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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
死の後~はじまりはこれから~
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守護霊で見学

『この世界にいる者はな、守護霊になるために現世に降りるものはあまりいないんじゃ』

『ほとんどの者がおのれの親を探すために現世に降りるのじゃ』

『じゃが、親を探している最中に守護霊とそて生きることを決める者が稀にいるんじゃ』

『自分の意思で守護霊になり、自分の意思で人を守ることを決めるんじゃ』

『じゃから単に守護霊と言っても、すぐに人を守る幽霊になるんじゃないのう』

「・・・・・・なんだ守護霊ってただの現世への移動手段みたいなものってことか」

『ま まあ、簡単に説明するとそうなるかのう』

そういう軽い意味では説明していなかったが、仙堂の捉え方に少々戸惑いを隠せなかった老人。

守護霊が移動手段だとわかった仙堂は、早く現世に行きたくてしょうがなくなり、老人の戸惑いなどお構いなしに老人を急かした。

「だったら早く現世に行こうぜ」

「またこのモニター使って申請するのか?」

仙堂の持ち前の切り替えの速さに戸惑いながらも、仙堂の質問に老人は答えた。

『いや、今度はこのモニターは使わん』

『おまえさんが今身につけた腕時計あるじゃ。それで現世に行くんじゃ』


「あーこれか!?」

先程付けた腕時計を見て不思議そうに呟く仙堂。

「この腕時計そんなこともできんだ」

腕時計にはカウントダウンされている液晶の横に三つのボタンがあった。

「じいさん? このボタンなんだ?」

仙堂は腕時計に付いているボタンを指差しながら老人に尋ねた。

『その腕時計には、いろんなシステ・ムがあっての』

システムの発音が若干違うが、それに気付いてないのか、発音の件を流した仙堂。

『ほれ、三つあるボタンの一番上のボタン押してみい』

『そのボタンで現世に行けるんじゃ』

「お! マジで!」

先程は、腕時計を付けることすら恐れていた仙堂だが、今度はボタンを押す気満々のようだ。

「このボタン押した瞬間、オレの体が現世に瞬間移動とかすんのかな」

アニメ好きな仙堂としては、今度こそアニメのように現世へ行けると期待に胸を膨らませながらボタンを押した。

【ポチッ】


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うむ?」

「なにも起こら! お!」

ボタンを押してから一瞬の静寂の後、ゆっくり ゆっくり と床から四角い、白い箱が出て来た。

「な ん だ これ?!」

何も起こらないと老人に文句を言おうとした矢先の出来事に、仙堂の頭は?でいっぱいになった。

老人は白い箱を見慣れているようで、動揺をしていなく冷静に床からせり上がってきた白い箱の説明を始めた。


『霊界・・・亡くなった者が行き着く世界』『精神の世界とも言うここ、生の世界』

『蔵出し・・・おのれの魂を現世へと送ること』

『庫・・・現世へ行って、生の世界へと戻るために足を保管する場所』

ぼんやりと白い箱についての説明を聞いた仙堂は、庫の説明であることに気付いた。


「え! 足 保管すんの? あ! だから幽霊の足ってないのか!」

『そうじゃな』

現世で幽霊に足がないと言う目撃談があるが、それ生の世界に足を保管しているからと亡くなってから気付く、あるあるの一つである。


『そしてこの白い箱の名前は』


『霊界 蔵出し 庫』

『略して霊蔵庫じゃ!』



「・・・・」


『冷蔵庫じゃ!』

仙堂がこの言葉遊びに気付いてないと思った老人は二回大きな声を出した。


「・・・・・・なにそれ?」 

「そのギャグじいさんが考えたのか?」

「ダサ!」

さっきまで白い箱に動揺していた仙堂だが、老人のギャグははっきりとつまらないとわかった。

『な なんじゃ。言葉遊びの意味がわかっておって黙っておったのか!』

「だって・・・・いきなりおやじギャグ言うから」


ギャグを聞いた仙堂の冷め具合にすぐに気付き、慌てて弁解する老人。

『わ わしがこの言葉遊びを考えた訳なかろう!』

『わしが生の世界に来た時からの受け継がれし、言葉遊びなんじゃ』

「なに受け継いでるんだよ・・・ じいさん」

律儀にギャグを受け継いでいる老人を見て、初めて老人にあきれた仙堂。

仙堂は気持ちを切り替え、白い箱について話を戻した。

「で この箱・・・どう見ても冷蔵庫だよな?」

『そうじゃよ』

いきなり床からせり上がってきたことで、初めは白い箱としか認識できなかったが、老人のギャグのおかげで冷静になれた仙堂は、またしても現世に存在する物だと認識ができた。


生の世界に来て初めて白い箱を見た人が、必ず質問する当たり前の質問を老人にした仙堂。

「なんで冷蔵庫?」

『そんなもん知らん』

素っ気ない老人の回答が返ってきた。

『神様がこの冷蔵庫に現世へ行く力を宿したんじゃ。神様にでも聞けのう』

「えっ! 神様に会えんの?!」

『無理じゃ。わしも会ったことない』

「・・・・・・・・あ そう」

老人の肩透かしの会話に、あまり期待しないようにすることにした仙堂。

「・・・・はぁ」

「ん? でもさぁ~ 冷蔵庫とか腕時計とか あとモニターとかも昔からこの世界にあったの?」

「だって全部現世で作られた物でしょ?」

仙堂は疑問を老人に問いかけた。

『そうじゃな。わしがこの世界に来た時から三つともこの世界にあったのう』

『わしがこの世界に来る前までは別の物に力が宿されていたらしいぞ』

『わしもなぜ冷蔵庫や腕時計なのかはよくわからんが、宿した物の力は期限付きらしいんじゃ。そして新しい物に次々と代替わりして力を宿すらしいぞ』

「へ~ 神様ってすげんだなぁ~。てか神様って本当に居たんだな」

宿した物の力は期限付きとなっていて、神様は力がなくなった物を新しい物に次々と力を宿し換えていく。

たまたま仙堂が亡くなった時期は腕時計だったが、もしかしたら腕時計からスマホに代わる時代が来るかも知れない。

それは神ぞ知ることだが。


老人は脱線した話を元に戻した。


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