2話 大森さん
「ほほぅ、ゲームですか」
大体の事情を話し、セッティングを頼むと大森さんはにやりと笑った。
大森さんは、家政婦だ。私の両親は仕事で忙しく、中々家にいることが出来ない。それでも昔は私が何とかやっていたのだが、数年前に事故にあって以来、流石に私一人でどうにかするのは無理になったので彼女に家事をやってもらうことになったのだ。他にも数名、ローテーションを組んでやって貰っているが、私が一番信頼しているのが大森さんだった。
「実はですね。私もゲームが好きでねぇ。その『another world online』もやっているんですよ」
実に良い笑顔で言ってくるので、私は少々驚いてしまった。勝手な考え方かも知れないが、ゲームは子供のやるものだと思っていたのだ。大森さんは既にちゅうね……げふん、げふん。大人の女性である。それに仕事も真面目で、そんな彼女がゲーム好きだとは思えなかったのである。
「あぁ、とはいってもVRゲーム限定だけどねぇ。最近の奴は凄いリアルに作られているから、ちょっとした小旅行の気分を味わえる……というか、むしろ現実より凄い景色が見れる時があるからねぇ」
私の戸惑いに気付いたのか、大森さんは目を細めて笑って教えてくれた。
なるほど。そういう楽しみ方があるなら大森さんがやっているのも分からなくはない。しかし、そこまでゲームの世界がリアルに作られれているのだろうか? 私が疑問をぶつけてみると
「そりゃぁねぇ。とはいえ、あの感動は直接足を運ばないと分からないだろうね。森羅ちゃんがやるなら、私が案内してあげようかね」
そういって、大森さんはゲームの機体を手に持って、
「そうと決まれば、ちゃっちゃと準備しちゃうから、そうしたら一緒にやろうか」
とても嬉しそうな顔を浮かべてくれた。
11/8ゲームタイトル変更しました。
11/13大幅に改行を加えました。