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3話 キャラクターメイキング?

無事にセッティングを終え、VR世界にダイブするとそこは周囲を大森林に囲まれた白亜の神殿だった。そして、神殿の奥、おそらくはご神体らしい剣の前には、美しい少女が立っていた。


 「あの、ここ、本当にゲームの世界なんですか?」


 私はついそんな質問をしてしまった。それぐらい、この世界はリアルだった。風の音も、緑の匂いも、かつて自分が感じていたものと寸分変わらぬものだった。違和感も無く、むしろ違和感を探す方が難しい位の、そんなリアルな質感を持った世界が目の前に広がっていた。


 「えぇ、間違いなく」


 少女が答える。

 褐色の肌と、対照的な白銀の長髪。どこか神秘的な雰囲気を持つ少女だった。現実ではありえない程の美人。けれど、虚構の存在とは思えない自然さがあった。


 「ここはVRMMORPG『another world online』の世界への入り口。あなたはここで『another world online』の世界、『インビティウス』での()()()()()を創っていただきます」


 『インビティウス』は、このゲーム内の世界の名だ。プレイヤーは『インビティウス』の世界を回って、古代の文明に隠された謎を探ることを目的にしている。ということを、大森さんから聞いた。最もこれは公式がそうだというだけで、別に一箇所から離れず、古代文明のこの字も出さずに遊んでもそれはプレイヤーの自由だ。


 「では、こちらにどうぞ」


 少女がいつのまにか椅子を持ってきて、剣の前に用意してくれた。待たせるのも悪いと思い、私は一歩を踏み出した。


 「……えっ?」


 私は、驚いて足を止める。

 歩く事はおろか、立つ事さえ、出来なくなってしまったのに、ずっと車椅子か寝たきりだったのに…………私は今、確かに自分の足で歩いていた。

 信じられない気持ちに囚われる。けれど、私は確かに歩いていたし、今も自分の足で立っている感触がある。


 耐え切れず、涙がこぼれてくる。突然目の前の人が泣き出したのだから、少女も驚いているだろう。それでも、涙を抑えることができない。

 これはゲームで、現実ではない。でも、それでも構わないと思う。

 自分の足で地面を踏む感触がある。それだけの事に私は涙が止まらなくなってしまった。少女は戸惑った様子だったが、それでも何も言わずに私の気が済むまで傍にいてくれた。


 ***

 「落ち着きましたか?」

 「はい……すみません」


 結局私はあれから一時間もの間、泣き続けてしまった。もう、あまりに恥ずかしくて、彼女の顔を見られない。絶対対応に困っただろうに、、彼女は特に気にした様子も無く、ただ傍にいてくれた。ありがたいと思うと同時に申し訳なさが込み上げてくる。


 「あの、ごめんなさい。突然泣き出しちゃって……」

 「いえ。気に病む事はありません。素直な感情の発露は好ましいと思います」


 少女は表情を殆ど変えずに言った。ひとまず、そこまで悪く思われなかったようで、安心する。


 「……ですが、もし私達の不備で嫌な思いをさせてしまったのなら、申し訳なく思います」


 けれど、続けて言われた言葉に私は慌てて言った。


 「そんな! 嫌な事なんて何も無かったです! その、さっきは感動して泣いてしまっただけで……!!」

 「そう。それなら良かった……」


 そうして、薄く微笑んだ少女は恐ろしい程に美しく、一瞬見惚れてしまって固まってしまった。


 「? どうしたの?」

 「いっ、いえ! 何でもないですっ」

 「なら、いいけど……」


 少女は不審げな表情をしていたけど、それ以上深くは突っ込んでこなかった。それから私は話を切り替えるべく、話題を探して肝心なことを聞いて無かった事を思いだした。


 「そうだ! 名前。まだ聞いて無かったですよね。私は暁 森羅です。あの、あなたは?」

 「ティファニア。竜人族で、『another world online』のガイドをしています」

 「ティファニアさんですね! よろしくお願いします!!」


 頭を下げるとティファニアさんの少し硬質な手が頭に乗せられる。そして、優しく撫でられた。


 「えぇ、よろしくお願いします」


 ……やばい。折角泣き止んだのに、また泣きそうだ。弱っている時にこんな優しくするのはずるいと思う。でも、流石に二回も大泣きしたら、ティファニアさんに申し訳無いから、そこはきっちり我慢する。


 「あ、あの、ごめんなさい。お待たせして。もう大丈夫ですから、えっと、キャラクターメイキング? 教えてください」


 私がつっかえながら言うと、ティファニアさんは、少し考える素振りを見せてから言った。


 「本当に大丈夫? 疲れているなら、別に今度でも構わないから」

 「そ、れはありがたいですけど……。でもご迷惑では…………」


 どこまでも甘えさせてくれるティファニアさんに、だからこそその厚意に甘えてはいけないという覚悟は、


 「ううん。その分、森羅と一緒に居れるから、嫌じゃないよ」


 そんなティファニアさんの甘い一言と笑顔で砕け散った。

 

 結局私はその日は雑談を楽しむだけ楽しんで、キャラクターメイキングは後日に持ち越した。申し訳ない気持ちもあるが、それ以上にティファニアさんと仲良くなれたことが嬉しかった。

 

 


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