の巣をつついたような騒ぎ』とは、かなり印象の違うものでもあったのだった。




