15話 二日目終了
街に帰った後、私は朝に入ったカフェでディアさんと待ち合わせした。
「しかし、本当に速かったわねえ……さっき話したばかりだったのに、もう戻ってくるなんて……」
私が店に入ると、先に待っていたディアさんが驚いた表情を見せた。そんなに凄いのだろうか? でも、『走る』ことに特化した『ランナー』なんだから、他のクラスよりこの点についてはかなり優遇されていてもおかしくない。私はそんな事を思いながら、カウンター席にいるディアさんの隣に腰を下ろした。
「じゃあ、はい! これが依頼の『青海草』『蓬莱花』『シークのツル』です! どうぞ、お受け取り下さい!」
私がアイテムバックから出すと、ディアさんは苦笑した。
「ありがとう……しばらく、スキルレベル上げの機会になると思ったんだけどねぇ……一日で終わらせるとは」
ディアさんは小声で何事か言っていたが、それでもありがとうと再び言って、
「それで、報酬のことなんだけど、実はシーラちゃんの装備を渡そうと思っていたんだけど、まだ完成してなくてねえ。ひとまずは現金だけで許しておくれ」
そう言うと私の前に【ディアレスト・フォレスターから現金1200円の支払いがありました。受け取りますか?】と出た。私は迷わず「はい」を押す。すると、所持金が増えた。ちなみに現在の所持金は1250円。ようやく、所持金が増えた事に一心地すると何故か忘れている事があった気がしてくる。
そして、思い出す。そうだ、私まだ最初に受けたクエストクリアしてない!
あんまりショックが大きかったために忘れていた。期限切れてないかと思ったが、常駐依頼には基本期限は無いというので安心した。ひとまず、ディアさんとのお話しが終わったら行ってみようと思った。
「あぁ、そうだ。他に何か素材があるなら、買い取るよ。何かあるかい?」
ディアさんが聞いてきたので、私はアイテムバックから『緑草』を除き、『サファイア・ローズ』『森の熊の毛皮』『熊の肝』『猪の牙』『木の枝』、それと依頼で頼まれていた物のプラスαを出した。
ディアさんは、その中でも『サファイア・ローズ』と『熊の肝』に興味を示した。特に『サファイア・ローズ』はかなりレアなアイテムで、『蓬莱花』の青バージョンよりも価値があるらしい。最初青い『蓬莱花』でない事にがっかりしたが、逆に良い物を引き当てていたとは……。
ともあれ、ディアさんと話し合った結果、『青海草』の一部を残し、それ以外の全てをディアさんが買い取る事になった。回復薬として使える『青海草』はともかく、それ以外は私が持っていても使い道が無い。精々、『サファイア・ローズ』と『蓬莱花』が観賞用に残るだけだろう。しかし、生産職であるディアさんの手に渡れば様々なアイテムに変わる事が出来る。私は自分が渡したアイテムをどう使うのかディアさんに聞いてみた。
「使い道? そうねえ……毛皮なんかはマントや靴、本なんかに使えるし、花や草はポーションや溶剤、染色剤なんかになるわねぇ。あぁ、肝もそうね。薬になるわ。牙は粉にすれば薬なんかになるし、そのまま武具に使っても良い……どんなアイテムでも使い道ってもんがあるのよねぇ。これからも、何か素材を見つけたら私に売ってくれると助かるわ」
ディアさんはしみじみと言った。それから
「じゃあ、装備品が出来たら教えるから、それまでもう少し待っててね」
「はい! ディアさんの作ってくれる物、楽しみに待ってます!」
私はうきうき気分で店を出た。そのせいで、再びクエストを終了させる事を忘れてしまう訳なのだが、それを思い出すのは、宿屋で一晩休んだ後のことである。