4話 キャラクターメイキング!
「こんにちわ! ティファニアさん!!」
「うん。森羅、こんにちわ」
私が元気良く挨拶すると、ティファニアさんは軽く微笑んで返してくれた。あの日、沢山おしゃべりしたお陰で私と彼女の距離はかなり縮まった。随分と口調も砕けてきたし、彼女の事も沢山聞く事ができた。例えば彼女は釣りが大好きで、時間を見つけては釣りに出掛けること。表情に乏しく、話すのが苦手なので友達がおらず、私が仲良くしてくれて嬉しいのだと話してくれた。……勿論、その時の私が悶えたのは言うに及ばない。
「今日は最後まで設定をするの?」
前回までにある程度、どのように設定するか話していた。だから今日は殆ど決めてあるものを実行するだけだ。でも、そうするとティファニアさんとは離れ離れになる。私同様寂しく思ってくれているのか、ティファニアさんの声は悲しげな響きがあった。
「うん。でも、これで最後じゃないですよ! ティファニアさんも、ここ以外の『インビティウス』の世界に来れるんですよね? だからきっとまた会えます!!」
寂しさを誤魔化すように、努めて明るい声で言う。それが功を成したのか、ティファニアさんは表情を緩めてくれた。
「うん……。きっと、会える。そうだね」
そうして二人で笑いあった。
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「……これで最後。この中からポイント分だけ好きなスキルを取得して」
あれから順調にクラス・種族・ステータス振り分け・容姿設定を終えて、この初期スキル設定を終えたらもうキャラクターメイキングは終了になる。私は寂しさを感じながらも初期スキルを設定していく。
「これでいい?」
「……うん。大丈夫」
初期スキル設定も終え、後はもう『インビティウス』の世界に旅立つだけとなった。私の目の前には、空間の捩れたゲートが広がった。
「……じゃあ、そろそろいくね」
「そうだ。戦闘のチュートリアルがある。一緒にやろう?」
「ううん。私は戦いはやるつもりがないから、ごめんね」
多分、少しでも長く一緒にいるためなんだろう。そういってくれるティファニアさんに私は辞退した。既に長時間彼女の時間を拘束している。多分だけど、彼女のガイドを待つ他の人達もいるだろう。あまり、彼女を独占し続ける訳にもいかない。
「大丈夫だよ。必ずまた会えるから。それまで待っていて」
私が言うと、彼女は身体を震わせた。ここまで思ってくれるのが嬉しい反面、別れるのが寂しくなる。でも、それも仕方の無いことかもしれない。彼女は私以外に友達がいないし、私も事故の後には友人と呼べる人は居なくなってしまった。私の場合は自業自得だが、お互いを唯一無二としているのだから、離れがたいのは当然のことだ。
それでも、また会えると信じているから、一度別れようと思える。でも、ティファニアさんがいうには、彼女の居る所まで行くのはとても厳しい道のりらしいのだ。だけど、私もティファニアさんに再び会う為に、ティファニアさんに再会する為のスキルを、種族を、クラスを選択した。時間は掛かるかも知れないが、絶対に彼女の元に会いに行く。
それでも、寂しかったのだろう。彼女は最後に、身体を押し付けてきた。
そして、
「……『黄金の火の宿る滝』にいるから、絶対会いに来て」
耳元で囁かれた言葉に目を丸くする。前に居場所を教えて欲しいと言ったら、具体的な場所を教えることは禁じられていると教えられた。どこの誰に禁じられているとは言わなかったものの、頑なに教えてはくれないので、話せない事情があるとして、自分の力で探すことにしたのだ。
話してしまって大丈夫なのかとか思うことは沢山あるけど、でも残り短い時間は一番伝えたい思いを伝えることに使いたい。
「絶対に会いに行くから! またね!!」
そして、私はとうとう『インビティウス』の世界に足を踏み出した。
11/13大幅に改行を加えました。
森羅はティファニアを独り占めしてはいけないと思っていたが、実際には超加速空間での作業となっているので、森羅の相手をした後でも十分他の人の相手が出来る。他方、ティファニアは森羅といつまでもお話ししていたいと思っているが、その為に森羅のゲーム世界での楽しみを邪魔してはいけないと思って身を引いた。