新見博の事情 ~夢~
【作者より】
このお話は『杜坂東の事情』のサイドストーリー、小話的なものです。
読まなくても大体の話は分かりますが、読んでおくと物語がより楽しめる……かもしれません。
本文は以下から始まります。
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最近、妙な夢を見る。
その夢の中でも、俺は学校に通っていた。だが通っていたと言っても、生徒として通っていたわけじゃない。
何故か俺は、教師として通っていたのだ。多分実際の俺よりも身長は少し高めになっている。
教壇に立つと、十数人はいるであろう生徒達がこちらを向いている。その中には、松伏に似た生徒もおり、更には佐藤先生に似た生徒もいた。他の生徒は出逢った事もないはずなのに、全員何処か見覚えのあるように思える。
朝のHRが終わって職員室に戻ると、何処か見覚えのある教師達が話しかけてくる。
そこには校長先生に似た教師もいて、あのお淑やかな笑みを浮かべながら俺に話しかけてくる。
実際に教師になったら、こんな感じなんだろうか。
職員室を出ると、山下先生に似た生徒が俺の方に駆けよってきて話しかけてくる。どうやら『支援クラス』という所に誘っているらしい。確か、今は閉鎖されている教室だ。
その『支援クラス』に入ると、やはり何処か見覚えのある生徒達が駆け寄ってくる。
その中には、最近テレビでよく見かけるシンガーソングライター『Marie』に似た生徒もいる。ファンという訳でもないはずだが、何故俺の夢に出てくるのだろうか?
暫く話していると、場面はいきなり変化する。
俺の目の前には頭が3つある大きな蛇。俺の隣には、松伏に似た生徒。後ろには、数人の教師と数人の生徒。
俺は松伏に似た生徒の手をしっかり握っている。その生徒は、何かを決心したような表情を浮かべていた。
そうして、俺は何か言葉を発し、目の前にいる蛇が襲い掛かろうとしているのに逃げる素振りも見せず、ゆっくり目を閉じる。
――と、いつもその場面で目が覚める。一体何を意味しているんだろうと最初は思うのだが、いつも「まあいっか」で終わってしまう。
夢なんてそんなものだ。あまり深く考えなくてもいいだろう。
だが、心の何処かで、何かが引っかかる感覚はある。その感覚は多分数時間は続く。
夢で出てくる場面、人物、会話。その全てが、以前何処かで経験した事あるような感覚がするのだ。
その事をこの間荒牧先輩に相談したら、「それー、デジャヴというものではー?」と返って来た。
――デジャヴ。既視感。実際は一度も体験したことがないのに、既に何処かで体験したかのように感じるもの。……だが、それって夢とは関係ないのでは。
……まあ、あまり深く考える事もないとは思う。夢だし。
そういえば、その夢の中に荒牧先輩は出てこなかった。何故だろう? 今とは関係ない夢なのだろうか? ……ああ、それはどの夢も同じか。
(……じゃあやっぱり、深く考えなくてもいいのかもしれないな)
俺はそんな事を思いながら、今日も同じように通学する。
そうしてその日の夜、俺はまた、同じ夢を見る。
【新見博の事情 ~夢~ 完】




