第2話 後日談(視点:前半…荒牧小梅/後半…佐藤光輝)
「ええっ!? てことは先輩、今までお父さんもお母さんもいなかったんスか!?」
翌日、博君と麻里亜さん、それから『坂杜様』に自らの過去の事を話すと、博君が驚いたようにそう聞いた。
それに私が「はいー」と答えると、博君はまた「ええー!?」と驚いたように言った。
「なんで教えてくんなかったんスかー!」
「なんでってー、聞かれませんでしたからねえー」
「……まあ、そんな機会もありませんでしたからね」
麻里亜さんの言葉に、博君が「そうだけどさー」と若干拗ねたように言った。
その様子が何処か面白かったのか、『坂杜様』が怪しく笑う。その後、『坂杜様』は私の方を見て言った。
「今度『座敷童子』に逢ったら、今度は貴様がお礼をしなくてはならないな、荒牧」
『坂杜様』からの言葉に、私はフフッと笑って「はいー」と返事をした。
次にいつ、『座敷童子』に出会えるのかは分からない。
だけど、いつかまた出逢ったら、ちゃんとお礼を言おう。
そして、今度はよければ、一緒に遊びたいな。
……なんて、そんな事を思う、私であった。
(以降、佐藤光輝視点)
「まさかお前が、小梅の父親になるなんてな」
笑いながらそう言う俺に、瀧太郎も「それを言うなら」と笑いながら返した。
「僕だって、まさか先輩がこの学校の先生になっているなんて思いませんでしたよ」
「フハッ、まあ、これもまたある意味『運命』なのかもしんねえな」
俺のその言葉に、瀧太郎は「そうかもしれませんね」と微笑みながら言った。
その後、瀧太郎は切なげな笑みを浮かべながら言った。
「それにしても……、少し小梅達と話したのですが、彼と彼女、本当に似てますね。『あの人達』に」
――瀧太郎の言う『彼と彼女』というのは、おそらく博と麻里亜の事だろう。
そして、『あの人達』というのは、おそらく『蛇神様』の犠牲となった『松伏紀和子』と『新見尾登弥先生』の事だ。
未だに切ない表情でいる瀧太郎に、俺は何も言えずにいた。
これは俺の憶測でしかないが、多分瀧太郎は、紀和子の事が『好き』だったんだと思う。
だからこそあの時、誰よりも辛そうな顔をしていたんだ。そして、『蛇神様』の件があってから、瀧太郎の様子は少しおかしかった。
これは、博や麻里亜や小梅は勿論――きっと校長先生や『坂杜様』でさえ知らない事だろうが。
「……瀧太郎」
俺がそう呼ぶと、瀧太郎はハッと気づいたように俺の方を見て、またいつものあの優しい笑顔に戻る。
その後、何を言えばいいのか分からなくなって、俺は話題を逸らすように言った。
「……小梅の事、よろしくな」
瀧太郎は一瞬ぽかんとしていたが、その後何かを察したかのようにフッと笑って「勿論」と返した。
【第3話へ続く】