表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
仙堂 一という男の人生
38/44

カレンダーの赤い丸の意味

《病院》


仙堂は病院に運ばれ、すぐに手術が行われた。

仙堂は全身打撲 内出血。

外部損傷も激しい。

仙堂は本当に生死の境をさ迷った・・・。

仙堂の手術は三時間にも及んで手術は終了した。


しかし仙堂の命が助かった訳ではなかった。

仙堂の命は今夜が山だった。

今夜が無事に過ごすことができたのなら命の火がまた灯るということ。

仙堂はまだ目を閉じたまま昏睡状態が続いた。

仙堂が助けた男の子と事故後男の子を抱きしめていた母親が救急車に同乗し、今仙堂が眠る病室にした。

男の子の母親は複雑の心境だった。

本当に息子の命の恩人心から感謝していた。

けれど最愛の息子は助かったが、助けてくれた男性が死の瀬戸際・・・・。

男の子を母親は祈った 仙堂の回復を。

仙堂が回復してくれなければ母親は素直に喜べない・・・。


しかし仙堂は亡くなった。

男の子の母親の願いは叶わなかった・・・。息子の命を助けて亡くなってしまった。

母親は心から感謝した。 

見ず知らずの子供を助ける勇気。

身をていして守って下さった男性に感謝してもしきれない。

仙堂の人生の道が終了した。

予期せぬ人生の終着点になってしまった。

けれど仙堂の走馬灯の火が消えかかるときに思い出したことがあった。


最後の青空見ていたときに気付いたあの赤い丸の記念日の意味に。

彼女がカレンダーにつけてくれた赤い丸は、ふたりの記念日ではなかった。

だから仙堂は重要視していなかった。

ふたりの記念日は忘れないようにしていた仙堂にとってこのカレンダーの記念日は忘れてしまう程だが、仙堂にとって意味のある日だった。

仙堂が赤い丸の日の意味に気付いたのは赤い丸の一日前。

朝の通勤時の出来事から仙堂が病院に運ばれ、手術が行われ。

命の火が消えないように必死に昏睡状態の中 生きようとした・・・。

仙堂が息をひきとったのは深夜のこと。

日が変わり、赤い丸の記念日となっていた。


仙堂 一  二十五歳のこと。

・・・・そう 赤い丸の意味は仙堂の誕生日を表していたのだ。

仙堂の二十五歳の誕生日を。

奇しくも彼女が残してくれたカレンダーの赤い丸で気付くことができた仙堂。

遠のく意識の中仙堂は彼女に感謝した・・・。


仙堂は人生の道をスタートした日に、人生の道が終わる日にもなってしまった。




《仙堂が命を助けた子供 翔太の家の前》


仙堂が助けた男の子翔太を見つめる仙堂。

仙堂が亡くなり、生の世界というまた新しいスタートをするための世界で出会った老人の生まれ変わりを見送ったときに、翔太と不思議な再会をした。


生の世界で知り合った老人がまた新たな人生のスタートをした病院に仙堂が助けた翔太が母親と一緒に通院していた。

仙堂は無意識の内に翔太と母親の後を追った。

仙堂は生の世界から現世に下りて来る移動手段として幽霊の姿で現世に下りて来ている。

翔太達の後を追って着いた先は、見るからに新しい新築の一軒家だった。

一軒家の前では翔太の父親が新築を背景に記念撮影の準備をしていた。

仙堂は自分が助けて家族の家族事情を調べた。

生の世界には便利な腕時計があって、生の世界と現世を行き来できたり、調べたい家族の家族事情などを調べることができた。

仙堂が翔太の家族について調べた結果。

あることがわかった・・・。


それは仙堂の助けた翔太の家族の身に悲しい未来が待っていること。

腕時計では少し先の未来もわかる。

このままではこの家族はバラバラになる。

離婚するのだ・・・・。

それを知った仙堂はこの悲しい未来にはなって欲しくないと思い始めていた。

このままでは翔太が母子家庭になってしまう。

母子家庭だった仙堂には父親がいないという心に大きな傷を負うこともわかっていた。

ましてやもう一つ翔太の家族の未来についての項目があった。

それは翔太が兄になる未来。

母親のお腹に、新たな命の火が灯されていた。

腕時計で未来を知った仙堂は、未来が変わることを願った離婚しない未来を。

強く強く願った時に家族写真のシャッターが切られた。 


シャッターが切られ、写真の出来を確認した父親。

するとそこには黒い影を写り込んでいた。

強く念じた仙堂の気持ちが写真に心霊として写り込んでしまったのだ。

父親は気味悪がったが、母親はなにかを感じてくれたようだった。

翔太達家族は、仙堂が写り込んだ写真の後にもう一枚記念写真を撮影した。

二度目の写真には仙堂は写り込んでなかった 写らないように仙堂が移動したからだ。

撮り直した写真に黒い影が写ってなかったことに翔太の父親は安堵した。

無事写真を撮り終え、翔太達は新築の家の中に入っていった。

仙堂も新築の家の壁をすり抜け家の中に入った。

父親と翔太は新築の家の片づけや新築を探索した。


しかし母親は違う。

先程撮影した一枚目の写真を見ていた。

一枚目の写真を見て感じた感覚を正確なものにしようとしていた。

翔太の父親は気味悪がってすぐに消そうとしたが、母親が止めていた。

翔太と父親が新築ではしゃいでいる中、母親はカメラに写し出させる写真を見つめる。

新築の二階に黒い影が写し出されている心霊写真。

他人から見たらただの心霊写真で、気味が悪い写真かもしれない。

けれど母親はどこか気になる心霊写真だった。

翔太の母親は心霊写真や怖い話が苦手な方だ。

そんな母親が気になってしまう心霊写真。


黒い影 それはどこかやさしく、幽霊という恐怖を感じさせなかった。

黒い影が仙堂と認識することはできないかったが、なにかを伝えようとしているのはなんとなくわかった気がした・・・・。

「どうしたの?」

先程まで父親と新築の探索をしていた翔太が、母親の異変に気付き声をかけてきた。

[あ! あの時の兄さんだ]

[え? わかるの?]

翔太が母親が見ていたカメラを覗いて呟いた。

「うん あの時の兄さんが写っているよ」

「母さんは見えないの?」

[え? 黒い影でしょ? あの時のお兄さんって?]

翔太には、はっきりと仙堂の顔が写し出されているように見えていた。

小さな子供がよく幽霊を見たりするのは、まっすぐの目で純粋に見ることができるから幽霊まで見えてしまうのだ。

「黒い影じゃないよ」

「僕を助けてくれた兄さんだよ」

翔太には、はっきりと見えた。 

自分の命の恩人の顔が。 

[うそ・・・ 本当に翔太?] 

[お兄さん写っているの?]

「うん本当だよ」

「僕達を見ているよ」

「お母さんには見えないの?」

[うんお母さんには黒い影にしか見えないの]

「ふ~ん 変なの~」

翔太は仙堂が写り込んでいることには驚きもせずまた新築を走り回った。

[本当に翔太には見えたのかな?]

[仙堂さんが写っているの? この影]

翔太の母親は写真を見つめる。 

自分にも仙堂が見えるのではないかと思いながら。

しかし翔太の母親には仙堂の姿は見えなかった。

大人になると心の中に自然と否定というフィルターをかけてしまう。

実際に見える真実でも大人には見えなくなる事実もある。


きっと仙堂の姿を見える大人もいるのだろう。

翔太の母親には仙堂の姿は見えなかったが、親は子供の言葉を信じる。

翔太が見えるというのなら本当に黒い影の正体は仙堂さんなんだろうと思う母親だった。そして仙堂さんなら怖いということはなく、見守っていて下さったのなら感謝してもしきれない。

[もし仙堂さんなら、私達家族のことを心配してくれたのですね・・・・

[ありがとう・・・・]

翔太の母親は、心の感謝をし続けた。


今この時、この瞬間を翔太と一緒に迎えることができるのも仙堂さんのおかげ。

翔太の母親は仙堂が亡くなったあの夜に誓ったことがあった。

それは仙堂の分も生きること。

仙堂さんの分まで喜んで、仙堂さんの分まで苦労して、仙堂さんの分まで楽しむ。

もちろんひとりでふたり分の人生を生きることは難しい。

ひとつの人生を生きるのだって難しい。

だから家族みんなで仙堂さんの分も生きるのだ。


もし仙堂さんが翔太の命を助けてくれなければきっと家族はバラバラになっていたでしょう。

私は自分を責め、夫は事実を受け入れることはできなかったでしょう。

そんなことを考えてしまうと背筋が凍ってしまう。

翔太が亡くなっていたのなら、母親は自ら人生の道を終わらせるだろう。

仙堂は翔太の命だけではなく、母親の命も助けていた。

自分の命とひきかえにふたつの命を救った。仙堂は自分の命が失われたことを後悔していたが、翔太達を見ていると少しだけ自分の命を代償としてよかったような気がした。


そんな家族に悲しい試練が待っている。

このままでは離婚してしまう・・・・。

思わず写真に写り込んでしまったことで、母親に未来の危機を伝えることができただろうか?

いや きっとわかってくれる。

どうしてオレが写真に写り込んだのかを。

きっと悲しい未来にはならないだろう。

離婚という危機をこの家族はのり越える。

それに家族を微笑ましく見守っている守護霊達もいることだし。

仙堂の他にこの家族を見守って人物がいた。

親族や友人達がこの家族を守っている。

きっと家族は離婚の危機をのり越える。

のり越えると信じよう。

仙堂は翔太達家族を信じて新築の家をあとにした。


未来はなにがあるかわからない。

わからないからこそ未来は変えることができる。

未来を良くするのも悪くするのも自分次第。きっとこの家族は素敵な未来に勝ち取るだろう。

仙堂が老人の生まれ変わりを見送って再会した仙堂が命を助けた翔太。

人助けを後悔していた仙堂だったが、今回 翔太達家族との再会で、自分が人のためになっていたことを実感した。

翔太達家族との出会いはなぜか仙堂は自分の家族に会いたくなった。


幽霊は便利である。 

仙堂は空を飛び、実家へと向かうことにした。

仙堂が実家に帰るのは何年ぶりだろう。

大学から一人暮らしをしてから仙堂は実家に帰っていなかった。

たまに電話をするくらいで親に顔を合わせることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ