表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/44

仙堂 一のはじまりはこれから

《現世 仙堂の実家》


夢は現実で起きたことの記憶を整理している。

ひとつの夢は複数の記憶の一部一部で構成されている。

だから不思議な夢や楽しい夢、悲しい夢へとなる。

夢は複数の記憶から構成される。

しかし、例外となる夢があった。

夢は記憶から作り出されているが、特例として、神様や守護霊からのメッセージを夢の中で伝える手段となっていた。


夢の中で、危険や幸福を知らせてくれる。

今回は神様の力で仙堂は母親に思いを伝える。

実家でいつもように布団で寝ている母親。

すると枕元に人影を感じ、母親は目を開けた。

目を開けるとそこには亡くなったはずの息子の姿があった。

[一はじめ?]

母親の目の前に透けている息子の名前を呼んだ。

「母さん・・・・」

「ごめんな・・・・・」

仙堂は悲しい顔で謝った。


[一はじめ・・・・]

「早く死んじゃってごめん・・・・」

「親孝行も恩返しもできなくてごめん・・・」

「親不幸な息子でごめんな・・・・」

仙堂は謝り続けた。

謝れるだけ謝った。


謝り続ける息子に母はやさしい言葉をかけた。

「ごめんごめんばかり言わないの」

「あんたは親よりも早く亡くなったバカ息子だけど、最後まで人助けをする」

「いい息子だよ」

母親は嬉しそうに笑ってくれた。

その笑顔が仙堂を包み込んだ。

母親にしかできない包容力。

子供を愛で包み込んでくれる。

人というのは、大切なものを失ってからその大切さに気付く。

仙堂も母親のやさしい愛が、心にしみた・・・・。

「本当にご・・・・ ありがとう・・・・・」

仙堂は謝るのをやめ、生きていた時は照れてできなかった、感謝の気持ちを伝えた。

[はい、ありがとう]

いつもやさしい母親。


「あっ! 体が!」

仙堂の体が消え始めてきた・・・。

[一はじめ!?]

息子の体が消え始め、心配する母親。

「時間がきたみたいだ」

[時間?]

仙堂は自分の体が消え始め、真面目な顔で母親に最後に伝えたいことを伝えた。

「母さん聞いて・・・」

「親孝行も恩返しもまだできてなかったね」

「生きている時にたくさんすればよかった・・・・」

「ごめん」

[そんなのいいよ]

[会いに来てくれてありがとう]

母親のやさしい言葉が仙堂の涙を誘った。

しかし仙堂は泣くのを我慢して思いを伝えた。

「・・・・だから、オレ守るから」

「母さんのこと守るから・・・・」

「そばにいるから・・・・」

「元気になってよ・・・・・」

「いつもの母さんに戻ってよ・・・・」

仙堂が思いを伝えている最中も、仙堂の体は消えてゆく。

「笑顔でいてね、母さん・・・・・」

仙堂の体が消えてゆく。

「母さん・・・・」

「ありがとう」

仙堂はこの言葉を最後に、涙目ではあるが、目一杯の笑顔で消えていった。


そこで母親の目が覚めた。


夢の中で再会した息子は、少し心も体も成長した姿で母親の前に現れた。

七年ぶりの息子、親にとってこんなに嬉しいことない。

[ありがとう]

はじめ・・・・]

母親に笑顔が戻った。

昔から変わらない、素敵な笑顔が。




《神様の部屋》


【どうでしたか?】

【あなたの思いを伝えることができましたか?】

「はい、ありがとうございます」

【そうですか】

【よかったです】

【最後の誓いを終えたあなたは、今から最初の誓いをして頂きます】

【いいですね?】

「はい」

【わかりました】

【今から誓って頂くのは、新たなスタートをきる誓いです】

【守護霊としての最初の誓いです】

【あなたの決意が、守護霊としての力になります】


【あなたは守護する人物の力になり、支えになることを誓いますか?】

「はい! 誓います」

「母をそばで見守り、支えになることを誓います」

「そばで見守り、生きていたときにはできなかった・・・・」

「恩返しがしたです!」

【・・・・・そうですか】

【あなたならきっと、素敵な守護霊になるでしょう】

【あなたの守護霊申請を認めます】

【頑張ってくださいね】

「ありがとうございます」

「頑張ります」


仙堂は守護霊になることができた。

決意の強さがあったから、守護霊になることができた。

母親への恩返しの気持ち。

生きていたときには伝えることのできなかった感謝の気持ち。

それらのすべての感情が、仙堂を守護霊と導いてくれた。


【今からあなた守護霊です】

【あなたは今から現世へと下りて、守護霊として新たなスタートをしてもらいます】

【心の準備はいいですね?】

「はい、お願いします」

神様は仙堂に手をかざし、念じ始めた。

【あなたが守護霊として力を発揮できますように】

神様の手のひらからまた、光の粒が現れ、仙堂の体を包み込んだ。

強い光が仙堂を包み込んで、仙堂は目を閉じた。


そうすると、仙堂の体が消え始めた。

ロウソクの火のように淡く、泡のように繊細に、ゆっくりと消え始めた。

消えゆく本人はとても幸せに包まれていた。

自分の体が消えてゆく感覚は、とても温かかった。

その温かさは、どこ懐かしく、どこか落ち着ける温かさ。


仙堂が眩しさに目を閉じた後、次に目を開けたときには、仙堂は現世にいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ