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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
仙堂 一という男の人生
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仙堂 一の一生


《仙堂 一の一生》


仙堂も母子家庭だった。

今の時代では母子家庭も特に珍しくないだろう。


けれど仙堂が現世にいた時代は、クラスに母子家庭の人が二人居れば多い方だった。

それに仙堂は幼少の頃から母子家庭だったため、母子家庭の意味を知らなかった。

仙堂が母子家庭の意味を理解したのは保育所のある行事だった。


それは父の日。

お父さんに素敵な似顔絵をプレゼントする行事。

[さぁー みんな! お父さんにいつもの感謝の気持ちを込めて]

[お絵描きしましょ~う!]

保育園の先生の元気な掛け声で一斉に大好きなお父さんの絵を描き始める子供達。

しかし先生の掛け声は、仙堂の心を止めた。


先生が意味のわからないことを言っている。

先生が意味のわからないこと言っているのに、他の園児達は楽しそうにそのお父さんと言う人物を描いている。

仙堂は戸惑った。

どうして自分は、そのお父さんという人なんか知らないんだ。

なのにみんなは、すらすらと似顔絵を描きいている。


誰のことなの・・・・・・ お父さんって?


誰なの・・・・・・


まだ真っ白な紙のままの仙堂に気付いた保育園の先生。

[あ! 仙堂君はおじいちゃんの絵を書こっか・・・・・・]

保育園の先生はもちろん仙堂が母子家庭だと知っており、祖父の似顔絵を書くように言われた。

保育園の先生に言われるがまま祖父の似顔絵を描いた。

けれど仙堂の心は痛かった。

仙堂にだってわかっていた。

自分がみんなが描いているお父さんという人物とはまったく別人の絵を描いていることに。


なぜなら 

クラスに居た他の母子家庭の子も仙堂が祖父の似顔絵を描いているのに、そのお父さんという人物を描いているからだ。

あとから考えるとクラスに居た他の母子家庭の子は、父親の知っていたのだ。

だからお父さんを描くことができた。


しかし仙堂は父親の顔を知らない。

父親の顔を知る知らない以前に、父親という存在自体知らない。 

このお父さんの似顔絵を描くと言う行事があるまで知らなかった。


仙堂が生後二ヶ月のときに両親は離婚していた・・・・・・

仙堂の家族は母、姉、祖父、祖母の五人家族。

どこの家庭も母、祖父、祖母、そして兄弟の家族構成だと思っていた。

けれど違った・・・・・・


仙堂は自分に父親がいない。

ましてや父親の顔すら知らない。

しかし仙堂は母親にどうして父親がいないのかと聞けなかった、

母親にそれを聞くことで、母親を責めることになると思ったからだ。

母親は母親で、仙堂のためを思って父親のことを隠していた。

けれどそれが、仙堂の心に大きな傷をつけることになるとは思わずに・・・。

仙堂は父親ってなに?とは聞くことができなかった。

誰にも相談できなかった。

だからその父親が家族の中で、どういう存在なのか。

わからないことが辛かった。

保育所での年に一度のこの行事が仙堂は嫌で嫌でしょうがなかった。


けれどこの嫌で嫌でしょうがなかった行事も時間が解決してくれた。


それに母子家庭は悪い面ばかりではなく、良い面もあった。

父親の件をきっかけもあり、女手ひとつで育てくれた母親に感謝するようになった。

できるだけ母親に迷惑かけないようにした。

今自分ができる母親の手伝いをして、少しでも母親の力になりたいと思った。

この行動をしたら母親に迷惑が掛かるからやめとこう。

これを頑張ったら母さん喜ぶかなぁ頑張ろう。

仙堂は幼少の頃から物事を考えて行動するようになった。

よく言うと慎重だが、悪く言うと優柔不断。

だから仙堂は慎重で優柔不断な性格。

性格に正解はない。

人を表す性格が人格になり、一人一人の個性になる。

だからいろんな人生がある。

仙堂は母子家庭のおかげで。

一般家庭の子供よりも心の成長が早かった。母親に心配や迷惑を掛けない。

それは母親へ気持ち。

心を大切にしたいということ。




心・・・目には見えないが、感じることはできる心。心は繊細で脆い。 

何気ない一言でも傷つき壊れてしまう。

心の繊細さは仙堂が一番理解していた。

心が傷ついた痛みも知っている。

体についた傷は時がたてば治るが、心の傷は治る保証はない。

傷ついた心は時と共に痛みを増していく。

後悔や失敗が心を絞め付ける。


けれど心の傷は治すのは難しくても、心の傷を埋めることはできる。

勇気を出して相談するのだ。

両親や友人に。

自分一人では心の傷を埋めることはできない。

相談することによって心の傷を埋めることができる。

両親や友人に相談した結果。

自分が考えていたのとは思わぬ答えが返って来て、心の傷の痛みを和らげることがある。

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