進入
「まず中を確認してみるか…」
そう言って重蔵が浅葱の掘った小さな穴に潜り込み、その奥で床が抜けたようになった穴に照明を下した。それは充電池によって灯るランタン型のLEDライトだった。
壁に沿って設置された棚の上にまずランタンを降ろし、中を照らす。しかし角度が悪くしっかり部屋の中を照らせない。それでも取り敢えず危険がないことを確認し、かつどのように穴を広げればいいのかを確かめて、圭児と遥座に穴を広げる大きさと角度を指示した。
「応」
二人は声を合わせて応え、それぞれ道具を出した。圭児のそれは一見するとただのナイフのようにも見えたが、柄の部分からコードが伸びて背中のバッグに繋がっていた。また、遥座のそれは明らかに工事用のハンマードリルと呼ばれるものだった。こちらもやはり伸びたコードが背中のバッグに繋がっている。
まず、遥座が浅葱の掘った穴を広げていく。そして削られた凍土を、圭児、重蔵、浅葱、開螺がリレーして氷窟の端へと除けていく。
非常に固い高強度コンクリートでも容易に斫るハンマードリルの威力はさすがで、重蔵では潜り込むだけで精一杯だった小さな横穴がみるみる広げられ、軽く腰を屈めるだけでも入れるほどのものになった。
だが、最後の方は明らかにドリルの回転が落ち、威力も失われていたのが分かる。バッテリーが尽きたのだ。浅葱が使っていた<びしゃん>に比べれば威力は圧倒的だが、使える時間が短いという大きな欠点がある。再びバッテリーを充電してこなければ今日はもう使えない。
そして遥座が退くと、今度は圭児の出番だった。ナイフを構えると、僅かに何かの音が聞こえる。ナイフ自体が発してる高周波の音であった。鉄でさえバターのように切れる超振動ナイフだった。しかしこちらも、バッテリーに繋がなければむしろ切れ味悪いナイフでしかないが。
それでも、バッテリーがあるうちはやはり強力で、物置と思しき空間の天井に空いた穴をスーッと広げていった。ただ、ハンマードリル以上に電気を消費するそれは、三十秒ほどしか使えなかった。
とは言え、小柄な浅葱でようやく通れる程度の穴だったそこは、がっしりとした体格の重蔵でも楽に通れるものとなり、ランタンで中を照らしつつ、重蔵は慎重に棚を梯子のように使って中へと入っていく。
「むう……」
床へと降り立った彼がランタンを掲げて見、思わず唸ったのは、浅葱が見付けた時そのままで壁に立てかけられた女性の姿をした<それ>であった。




