負けないように
ロボットには<感情>がないので、同じ作業を延々と繰り返すことに苦痛は感じない。それがどれほど不毛な作業であっても、『やめろ』と言われるまでは続けることができてしまう。しかしそれは、ただ同じことを繰り返すだけで、そこに努力を加えることで状況を変えていこうという思考を行うのは、実はロボットが苦手としているものだった。
作業の効率化を図るなどについてはできても、新しい発想などを持ち込むということができないのだ。そういう思考を、人間は敢えてAIやロボットに与えてこなかった。Aiやロボットはあくまで道具てあるということで。
これによってロボットと人間の関係は改めて確立されたということと言えるだろう。
『道具(ロボット)と、それを使う者|(人間)』という関係が。
だからロボットは、人間に尽くすことにある種の<喜び>を見出す。感情は持たないが、それを好ましいと考えることはできる。
ここの人間達の為に尽くそうとするひめがまさにそれだった。
そして人間は、そんなひめの為にと、日夜、創意工夫を繰り返す。これはある意味、『道具をより上手く使いこなす為に努力している』とも言えるのかもしれない。
人間達自身はそこまで自覚してはいないかもしれないが。
しかし、だからこそひめは『敵わない』と考えるのだろう。
<開螺の防寒着>を得たひめは、自身の機体に掛かる温度による負荷を低減させることができ、新たに得た副腕とも合わせて一層、作業に打ち込んだ。
そんな彼女の下に訪ねてくる者達がいた。始閣、九縁、宗臣、蓮杖、角泉、釈侍である。
自身の仕事が休みの日などに、ひめの作業が終わる時間を見越して、様子を窺いに来るのだ。
「どうだ? 変わりないか?」
と。
彼らも既に砕氷や調査・研究員として働いている。それぞれ背も伸び、顔つきもあどけなさを残しつつ立派な<成人>として凛々しいものになっていた。
だが同時に、ひめを前にすると、ここで作業をしていた頃とあまり変わらない幼さも垣間見せたりする。彼らにとって決して挫けることのないひめはある種の<憧れ>であり、目指すべき目標ともなっていたのだから。
『ひめに負けないように頑張りたい』
それが彼らの合言葉のようになっていた。
「俺達も、ひめのように働きたい」
「いつか私達の仕事ぶりも見てほしい」
代わる代わるやって来ては、そんな風に話しかける。そしてその<先輩達>の姿を見て、今、ここでひめの作業の手伝いをしている子供達もまた、自分のあるべき姿を学ぶのだろう。




