親を決める
「・・・・ダメだ。オレが競り合えそうなものねぇ~」
「すべての情報にあるポイントがオレのポイントより、二倍も三倍も高い」
老人が無理だと言った理由が今わかった気がした仙堂は、モニターを見ながらしゃがみ込んだ。
『そう肩を落とすんじゃないのぉ~』
『金持ちの子供になりたい者は多くいるんじゃ。多くの者が自分のポイントを使って競り合うんじゃ』
『じゃから、ポイントが多く必要になる。前世で良いことをした者が有利なんじゃ』
『前世での功績は来世へと続くんじゃ』
「美人・・・・・ 美人だ!」
『なんじゃ!?』
しゃがみ込んでいた仙堂がいきなり立ち上がり、強い意志で美人と叫んだ。
「美人な母親のとこに生まれれば、美人な母親を友達に自慢できるし!」
「それに美人な親なら、子供も美男子になれる!」
「父親もかっこよければなお よし!」
興奮しているのか、少し早口になって熱弁する仙堂。
仙堂の美人についての熱弁に呆気に取られる老人。
『な なんじゃ! いきなり』
『もう金持ちの子供にならなくとも良いのか?』
老人は自分の頭を整理するために仙堂に問いかけた。
「あきらめた!」
「金持ちより、美人な親調べてくれよ」
「あ 下さい」
『あきらめたじゃと! そんなにすぐにあきらめて良いのか?』
「いーの いーの 考えたけど、まずオレが美男子に生まれ変わって人生楽しみながら、この世界で知った情報を活かして人助けとかすればいいことで、そんで人助けすればポイント高いから次の人生で金持ちの子供に生まれ変わる計画を立てたのだ」
胸を張り、たった今思いついた自分の考え発表し威張る仙堂。
仙堂の切り替えの速さに、またもやあきれる老人。
『あきらめの早い男じゃ』
『それにバカじゃ』
「バカ!? どこがバカなんだよ。じいさん?」
仙堂はその計画に盲点があることにまだ気付いてはいなかった。
『美人な親の子供になることは、今のおまえさんが金持ちの子供になるよりは可能性の高いことじゃ』
「だろう~! 我ながら名案だろ」
また胸を張って、自分の考えた案に脱帽している仙堂。
『やはりバカじゃ』
「さっきからバカバカ言い過ぎなんだよ。じいさん!」
「オレのどこがバカなんだ」
『び 美男子じゃったか? その美男子になるまでは良いが。おまえさん、さっきわしが言ったこと、もう忘れておるじゃろ』
「さっき? さっきってなんだよ?」
『生まれ変わればおまえさんの記憶はどうなるんじゃ?』
「オレの記憶? ・・・・・あ!」
『そうじゃ。生まれ変われば記憶など覚えてはおらん』
生まれ変わる際に記憶などは覚えてなく、魂となり、また新しい人生が始まる。
「いや 覚えてる! てか覚える」
『覚える? どうやってじゃ?』
「・・・・・・・・・気合いで!」
『はぁ~ そうか がんばるんじゃな』
仙堂の根拠のない自信にあきれ過ぎて、もはや疲れが出ている老人。
「頼むよ じいさぁ~ん。美人な母親探してくれよ~」
「探してくれたら、じいさんの言うことなんでも聞くからさぁ~」
「お願い! 調べて下さい!」
仙堂は本当に探して欲しいのかよくわからないくらいに体をくねくねさせながら老人に頼んだ。
『わ わ わかった』
『わかったから、そのくねくねやめろのう』
これまでのやりとりで少々老けた老人はモニターを使って、美人な母親について探し始めた。
『この子はどうじゃ? 美人じゃろ?』
「あ~ う~ん~ 美人だけど、ちょっと違うなぁ~」
『そうか 違うのか』
『じゃあこの子はどうじゃ?』
「あ~ おしいな~ もうちょっとなんだよなぁ~」
『なにがおしいのかのう?』
老人は繰り返し美人だと思う母親を仙堂に見せたが、ことごとく仙堂は否定ばかりした。
仙堂が否定ばかりしている間に、生の世界への扉からは数人の生まれ変わり候補者達が入って来ていたがまだ決まらない。
仙堂に美人だと思う母親を紹介し続けた老人だが、堪忍袋の緒が限界になり、仙堂に少々怒りを覚えた。
『おまえさんの美人の基準がわからん!』
『おまえさんが自分で見つけろのう』
「そうか! 別にじいさんに頼まなくても、自分で調べたらよかったんじゃん」
老人の怒りなど微塵も感じ取っていない仙堂は、老人そっちのけで調べ始めた。
悪意のない仙堂の無視に、怒りを覚えたのがバカバカしくなって、ため息を吐いた老人。
『はぁ~ わしはちょっと疲れた』
『おまえさんは調べておれば良い。わしは扉の前に戻るからのう』
老人は中央のモニターから元いた扉の前とゆっくり戻って行く。
「わかった ありがとう」
仙堂は軽い返事を返し、モニターに向かう。
『あ そうじゃおまえさん』
ゆっくりと歩いていた老人は何かを思い出し、足を止めた。
「なんだ じいさん?」
老人に声をかけられ、振り向いた仙堂。
『おまえさんの気に入った母親が見つかったら、わしに教えろよのう』
『親の申請について教えるからのう』
「あ わかった」
またも軽い返事を返す仙堂。
仙堂の返事を聞いてからゆっくり扉の元へ歩いて行く老人。
老人が扉の前に座ってから
仙堂がモニターで美人の母親を決めるまでに三人が生まれ変わりを成功しているほど、仙堂は悩んで美人な母親を決めた。