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Break;on hiatus  作者:
マーティン公爵邸編
13/37

第十二話「我が家へようこそ(3)」



皿の破片を無事回収し終え、また食卓につくと、ふと思い出したようにナツは首を傾げた。

「そういえば、昨日ここには四人子供がいると仰ってましたよね?ジールさんとツクヨミさんと、あと二人は?」

「あー、一人は多分もうすぐ……」


ウォルカがそう言いかけた途中で、タイミングよく食堂の扉が軋んだ音を立てて開いた。

そこから出てきたのは、真っ黒のローブに全身を包み、室内にも関わらず、深くフードを被った上に更に風変わりな仮面まで被った、性別も種族もよく分からない人物。ただ背はシモンと同じくらい高く、細身であることだけは遠目からでも何となく分かる。


「来たか」

ウォルカは煙草を灰皿に押し付け、ニヤリと笑った。

「……」


仮面を被った者は、何も言葉を発さないまま、テーブルの端の席に座り、そこからシモンとナツをじっと見つめている。

仮面には目の部分にも口の部分にも穴が開いておらず、こちらがちゃんと見えているのかも怪しい。

その不気味さに、ナツは少し戸惑う。


「あの、この人は……?」

「マテオだ」

「マテオ?この人の名前ですか?」

「そう。仮面してても何となく分かると思うが、こいつは男で、種族はエルフ、年が確かまだ二十八でお前らと一番近い。あとは、まあ、それくらいの情報で十分だろ」

「仮面はとらないのか?」とストレートに疑問をぶつけるシモン。

一拍おいてから、ウォルカが当たり前のように頷く。

「とらないな」

「ほぅ、何か素性を隠したい理由でもあるのか?」

シモンは仮面の男に向かって嫌味っぽくそう言うが、仮面は不気味な模様を浮かべて、こちらを静かに見ているだけだった。


「おい、喋りもしないのか」

「仕方ねえだろ、世の中色んなヤツがいるんだ。こいつは顔を出さなくて喋りもしない、それでいいだろ」

「得体の知れないようなヤツと一緒の屋根の下なんてゴメンだな」

シモンの言い分に、ウォルカと仮面の男は顔を見合わせる。ウォルカは軽い調子で笑った。

「こいつのことは、俺が保証してやる。安心しろ、むしろこの屋敷の中じゃ多分一番無害だ」

「どうだか」

シモンが怪訝な表情で睨んでも、マテオはピクリとも動かずにただみんなの会話に耳を澄ませている。


「仮面を取れないなら、ご飯はどうやって食べているんですか?」

ナツは素朴な疑問を、マテオの代わりにウォルカにぶつけた。


「さあ……、考えたことなかったな。勝手に調達して、一人の時に食ってるんだろ。こいつはジールやツクヨミとは違って、何も四六時中この屋敷にいるわけじゃないからな」

「そうなんですか。でも、みんなで食べた方がきっと美味しいのに」

そう呟くと、仮面の男は少しだけ顔をナツの方に動かした。しかしその僅かな動作からは、喜びも悲しみも感じられなかった。


「それで、あと一人は?」

シモンが尋ねると、ウォルカはうんざりとした顔をする。

「あと一人は、ただの寝坊だな。朝食には起きてこいと散々言っているのにいつまで経っても守りゃしねえ。おいジール、起こしてこいよ」

「えええ、い、嫌ですよ。兄さんの寝起きが悪いの、知っているでしょう?」

「だからお前に頼んでるんだよ」

「兄さん?」

シモンが耳聡く反応する。

「あと一人は、コイツの双子の兄貴なんだよ。この屋敷内でツクヨミと一二を争う問題児だ」

「名前は?」

「ゾイク・マルキスです。あの、兄さんがご迷惑をおかけしたら、すみません……」


最初からそんなこと言われても。

とはいえ、弟であるジールが起こすのを躊躇うほどの兄が一体どういう人物なのか、なかなか想像出来ない。


「仕方ない。いつもなら放っておくところだが、変な所でお前らと出くわしても面倒だ。アイツの部屋に行くから、お前らついて来い。……マテオ、お前もだ」

マテオと呼ばれる仮面の男は、解散とばかりに席を立とうとしていたが、ウォルカに呼び止められて固まった。その仮面からは「何故?」という表情が読みとれる。意外と分かりやすい。


「いいから来い。それにお前には、この三日間何の音沙汰も無かったのを説明してもらわないといけないしなァ?」

「……」

マテオは暫く考え込んでいたようだが、ウォルカの気迫に観念したらしい。ナツとシモンの後ろから静かについて来る。

華やかな食堂を出て、明かりは灯っているもののどこか不気味さの漂う廊下を五人は歩いていく。さっき降りてきた階段まで戻ってきて二階へ上がると、ウォルカは二人に声を潜めて言った。


「もし万一、奴がお前らに敵意を向けたら、間違っても戦おうとするな。全力で逃げに徹しろ」

「奴ってジールさんのお兄さんのことですか?」

「そうだ」

「敵意?」とシモンは眉をひそめる。

「この世界の大多数は、お前らのことをよく思っていない。さっきのガキ、ツクヨミを見て分かっただろ。中でも特に獣族は、生理的に人間を嫌悪する傾向が強い。ジールは大丈夫だったが、アイツは本能のままに生きてる単細胞だから油断できない。もしかしたらお前らを見た途端に、襲いかかるかもな」

「なるほど。約束はできないが、善処しよう」

なぜか楽しそうな笑みを浮かべるシモンに、ウォルカは諦め顔で肩をすくめる。


同じ二階だが、階段を上がって二人の部屋とは逆方向の長い廊下をずっと進んでいくと、突き当たりに『ゾイクの部屋』と書かれたドアプレートのかかった扉があった。木製のドアプレートはとてもファンシーなもので、二匹の可愛い子犬の絵が描かれている。

ウォルカはドアノブを回しながら「ゾイク、ちょっと入るぞー」と声をかける。扉に鍵はかけられておらず、容易く開いた扉の先にはシンプルでさっぱりとした部屋が広がっていた。

部屋にあるのは、ろくに物も入っていない棚が一つと机と椅子が一つずつ、あとは木製のベッドだけ。

白いシーツの敷かれた簡素なベッドの上には、ジールと瓜二つの少年がイビキをかいて横たわっている。その寝顔は何とも幸せそうで、平穏の象徴のようなものだった。


「オラ!起きろ!」

その少年の頭を、ウォルカは容赦なく近くにあった本で叩いた。いや、叩いたというより、殴ったというべきか。


「いって!!」

少年はそう叫ぶと同時にベッドから跳ね起き、頭を抱えて辺りをキョロキョロと見回す。あの穏やかな寝顔からは考えられないような俊敏な動きだった。

褐色の肌の少年は、殴った張本人と自分の分身と仮面の男を見ると、自分の頭を撫でながらホッと肩を下ろした。


「んだよ……テメェらかよ……」

「朝食の時間には起きろと言ってあるだろう、ゾイク」

「まあ、そりゃそーだけど、別に寝坊するのは今日に限った話じゃ……」


そこまで言って、ゾイクという少年の口は止まった。ついでに体も固まったように動かなくなった。そしてその目は、明らかにナツとシモンを捉えていた。

ナツとシモンもまた、ゾイクと目を合わせた途端、床に足を縫い付けられたかのように体が動かなくなった。三人の間には、見つめ合っているだけの緊迫とした時間が流れる。


「兄さん、この人たちは人間だけど、悪い人たちじゃないよ」

沈黙に耐えきれず、ジールは不安げな面持ちでそう声をかけた。

ウォルカは黙ったまま、ゾイクの反応を伺っている。

仮面の男、マテオもまた一歩離れたところで、皆の様子を見ていた。

ナツは何か言おうにも喉から声が出てこず、シモンも同じ状況なのか、黙りこくったままだ。

そしてやはりゾイクも、ただじっと二人を見つめているだけなので、相変わらず居心地の悪い静寂だけが過ぎていく。


変わらない状況に、そろそろ何か言おうとウォルカが口を開いた瞬間、唐突にゾイクは行動を起こした。いや、行動を起こしたというより、''消えた''。

「ーーっ」

ナツは目を見開いた。

ゾイクは目にも止まらぬ速さで跳躍し、次の瞬間にはシモンとナツに飛びかかってきたのだ。

それと同時に金縛りのようなものも解け、シモンはナツの腕を引っ張って間一髪でゾイクの攻撃を避けきると、そのまま開けっ放しにしていた後ろのドアから部屋を飛び出した。


「兄さん!!」

ジールの叫び声を無視して、ゾイクは二人を追う。

廊下を少し進んだ所でシモンが後ろを振り返ると、そこにはさっきまでベッドで寝ていた少年とは似ても似つかない、高さ二メートル以上はある巨大な獣の姿があった。その深い青の瞳は、溢れんばかりの殺気に満ちている。

シモンは一目見ただけで、それが昨日戦った三匹の狼とはまるで格が違うことが分かった。

獣が二人を追って暴れたせいで、床には大きなヒビが入り、屋敷はガタガタと無残に壊れていく。



「どうしてこうなったの!?」

時間が止まったかと思えばいきなり過ぎる展開に、ナツは振り返りながらそう叫んだ。

「知るか!!」

走りながら、シモンは懐にしまっていたピストルを構えるが、獣の動きが速すぎて追いつかない。

「あの動物はどこから……」

「さっきの寝てたヤツだろ。多分俺たちを見て、理性を失ってあんな姿になってる」

「え、じゃあ獣族って、獣にもなれるから獣族なのか」

また一つ新たな発見をしたナツ。

「悠長に分析してる暇はないぞ。とにかくお前は外まで逃げきることに集中しろ」

「君は?」

「このままだと追いつかれるのは時間の問題だ。色々試してみる」

「色々って」

返事を待たずに、シモンは右眼の眼帯を外すと、突進してくる獣に向かってピストルを三発連続で撃ち込んだ。

「いつも勝手なんだから……」

シモンの後ろ姿を見ながら、ナツは独り言のように文句を言う。

放った弾は全て獣の頭部に命中するが、その額からは血一滴出てこない。それを見たシモンはピストルを捨てて、ポケットにしまっていた大ぶりの短剣を手に取った。

「コウカ」とシモンが呟くと、銀色だった短剣の刃が黒に染まった。艶やかに煌めく短剣をくるくると回して手に馴染ませた後、シモンは自ら獣の方へ飛び込んでいった。


「シモン!」


ナツは足を止めかけるが、構わずこちらへ猛進してくる獣が視界に入り、仕方なく走り続ける。

焦燥感と共に左腕が疼く感覚を覚えるが、こんな所で力を使ってまた動けなくなっては本末転倒だ。今は黙ってシモンに任せるしかない。

シモンは戦い慣れした動きで、巨体を相手に黒く光る短剣で切りかかっていく。猛犬を巨大化させたような獣もシモンに噛みつこうと鋭利な牙を剝きだすが、シモンはすんでのところでうまく躱し続けている。

だが、短剣で切りつけても擦り傷一つ付かない獣の方が圧倒的に有利なことに変わりはなく、このままではシモンが負けるのは時間の問題だ。


「やめて、兄さん!!」

背後から聞こえた少年の声に振り返ると、逃げるナツと獣の間に立ちはだかるジールの姿があった。


「グゥオアアアアアア!!」

しかしゾイクは唸り声をあげるだけで、まるで聞く耳を持たない。

「ジールさん、危ないですよ!!」とナツが叫ぶ。

「大丈夫です!」

ジールはそう言うと、髪から突き出た自分の耳を右手で軽く触った。

すると、皮膚からフサフサとした黒い毛が生え、ジールの体はみるみるうちに倍くらいの大きさまで膨らんでいく。たちまちそこには、後ろでシモンと交戦しているゾイクに負けず劣らずの巨大な獣が現れ、屋敷中に響き渡るほどの雄叫びを上げた。

それを耳にしたゾイクは、一瞬動きを止めて漸く弟に目を向ける。その隙にジールは暴走するゾイクを止めるべく、自分そっくりの獣に勢いよく渾身の体当たりをした。

見るからに、相当のダメージを受けたかのように思われたが、ゾイクは体当たりをされても顔色一つ変えず、あっさりとジールを後ろ足で蹴り返し、呆気なくジールは二メートルを超える巨体のままナツの方へ吹き飛ばされた。


「うわあああああ!!」

ジールは宙を飛びながら情けない悲鳴をあげる。

「全然大丈夫じゃないじゃないですか!」

自信満々に大丈夫と言っておきながら、速攻でやられるとは。兄弟の力差は歴然だ。

ナツ目がけて降ってくるジールは、もはや脅威と化している。ナツは必死に逃げようとするが、既に辺りの足場が悪く避けきれない。もうダメだと直感し、ナツがせめて目を閉じ手で頭を庇った時、いきなり体がふわりと宙に浮く感覚を覚えた。


ーーえ、浮いてる?


左腕の、ジュエルの力を使ったわけではない。

恐る恐る目を開けると、屋敷の高い天井に手が届くほどの高さから、今度は一気に瓦礫の散乱する床へ落ちていくところだった。


「……!?!?」

あまりのスリルに言葉など出てこない。訳が分からず隣を見ると、仮面の男、マテオがいた。よく見ると、自分は彼に横に抱えられている。どうやら、ゾイクに蹴り飛ばされたジールの下敷きになる窮地から、ナツを助けてくれたらしい。

「…………」

無言で軽やかに着地し、まだヒビが入っていない床にナツを下ろす。ナツはその場で立ち尽くしたまま、まじまじと仮面の男を見上げた。あれほどの高さから落ちたにも関わらず、マテオは痛くも痒くもない顔をしている。いや正確には仮面をつけているから表情は分からないのだが、恐らく痛くも痒くもない顔をしている。

エルフや吸血鬼、それに獣族の身体能力、体のつくりは全く計り知れない。


「いてて……」

耳以外人の姿に戻ったジールが、腰をさすりながら近づいてきた。恐らく落ちた時に床に腰を打ったのだろう。

「お役に立てず申し訳ありません、ナツ様」とナツに深々と頭を下げてきた。

役に立てないどころか、もう少しで殺される所だったのだが、知らないなら言わない方がいいだろう。

「いえ、ジールさんは悪くないです。マテオさん、助けていただいて、ありがとうございました」

そう礼をすると、マテオはチラリとナツを見てからすぐに顔をそらし、慰めるようにジールの肩をポンポンと叩いた。



「まだ生きていたのか」


その声に振り向くと、今までどこにいたのか、ウォルカが暴れ回るゾイクと短剣で応戦するシモンの前に立っていた。周囲にはガラスや木片が無造作に散らばっている。


「当たり前だ!こんな意味の分からない猛獣に殺されてたまるか!」

シモンはウォルカに噛みつくように叫び返す。

ウォルカは呆れが半分、感心が半分といった顔でため息を吐いた。

「ゾイクから逃げもせずに、しぶといヤツめ。ここで死んでくれれば、俺の仕事もいくつか片付いたのに」

「だろうな。でもその代わり、お前は組織からの信用をなくすんじゃないのか?ジャパムスとかいう」

戦いながらも律儀に返事をするシモンに、ウォルカはどこか愉快そうに笑う。

「ハッ、あんな脳内お花畑な組織からの信用、こっちから願い下げなんだよ。ゴミ出しの日に一緒に出して捨ててやりてえくらいだ」


流石にシモンももう限界が近いのか、迫り来る獣の尖鋭な爪から逃れると、ウォルカの隣まで下がってくる。


「おい、このまま傍観してるつもりか?」

肩を上下させながら、シモンは何も手を出して来ないウォルカに突っかかる。

「まさか。これ以上屋敷を壊されたら、たまったもんじゃねえ」

少し戯けた口調でそう言うと、ウォルカが一歩前へ歩み出た。ゾイクの目に、ウォルカが映る。もはや人の区別などついていないのだろう。涎を滴らせ、ギリギリと歯軋りをすると、シモンから標的を変えてウォルカに飛びかかった。


「それぐらいにしとけ、ゾイク」


低い声で呟くと、ウォルカは襲いかかってくるゾイクに向かって、片足を突き出した。


ナツに見えたのはそれだけだった。

その次の瞬間には、盛大な衝突音と共に辺りに砂埃が波のように押し寄せてきた。

反射で顔を覆い目を瞑る。

少しして目を開くと、そこに猛り狂う獣の姿は無く、代わりに通路の奥の壁に、大きな穴が一つポッカリと空いていた。

その本当に一瞬の出来事に、ナツは唖然とするしかなかった。


「ジール、救急箱持って行って手当てしてやれ。多分百メートル以内にはいる」

「……分かりました。すみません、兄が何度もご迷惑をおかけして」

ジールはウォルカに平謝りする。

ゾイクの暴走は、どうやら今回に限った話ではないらしい。

「別にお前が謝る必要は無えけど、俺に蹴られ殴られ、お前の兄の体がいつまで持つかだ。いくらお前と一緒にいたいといっても、死んでしまってはどうしようもないだろう?」

「そうですが、ウォルカ様も死なない程度に手加減して下さいよ」

「アイツに手加減したら、こっちの首が危ねえよ」

ウォルカはそう言うと、懐から煙草を取り出して口に咥え、パチンと指を鳴らした。すると魔法のように、煙草には火が付いている。

ジールが階段を急いで降りていくのを見届けてから、ウォルカはそばにいるシモンに視線を向けた。


「それにしてもシモン、お前の右眼はそんな感じになってたんだな」

真っ黒な宝石が埋め込まれた右眼を見て、ウォルカはわざとらしく首をかしげた。

「何をとぼけたことを。これが見たくて、あえて最初は手を出さなかったんだろ」

シモンがそう吐き捨てるが、それは無視して、ウォルカはシモンの右眼を観察しながらニヤニヤと笑った。

「でも、その目は確かに少々興味深い。単に視力が良いだけじゃない。視界の範囲内である程度先の未来が見え、それによって相手の次の行動を予測できるんだろう?」

シモンは薄く笑みを浮かべて、目の前のウォルカの紅い目を見返した。

「それだけしか見抜けないようじゃあ、吸血鬼も大したことないな?この眼は、視界に映った者の脳内を垣間見ることも出来る。だから今お前が企んでいることだって、俺には丸見えなんだよ」

「ほぉ、怖い怖い。まったく、俺にそんな口がきけるのは、ここのクソガキどもぐらいだよ」

そう言うと、ウォルカは煙草を瓦礫の山に捨て、踏みつけて火を消した。そして「しかし想像以上だ。これは、ナツがどんなブツを持ってるのかも楽しみだな」とナツに向かってクスリと笑う。

自分でも自分の宝石の力をいまいち分かっていないナツは、困ったように笑い返した。


「まあ、とりあえずお前ら二人は部屋に帰って休んどけ。13時になったら、また食堂に来い。マテオ、お前には話があるから俺に付いて来い。どうせお前からも話があるんだろう?」

ずっと隅の方にいた仮面の男は頷き、素直にウォルカの後ろをついて一階へ降りて行った。

ナツはジールやゾイクのことが気になったが、この短時間で心身ともにかなり疲れていたので、大人しくシモンと部屋に戻ることにする。

ゾイクの部屋から階段の前までほぼ壊滅状態にある二階を眺めて、ナツは呟いた。


「僕らの部屋は無事で良かったね」

「まったくだな」



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