もうまじか。転生とか小説の中だけだと思ってたのに4
「…………なあ」
せっせと倒しまくった諸々を直している目の前の女神に問いかける。
「私はなんで死んだんだ?」
そう問うと、無言で手を動かしていた彼女は手をとめてこちらを振り返った。
「何?死因ってこと?それともなぜ死ななければいけなかったのか、みたいな理由かしら」
そんなのあるのか。マジか。
「どっちも」
別に聞いておいて損は無いだろうしな。一応両方聞いておくか。死因を聞くつもりだったんだけどな。
「そう。じゃあ教えてあげようかしら。もっとも、貴女には散々凌辱されてしまったから教えてあげたくもないのだけれど、コレばかりは規則だから仕方が無いわね」
おーいwww
まてまてまて。
凌辱ってなんだ。まるで私が【自主規制】みたいなことをしたみたいじゃないか。そんな有らぬ誤解を招くようなこと言われても困るわー。そうだこれはあれだ、「名誉毀損」ってやつだ。よし、訴えてやろうこいつ。おまわりさーん、こいつです。
「……………変な事考えると教えてあげないわよ?」
「……サーセン」
具体的な内容を言わないあたり、恐らく脳内再生の全ては聞こえてないのだと思われる。彼女の能力の限界はよく分からないが、さほど広くはないんでは無いだろうか。
けれど流石にここでふざけるほど馬鹿ではない(つもり)なので、ひとまず謝っておこう。実際は露ほども悪いなんて思っちゃいないがな。
「多分気づいてると思うけれど、貴女の死因は『過労』だったわ。道端で意識を失ってそのまま、ってこの死亡者リストに書いてある。…………えい♡」
そういって蛍光カラーの分厚いファイルをなんと投げつけてきやがった。
「うおおおおおおおおっ!?あっぶねえぇぇぇえ!」
死ぬ気で回避に成功した。やっべえ!自分天才じゃね?!……………もう死んでるけど。やっべえな、これが神回避ってやつか!……………目の前に文字通り女神がいるけど。
そして私に当たり損なったその重厚なファイルは壁に激突し、派手な音を立てて粉砕した。
ええええええ、良いのかよあれ、結構大事な書類っぽくね?!やばくね?!そんでもってそんなもん投げつけんなよ、死ぬだろ?!いやもう死んでるけどもう1回死ぬレベルで豪速球だよあれ?!しかもなんで蛍光カラーだよ!おかしいだろwww普通それっぽく真っ黒にしとけよおーいwwwそしてその罰として女神処刑されるとか辞めてよ!?絶対グロいじゃん?!でもどうせやるなら私の前でしてよね!
ちなみに言い忘れていたが、この空間は全て真っ白な壁で構成されている。その中に今彼女が整頓したような小さな棚や、出されたままのちゃぶ台などが寂しそうに鎮座しているだけの空間は、はっきり言ってかなり殺風景だ。
………………どこがファンタスティックだよおーい。
「あれヤバくないの!?アンタ殺されたりしないの!?」
「別に大丈夫よ。ほら、見てご覧なさい」
ちょっと焦った振りをしてみてやるも、目の前の女神はすまし顔でパチンと指を鳴らした。
すると、あちこちに本棚が出現し、見る見るうちに大量の恐らく先程粉砕したものと同じファイルが収納されていく。
その内のひとつをパン、と叩き、彼女は満足げに笑った。
「どう?こんなにあるんだから、1つくらい無くなってもどうって事無いってわけ」
いや需要!!!その需要は!?www2つや3つならともかく、そんな阿呆みたいに要らんだろう。いくらなんでも。それともあれですか、貴女は『うわあああああああああああい!いっぱいありゅー、あたちしあわせ♡』みたいなとにかく質より量系女子なのかな?
うんうん、どんな理由にせよそれは良くないぜ?私は量より質派なんだよ。
ひとりで勝手に納得していると、眉間に皺を寄せた彼女がぷぅ、と頬を膨らませた。
「ちょっと!まだ話はまだ終わってないわよ!自分で聞いたんだからちゃんと最後まで聞きなさい!」
おお、めずらしく可愛いな。ちょっと女神っぽいぞ。
「あーハイハイ、でなんだっけ?死因は聞いたよな?じゃあ死んだ理由的な?」
「そうよ。貴女、ライトノベルって知ってるかしら?」
あ、そこは怒らないんだ?ちょっと意外。
「え、あ、ハイ、多少は」
どういうことだ。何をどうすればライトノベルが出てくるんだ?もしやあれか、女神さんはライトノベルが好きなタイプか!じゃあすまないな、私はそこまでラノベはよく知らn
「別にそこまで好きじゃないわ」
「エッ聞こえてたの?!今のはばっちり聞こえてたの?!」
「そのテンプレよろしく貴女には異世界へ転生して欲しいの」
「エッ無視?!無視しちゃう系?!」
あれか、これは俗にいう放置プレイってやつだな!マジかぁ、美女にされる放置プレイはさぞ愉しいとかほざいてたやつ誰だよ、全然楽しくないぞ!?