表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/24

第4話 後編(視点:佐藤光輝)

「なんで、お前が、ここに」

目の前にいる彼女の姿に、俺はただ動揺するしかなかった。

髪の長さも、雰囲気も、昔の彼女のままだ。だが、体型は昔より更に大人らしくなったような気がする。

服装は俗にいう『巫女服』と呼ばれる服装をしていた。

そしてその後ろに――博と麻里亜が磔にされているのが見える。

もう既に犯人は分かっていたのだが、どうしても信じられなくて、俺は確認するように真梨恵の方を見て聞いた。

「アレ……、お前が、やったのか?」

「そうだよ」

返って来た答えは、俺にはあまりに残酷過ぎた。

真梨恵が、博と麻里亜を、磔にした。何の為にそうしたのかは、既に分かっている。

真梨恵は続けた。

「まさか佐藤君も一緒に来るなんて思わなかったけどね。あーあ、これが成功したら真っ先に佐藤君に報告して驚かせようと思ってたんだけどなー。……まあいっか。佐藤君もちゃんと見たいよね、松伏さんと新見先生が蘇るとこをさ」

「……二人は、もう死んでるのか?」

俺がそう聞くと、真梨恵は「ううん」と首を振った。

「まだ死んでないと思うよー? っていうか、今死なれると困るんだよね。私も色々準備しないといけないし」

そう言いながら、真梨恵は部屋の隅の方まで歩き、そこに置かれていた大きな2つの袋を、1つずつ引き摺ってきた。下手すりゃ人1人分入りそうな大きさだ。それに引き摺って来たという事は、既に何かが入っているんだろう。

2つの袋を運び終えると、真梨恵は再び口を開いた。

「実はね佐藤君。私卒業式の日にね、『蛇神様』が封印されてたあの洞窟の中に入ってみたの。そしたら、こんな御札があったんだ」

そう言って、真梨恵は服の襟の下から何かを取り出した。

それは、1枚の御札だった。それも、まるで陰陽師っぽい人や霊能者っぽい人が、何かを封印する為に使うような御札だ。

その御札を再びしまうと、真梨恵は続けた。

「それと、この御札と一緒に置かれていたものがあったんだよ。それがこの袋の中身。……フフッ、佐藤君は勘の良い人だから、もうこの袋の中身が分かったでしょ?」

真梨恵にそう聞かれ、俺は暫く考えた。

『蛇神様』が封印されていた場所に、御札と一緒に置かれていたもの。袋は、2つ。

「……まさか」

俺は真梨恵に、そう返すしかなかった。だって、真梨恵の言う事が本当なら――袋の、中身は。

真梨恵は「そのまさかだよ」と返しながら1つの袋に近づき、袋の中身を取り出した。


――袋の中身は、紛れもなく、『松伏紀和子の死体』だった。


「……!!」

思わず、声にならない悲鳴をあげた。

真梨恵は構わずもう1つの方の袋の中身を取り出す。――想像通り、もう1つの袋の中身は『新見尾登弥先生の死体』だった。

どちらも、死体と言うにはあまりに綺麗すぎて、まるでただ眠っているだけのように見えた。

2つの袋の中身を取り出し終えるとほぼ同時に、「なんだよこれ!?」という別の声が聞こえてきた。その声に、俺も真梨恵も声が聞こえてきた方を見た。

いつの間にか目が覚めていたらしい博と麻里亜の2人が、腕や足首に繋がれていた鎖を外そうともがいていた。

真梨恵は「あ、起きた?」と口を開く。

「それ外そうとしても無駄だよ? 鎖だし、結構頑丈にしたつもりだからね」

その言葉に、博も麻里亜も真梨恵の方を向く。2人とも真梨恵を睨みつけている。

次に口を開いたのは麻里亜だった。

「貴方、何が目的なんですか? その死体は一体何なんですか?」

「質問は1つずつしてよねー。……まあ、どっちかの質問に答えたら、おのずともう片方の答えも分かるんだけどね」

そう返しながら、真梨恵は死体を指差した。

「こっちは、数十年前にいなくなった私の友達『松伏紀和子』さんの死体。で、あっちは同じく数十年前にいなくなった佐藤君のクラスの副担任『新見尾登弥』先生の死体」

「『新見』……? 『松伏』……?」

博がそう聞き返すと、真梨恵は「そう」と返して続けた。

「この2人はね、数十年前にもう死んでるの。『蛇神様』っていう大きい蛇の化け物の『贄』としてね。だけどある日、その2人の『生まれ変わり』といわれる2人の少年少女が現れた。それが、君達ってわけ」

「『生まれ変わり』……。聞いた事はあるけど、本当にあるんだな」

「アハハ、ホント不思議だよねえ。……でもね」

そこまで話すと、今まで笑みを浮かべながら話していた真梨恵の表情が一変し、真顔になった。

「勿論、その『生まれ変わり』を許せない人もいるんだ。だってそうだよね。その人から見れば、君達のような存在は『偽物』でしかないんだからさ」

「『偽物』……?」

麻里亜がそう聞き返すと、真梨恵は「そうだよ」と返した。

その返答に「ふざけんな!」と声を荒げたのは博だった。

「俺は俺だし、松伏は松伏だろ! なんだよ『偽物』って!!」

「『偽物』は『偽物』だよ。新見先生や松伏さんの魂を奪って生まれてきた『偽物』。……だからね、私決めたんだ。君達みたいな『偽物』を殺して、『本物』の2人を蘇らせるって」

真梨恵のその言葉に、博も麻里亜も目を見開いた。

「……そんな事、出来るわけないだろ」

博がそう言うと、真梨恵は「そうだね」と返した。

「死んだ人間を蘇らせるなんて出来るわけがないよ。……『普通の人間なら』、ね」

「……貴方は、『普通の人間じゃない』んですか」

麻里亜がそう聞くと、真梨恵は「そうだよ」と頷いた。

「私ね、昔から『幽霊さん』が『視える』人だったの。でも、なんで視えちゃうのかなーってずっと不思議に思ってた。けどね、ある日気づいちゃったの。新見家や霊界堂家が霊能者の家系であるように、丑満時家もまた、霊能者の家系なんだって。だから、そんな家系に生まれた私も霊能者の1人なんだよ。だったら、死んだ人を蘇らせる事も出来ちゃうんじゃないかってね」

「……霊能者だって、出来る事と出来ない事があるだろ」

「それは君が実際にやった事ないからだよ。私は信じてるよ。きっと出来るって。けどその為には、2人の魂を取り戻す必要があるんだ」

そう言いながら、真梨恵は巫女服の襟の部分に手を入れ、そこから何かを取り出した。

「……!?」

取り出したものを見た瞬間、俺も博も麻里亜も、目を見開いた。

――拳銃だ。銃口は、博の方を向いている。

真梨恵は、銃口と同じく博の方をじっと見て、再び口を開いた。

「……だからね。2人の為に――死んで?」

「やめろおおおおおおお!!」

鎖で繋がれて真梨恵の行動を止められないまま、俺は力の限り叫んだ。――その直後だった。


「博君!! 麻里亜さん!! 佐藤先生!!」


聞き覚えのある声が、扉の方から聞こえてきた。

声が聞こえた方を向くと、そこにいたのは、小梅だった。

真梨恵も小梅の方を向いていたらしく、「あれ?」と首を傾げた。

「おかしいなー? 誰もここに来れないように頼んでたはずだけどなー?」

「先輩! 今すぐ逃げてください! その人銃持ってますから!!」

麻里亜がそう言うと、小梅は「見れば分かりますー」と返しながらこちらに近づいてきた。

――となると、当然銃口は小梅の方に向きを変える。

「動くな」

真梨恵がそういうと、小梅はその場に立ち止まった。続けて真梨恵が口を開いた。

「誰に聞いてここまで来たの? 3人を助けに来たんでしょ?」

真梨恵の問いに、小梅は「そうですよー?」といつもの調子で答えた。

「事情は全てー、『蛇神様』や『猫叉』ー、校長先生から聞きましたー」

「校長……? ……ああ、そっか。そう言えば霊界堂先生、校長先生になったんだっけ。って事は、校長先生もここに来てるって事だね」

真梨恵がそう言うと、小梅は「はいー」と返答した。その後続けて、小梅が「しかしー」と首を傾げながら言った。

「1つだけー、分からない事があるんですよー」

「分からない事? 何? 全部聞いたんじゃないの?」

真梨恵がそう聞くと、小梅は「そうなんですけどー」と返し、続けた。

「『生まれ変わり』を殺す事にー、意味などあるんでしょうかー?」

「……どういう事?」

真梨恵がそう聞き返すと、小梅は「だってー」と答えた。

「『生まれ変わり』ってー、新見先生や紀和子さんとはー、『他人』ではないのですかー? だったらー、博君や麻里亜さんを殺したところでー、その魂はー、新見先生や紀和子さんの魂とはー、違うのではー?」

……一瞬、真梨恵の眉間にしわが寄った。

小梅の言う事は正論だった。博や麻里亜をここで殺したところで、その魂は『新見博の魂』と『松伏麻里亜の魂』でしかないのだ。そしてそれは恐らく、真梨恵自身が一番よく分かっているはず。

……だが、真梨恵はその銃をおろす事をせず、口を開いた。

「……ごめんね。そんなの分かってるんだよ。……けどね、大切な人を失ってしまって、どうすれば良いのか分からないんだよ。それに、もう多分、後戻りはできないでしょ?」

真梨恵にそう聞かれ、小梅が返答に困っていると。


「今ならまだ間に合うで」


小梅の後ろから見覚えのある人影が見えた。

現れたのは、校長と『蛇神様』と『猫叉』――それに、『坂杜様』だった。

真梨恵は驚いたような表情を見せ、口を開いた。

「なんで、だって、『坂杜様』は確か……!」

「『坂杜』をお主に従わせる事を考えた所は褒めてやろう。だが、お主の力では完全に従わせる事が出来なかったようであるな」

「『坂杜様』を……『従わせる』……?」

あまりに衝撃的すぎて俺がそう聞くと、校長が「せや」と答えた。

「いつの間にか霊能者としての能力が目覚めとったんやなあ。……せやけど残念やったなあ。うちの方がちーっと上やったみたいやわあ」

校長は、クスクスと笑いながらそう言った。真梨恵は「そっかー」と何気ない口調で返答したが、その目は笑っていなかった。

続けて口を開いたのは『猫叉』だった。

「っていうか、『坂杜』も『坂杜』だニャー。よく見知った奴だからってちょっと油断しすぎたんじゃないかニャー?」

その言葉に、『坂杜様』は「……返す言葉もない」と反省してるように返した。

その後、『坂杜様』は真梨恵の方を見て言った。

「丑満時よ。人間を蘇らせるにはそいつの『魂』、そいつの『身体』以外に必要なものがある事を知っておるか?」

「……知らない。他に何かいるの?」

真梨恵がそう聞くと、『坂杜様』は真梨恵の方をじっと見て一言、言った。

「……『対価』だ」

「『対価』……?」

真梨恵がそう聞き返すと、『坂杜様』は「そうだ」と返した。

「私も詳しくは知らぬのだが、人間を蘇らせるにはそれ相応の『対価』が必要となる。それも、貴様自身の物でないと意味がない。……そうだな。今回は2人蘇らせるのだから、『対価』は当然2人分必要だ。貴様の腕2本か、貴様の足2本か。それとも――貴様自身が『死ぬ』か」

そういうと、『坂杜様』は物凄いスピードで真梨恵に近づいた。

真梨恵は後ろに下がろうとするが、その前に『坂杜様』に拳銃を奪われ、押し倒され、拳銃を向けられていた。

『坂杜様』は続けた。

「貴様に死ぬ覚悟はあるか? 自分の命を捨て、人を蘇らせる覚悟はあるか? そして――それを奴らが望むと思うか?」

真梨恵は――答えられなかった。

いくら親友の為ならなんでもするような性格の真梨恵でも、流石に自分の命は惜しいようだ。

そんなやりとりの間に、『蛇神様』が、博や麻里亜や俺についていた鎖を壊した。

俺は2人に走って近づく。

「大丈夫か2人とも!?」

「ええ、なんとか」

俺の問いに、麻里亜がそう答えた。

俺は続けて博の方を見る。……と。

「……?」

博が、目を瞑っている。最初はこの状況で座ったまま眠っているのかと思っていたが、そうではなかったようで、呟くように言った。

「……なあ。俺の声が聞こえてるなら、ちょっとだけ手伝ってくれないか――『新見尾登弥』」

「博……?」

俺がそう聞くと、博はゆっくり目を開いて立ち上がり、真梨恵の方に近づいていった。

「お、おい新見……!」

麻里亜が慌てて声をかけるが、博は止まらなかった。

『坂杜様』も真梨恵も驚いたように博の方を見ていたが、『坂杜様』が何かに気づいたように「ほう」と口を開き真梨恵から離れた。

真梨恵は再び立ち上がり、首を傾げたまま博を見続けた。

博は真梨恵の前で立ち止まると、口を開いた。

「……おいおい。急に呼ばれたから来てみたら、なんだこの状況は?」

「……え?」

真梨恵も、俺も、恐らくその場にいた全員が困惑していた。麻里亜と『坂杜様』以外は特に困惑していただろう。


今の博のその口調は――『新見尾登弥』の口調そのものだったのだ。


「……新見先生? ……新見先生、なの?」

真梨恵が戸惑ったようにそう聞くと、博――否、『新見先生』は「おう」と返事をした。

「まあ俺もう死んでるし、一時的に『新見博』の体借りてるだけだがな。って、んなこたぁ分かってるか」

『新見先生』は、そう言って笑った。……笑い方も、『新見先生』そのものだ。

どうやら本当に、博の体に『新見先生』が『乗り移った』ようだ。

『新見先生』は「さて」と続けた。

「正直あまり乗り移れる時間がない。その間に、『新見尾登弥』の『最期の授業』といくか」

そう言った後、『新見先生』はいきなり真面目な表情になった。

「丑満時。お前は今、とてもやってはいけない事をしようとしている。俺や松伏を蘇らせたい気持ちはわかる。けどな、『新見博』も『松伏麻里亜』も、れっきとした1人の人間だ。『偽物』なんかじゃなく、『本物』の命だ。それを奪うということは、当然罪に問われる。場合によってはお前が死刑になるかもしれないんだぞ?」

真梨恵は、黙って聞いていた。性格上『授業』と言われると黙って聞かないといけないと思ったのだろうか。――それとも。

『新見先生』は少し微笑んで続けた。

「……まあ、お前ならそんな事分かってるよな。分かっていても、自分自身を止める事が出来なかった。……けど、霊界堂先生の言う通り、今ならまだ間に合う。警察に自首して罪を償えば、大丈夫だ。お前はまだ誰の命も奪ってない。だから、きっとまだ償いきれる」

「な?」と『新見先生』が笑いかけると、それを合図にしたかのように、真梨恵の目から涙が溢れてきた。

『新見先生』は、そっと真梨恵の頭を撫でると、続けて言った。

「俺、丑満時の歌声好きだったんだ。だから、お前がシンガーソングライターになって有名になってくれたのが嬉しかった。……だからさ、罪を償ったら、またお前の歌聞かせてくれよ」

その言葉に、真梨恵は小さく頷いた。

続いて『新見先生』は、俺の方に近づいて来ていきなり頭を思いっきり撫で始めた。

「ちょ、何、何スかいきなり!?」

「『何スか』じゃねえよお前! 俺と同じ教師になりやがってこのヤロー!」

そう言ってはいるが、その声はどこか嬉しそうだった。

ひとしきり撫で終わると、『新見先生』は手を離して続けた。

「……髪型、似合ってるな。俺、お前が熊谷先生に憧れてたの知ってたからさ、こうして教師になったお前の姿を見るのが余計嬉しいんだ。その髪型も、熊谷先生に憧れてそうしたんだろ? 熊谷先生も、きっと喜ぶと思うぞ。あとな、霊界堂先生と付き合うなら覚悟しとけよ。あの人結構厳しいし人をこき使う所あるから」

『新見先生』のその言葉に、校長は一つ咳ばらいをした。

『新見先生』は「おっと」と校長の方を見て言い、その後再び俺から離れた。

「さて、あとはここにいる全員に伝えなきゃいけない事がある。ああ、これは後で『新見博』にも伝えといて欲しいんだけどな」

そういうと、『新見先生』は再び真面目な表情になって一言、言った。


「……『杜坂東中学校』に、大きな危険が迫っている」


「えっ……!?」

その場にいる全員が動揺した。

「大きな危険って……どのくらい危険なんです?」

麻里亜がそう聞くと、『新見先生』は「そうだな……」と少し考えて言った。

「……もしかしたら、学校自体が『消滅』してしまうくらいかも」

「学校が消滅!?」

俺がそう聞き返すと、『新見先生』は「ああ」と返事をした。

「最近、あの学校に張ってある結界の力が弱まっている事は知ってるだろ? もしかしたら近々、その結界が破られてしまうかもしれないんだ。そうなってしまえば、いくら『坂杜様』や『蛇神様』の力を使っても、修復は不可能に近いかもしれない」

「そんな……、じゃあ……どうしたら……?」

小梅がそう聞くと、『新見先生』は「阻止する方法は1つ」と返答した。

「結界の力が弱まっている原因を探し出し、止めるんだ」

「止める……って事は、原因は物じゃない……?」

麻里亜がそう聞くと、『新見先生』は「そうだ」と頷いた。

「それが『妖怪』なのか『霊』なのか『人間』なのかは分からない。だが、少なくとも物じゃないのは確かだ。そいつを止めない限り、迫る危険は止められない。……やれるか?」

『新見先生』は、『坂杜様』の方を向いてそう聞いた。

『坂杜様』はニヤリと笑って口を開いた。

「……無論だ。これだけ集まっておるのだ。見つけるのにそう時間はかからんだろう」

「相変わらず強気だなあ『坂杜様』。ちょっと安心したわ」

『坂杜様』の返答に、『新見先生』は笑いながらそう言った。

「さて、そろそろ時間だ。この体は『新見博』に返す。ちゃんと伝えとけよ? あと、さっき丑満時に言った事、絶対忘れるな。……んじゃ、俺からの『最期の授業』は以上だ。……健闘を祈る」

『新見先生』がそう言った後、いきなり博の体は倒れた。

「新見!」

麻里亜がそう行って駆け寄る。暫く麻里亜が声をかけると、博は目覚めた。

「……あれ、もう終わった?」

その口調は、いつもの博の口調に戻っていた。とりあえず安心した。『新見先生』を呼び出した事によって、博に負担がかかってそのまま死んでしまうんじゃないかと思っていたから。


だが、気になるのは先程『新見先生』が言っていた事だ。

――『杜坂東中学校』に、学校が『消滅』してしまう程の危険が迫っている。

しかも、原因は『妖怪』か『霊』か――『人間』か。

いつの間にか校長が俺のすぐ隣に来ていたらしく、クスッと笑いながら言った。

「……暫くは、忙しくなりそうやなあ」

「……笑い事じゃないッスよ」

俺がそう言うと、校長は「せやなあ」と返した。

だが校長の言う通り、もう暫くは、忙しくなりそうだ。


「……守らねえと、『杜坂東中』を」

俺は決意したように、そう呟いた。


【第4話 後日談へ続く】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ