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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
死の後~はじまりはこれから~
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腕時計の秘密

老人があまりにも素っ気ないので、仙堂はどれだけ心配していたかを老人にアピールしてみた。

「いや オレ達がもう死んでんはわかっているけどさぁ~」

「じいさんが急に居なくなくからさぁ~。ほら なんか、成仏とかしたのかなぁ~って」

仙堂の心配アピールは、たった二行で終わった。

しかし、仙堂の頭には二行以上の老人を心配する言葉があったが、残念ながらそこは、頭の悪い仙堂、少々難易度が高かったようだ。

『生の世界に来た者は生まれ変わるか、守護霊になるかのどっちかなんじゃ』

老人はただただ気付いてないだけであるが、残念ながら仙堂のアピールは老人には届かなかったようだ。


仙堂は老人に気持ちを上手く伝えることができず、ちょっといじけた。

しかし、そこは切り替えの早い仙堂。

成仏の説明を聞いて、気分を一転したようだ。

「へ~ そうなのか」

「じゃあオレは生まれ変わる方だな。絶対」

『そうじゃのう』

もう先程のアピール失敗を忘れているかのような仙堂は、あることに気付いた。

「てか オレの墓が目の前にあるってことは、本当にここは現世なのか?」

「それに墓が現世の入口ってことはじいさんも墓から出て来たのか?」

『そうじゃ。ここは現世じゃ』

『そしてわしもわしの墓を通して現世へ来たんじゃ』

仙堂は無事、現世に到着したようだ。


けれど、仙堂はあまり驚いていない様子で、また老人に問いかけた。

「ってことは、じいさんもここの地域の人だったんだな」

『いや わしは別の寺から来たんじゃ』

『おまえさんを探すために、寺を何件か回って、今に至るんじゃ』

墓・・・現世では亡くなった者に会えた気分になる場所や祖先に感謝する場所として認識されているが、生の世界では入口として、魂を幽霊に変換させるものである。

「それじゃあオレ探すのとか、かなり時間かかっただろ?」

仙堂は老人に労いの言葉をかけた。

『そうじゃのう。おまえさんがどこの寺におるかわからなかったが、幽霊になると便利なことがあっての』

『空を飛べるんじゃ。じゃから移動は案外簡単なんじゃ』

幽霊は浮いているイメージがあったが、空を自由自在に飛べることは意外であった。

仙堂も少々幽霊のイメージの違いに、日本人なら必ず伝わる表現で、今の自分の驚きを表現した。

「へ~ 空飛べるとか、ネコ型ロボットもびっくりだな」

『ん? なんじゃ そのネコ型ロボ・ットとは?』

『そもそもロボッ・トとはなんじゃ』

日本人なら必ず伝わるはずだが、老人には全然伝わってないようだ。

確認だが、老人は日本人である。

「・・・・じいさん それマジで言ってんの?」

「ネコ型ロボットって言ったら ほら、アニメになってるっしょ?」

仙堂は老人がネコ型ロボットを知らないことに少々驚いたが、老人が元々アニメを知らなったことを思い出した。

「あ そうか。じいさんアニメ見たことないんだっけ?」

『そうじゃ。わしはアニ・メを見たことないのう』

『そのネコ型ロボ・ットもアニ・メなのかのう?』

老人はアニメを見たことがないのだから、ネコ型ロボットを知らないのは当たり前のことだった。

しかし、ロボットを知らないのは少々不思議ではある。

老人がネコ型ロボットを知らないとわかった仙堂は、そうそうに話を切り上げた。

「そう ネコ型ロボットもアニメなんだよ」

「それより空飛べるってことはこれから飛んで行動すんの?」

『あ~ そうじゃな』

「じゃあさ 早くオレの母親になる人を飛んで探しに行こうぜ。じいさん」

『いや 飛んでいかん』

「は?」

老人の肩透かしの会話はこれで何回目だろう?

「飛ばないって、じゃあどうやってオレの母親探すの? 歩くの?」

『歩ける訳なかろう。足がないんじゃから』

幽霊には足がないことをいつものように冷静に言う老人。

「・・・・じゃあ ・・・・どうやって探すの?」

「飛ばないんでしょ?」

仙堂の疑問だらけの問いかけに、老人は丁寧に説明を始めた。

『結果的に飛ぶんじゃが、人探しはなにかと大変なんじゃ』

『おまえさんを探すのだって、わしは何件も寺を回ったんじゃ。おまえさんは墓から現世に来ることがわかっておったから、寺を回ることができたが、おまえさんの母親になる者がどこで、なにをしているかなど、検討もつかんから難儀なんじゃ』

「・・・・・・」

老人は丁寧に説明していたが、少々仙堂の頭では説明が難しかったようで、仙堂の頭はフリーズしかけたが、ギリギリで再起動に成功し、老人に問いかけた。

「・・・・・・じゃあ どうすんの?」

仙堂のフリーズ具合を察した老人は、さらに丁寧に母親を探す方法を説明した。

『わしらが手動で探すのは、至難の業じゃ』

『じゃから自動でおまえさんの母親を探すんじゃ』

「・・・・・自動?」

「どうやって自動にすんの?」

老人は仙堂の腕を指差して自動にする方法を伝えた。

『腕時計を使うんじゃ』

生の世界から付けて行った腕時計には、まだ特殊な機能が存在していた。

「腕時計・・・・・・?」

「あ! わかった。腕時計にあるボタン使うんだろ?」

『おう 察しが良いのう』

仙堂が生の世界から現世に来るために、付けた腕時計には、三つのボタンが搭載されていて、現世に行くときに三つあるボタンの一番上のボタンを押して現世に来た。

「じゃあ 一番上のボタンもう押したから、次は真ん中のボタン押せばいいの?」

『残念 ハズレじゃ』

『もう一度一番上のボタンを押すんじゃよ』「え? だって一番上のボタンはもう使ったじゃん」

『一番上のボタンは現世に来ると機能が変わるんじゃ』

「え マジで!」

仙堂は老人に自動で母親を探す方法を教えてもらうと、躊躇なく現世に来たときに押した同じボタンをもう一度押そうとした。

『待つんじゃ!』

「ん?」

ボタンを押す寸前でストップできた仙堂は、はたから見ると腕時計を指さして、腕時計を誰かに自慢しているようにも見えた。

「どうしたじいさん?」

『今ボタン押そうとしたじゃろ』

「うん! ダメ?」

『ダメじゃ』

「へ?」

『まだ説明している最中じゃろ』

『勝手にボタン押すんじゃないのう』

「・・・うん ごめん」

仙堂はどうしてまだボタンを押してはいけないのか、よくわからなかったが老人に謝った。老人はどうしてまだボタンを押してはいけないかを仙堂にやさしく教えた。

『良いか。おまえさんが付けておる腕時計と、わしが付けておる腕時計はちょっと違うんじゃ』

「・・・え? 同じでしょ? 形も一緒だし」 

『いいや違う』 

『わしも生の世界に来たときから、ずっと腕時計を付けておるが、わしはまだ生まれ変わりの申請はしておらん』

『腕時計を付けておる者であれば、誰でも現世と生の世界を行き来できるんじゃ』

『じゃが、今回はおまえさんの付き添いで現世に来た』

『おまえさんは生まれ変わりの申請をしておるから、もう一度一番上のボタンを押すと、自動的におまえさんの母親になる者のいる場所へと行くが、わしは生まれ変わりの申請をしておらんからもう一度一番上のボタンを押しても、なにも起こらないんじゃ』

『もちろん 生まれ変わりの申請をしていたとしても、おまえさんと同じ母親を申請しなければ、別の母親の元へ飛んで行き、意味がないがな』

腕時計は現世と生の世界を行き来するための物であり、腕時計を付けている本人だけに効力を発揮する。

「・・・そうか」

仙堂は自分と老人の腕時計の違いが、説明を聞いても理解不能だったが、ただ単に機能が違うと言うことで仙堂は納得したが、老人の説明を聞いて、自ずと疑問も湧いた。

「ん? でもさぁー じゃあこれからどうすんの?」

「じいさんは自動機能使えないってことでしょ?」

「なにか解決方法あんの?」

仙堂は重大な問題として老人に問いかけたが、老人は簡単に解決策を発表した。

『ひとつ方法があっての』

『おまえさんの肩にわしが触って、おまえさんがボタンを押すと、わしもおまえさんと一緒におまえさんの母親になる者のいる場所に行けるんじゃ』

腕時計の効力は、付けている本人にしか発揮しないが、相手に触ることで相手の効力が短時間だけ反映される。

『じゃからわしから離れるなよ』

「わ わかった」

重大な問題として認識していた仙堂だったが、老人はいとも簡単に解決させ、拍子抜けした仙堂だった。

仙堂は解決方法が案外簡単だったので、珍しく理解し、老人を急かした。

「じゃあじいさん早く肩触ってくれよ。早く探しに行こうぜ」

『あー わかった』

『今度から勝手にボタン押すんじゃないぞ』

「わかった わかった さあ 早く早く!」

仙堂は本当に老人の注意を理解しているかは定かではない。


『・・・・・』

『本当にわかっておるか?』

「あ? わかってる わかってる」

『はぁ~』

仙堂が完全に理解していないことを理解した老人だが、黙って仙堂の肩に手を置くことにした。

仙堂は老人が肩に手を置いたのを確認してから、現世に来たときと同じ腕時計のボタンを押した。

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