3.5話 ティファニアと森羅
「こんにちわ! ティファニアさん」
「こんにちわ。森羅」
私の元気の良い挨拶に、ティファニアさんは薄く微笑んで挨拶を返してくれた。昨日のあれこれでは、まったく本題に入ることが出来なかったから、今日こそはきちんとやらないといけない。
むん、と気合を込めると
「そんなに気合いれなくても大丈夫。ちゃんと、教えるから」
そう言って、ティファニアさんは微笑んでくれた。やっぱり、ティファニアさんって優しい。あ、ティファニアさんが若干片言のようになっているのは、こっちが素の話し方なんだって。最初の丁寧な話し方は結構無理してたんだって、昨日教えてくれた。結構仲良くなれてるんです。ふふん。
「ありがとうございます! あの。ティファニアさんって本当に優しいですね!」
私が言うと、ティファニアさんは相当驚いたようで目をまん丸に丸めた。……そんなに驚くことかな? ちょっと話しただけでティファニアさんが優しい人だって、すぐ分かったし、驚くような事でもないと思うけど。
「……そんな事、初めて言われた。でも、なんで? 私、何も優しくしてない」
ティファニアさんの言葉に、逆に私が驚いた。
「えっ、だって、いきなり泣き出した初対面の人に何も言わずにずっと付き合ってくれて、泣き止んでからも嫌な顔一つしないなんて、優しい人じゃないとできないですよ!」
「何も言わなかったのは慰める言葉が出てこなかっただけ。嫌な顔ををしなかったのは、泣き止んで安心したからで、別に優しくしたわけじゃ……」
そう言って泣き出しそうな顔をするティファニアさん。って、なんでそうなるのかな?
「慰めようとしてくれたのなら、優しいじゃないですか。私が泣き止んで安心してくれたんですよね? それって初対面の私を心から心配してくれたってことじゃないですか。それこそ、優しい人じゃないとできないですよ。私、ティファニアさんに会えて良かったです」
私がそう言うと、ティファニアさんはおずおずとこちらを見た。
「……そんな風に言ってくれたの、初めて。私上手く話せないし、表情もあんまり変わらないから、すぐ誤解されて友達がいなかった。もし、森羅が友達になってくれたら、嬉しい」
「本当ですか!? 私も友達いないんです。私は自業自得なんですけど、でも、ティファニアさんが友達になってくれるなら嬉しいです!!」
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友達になった後、私達は様々な雑談を楽しみながら話していた。趣味や特技、好きな食べ物やら嫌いな物まで色んなことを話したが、最終的に共通の話題である『インビティウス』の世界のことや、どんな風にキャラクターメイキングするかに会話は移っていった。
「……うん。最初に森羅が行くことになるのは、『インビティウス』の南東にある大陸『フリンゲル』。その中でも特に最南端に行くことになってる」
「そうなんですかー。じゃあ、ティファニアさんがいるのはどの辺りなんですか? そっちに居る時もあるんですよね? 絶対会いに行きますから、教えてください!」
そう。ティファニアさんは、ここで私達プレイヤーのガイドもするけど、普段は『インビティウス』の世界で暮らしているのだ。だから、私としてはゲームを始めたら、すぐに彼女に会いに行くつもりだった。けれど、彼女は首を横に振った。
「……ごめん。具体的な場所を言うのは、禁止されている。でも、簡単には会いにこれないところ」
彼女はしょんぼりと落ち込んでしまった。慌てて私は言う。
「大丈夫ですよ! たとえ情報が無くとも世界中飛び回って絶対にティファニアさんに会いに行きますから! 約束します」
これは半分以上本気だ。私としても彼女としても、お互い唯一の友達。再び出会うために全力を尽くす事に何の依存があろうか?
「だからこそ、再び再会するためのスキルを、種族を、クラスを決めましょう? 教えてくれますか?」
「うん……うん。もちろん。絶対教える」
ティファニアさんはぶんぶんと、頭が取れちゃうんじゃないかと思うくらいに振って、肯定を示した。それから、咲き誇る満開の笑顔を見せてくれた。
「絶対教えるから、だからね?」
絶対に会いに来て。その思いを受け取り、それを実現させる為にどうしたらいいか。私達は二人で話し合った。
11/13大幅に改行を加えました。