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人間の幸福の実現の為に尽くす

「あ…ひめだ…」


坑道の下で待っていた子供達のうちの一人が、副腕を使って下りてくるひめに気付き、そう言った、すると他の子供達も、万が一の落下物に供えて決して真下には入らないが横穴から僅かに顔を覗かせて確認する。


「他にもいるぞ…」


最初に声を上げたのとは別の子が、ひめの更に上から降りてくる人影に気付く。


「誰だ…?」


「上に人がいたってことか…?」


「人…? 上に…?」


子供達が口々に言葉を交わす。あまり動かない、加えて毛足の長いボアでできたフードで大部分が隠されたその顔は表情が読み取りにくいが、明らかに戸惑っている様子だけは分かった。


そうやって子供達が自分達を見上げていることに、ひめだけでなくフィーナQ3-Ver.2002達も気付いていた。音声や僅かに見える顔から推測される表情が、彼女達が持つどの類型にも当てはまらないことを確認する。


声の質や顔つきから類推される年齢に比べ、実際に見せる反応がまるで『子供らしくない』。もはや老人のように老成した者のそれでさえある。


『これは確かに、まず彼らのことをよく知らなければ混乱が生じますね』


フィーナQ3-Ver.2002のAIも冷静にそう推測した。


『私があの子達に皆さんのことを紹介します。あまり刺激を与えないよう、警戒心を煽らないよう、控えてください』


ひめの指示に、『承知いたしました』とフィーナQ3-Ver.2002が応える。この場は<ひめ>の指示に従うのが最良だと彼女達も判断する。


こういう場合、完全にひめの指揮下に入る為に<リンク>によって思考を統一し、『複数の体を持ちつつ実際には一体のロボットとして機能する』という選択が行われることもあるのだが、何しろシステムの互換性が完全に失われてしまった旧式なひめでは、フィーナQ3-Ver.2002達とはまったくリンクができなかった。なので、非効率的ではあるが、通常通信によって常時思考のすり合わせを行うこととした。


三千年の時間は、ひめとフィーナQ3-Ver.2002らとの基本性能すら、戦闘機で例えるならF-100スーパーセイバーとF-15イーグルほどの差を生み出していると考えてもらえばいいかもしれない。加えて、ひめはあくまで一般仕様のメイトギアなので、戦闘面で言えば、それこそ家猫と野生の虎くらいの差があるだろうが。


一応、ひめもユニバーサル規格が統一されてから開発されたものなので、規格や部品の構成には共通する部分もあるものの、まあ、ロボットとしてのステージはもはや別世界と言っていいだろう。


それでも、AIの基本的な思考の部分ではどちらも『人間の幸福の実現の為に尽くす』という理念は一致しているので、ひめとフィーナQ3-Ver.2002らの間では大きな齟齬は生じないのだった。



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