見届ける
仙堂は誠と由美子が生まれ変わりを幽霊となって見届けた。
「よかったな じいさん」
「ずっと好きだった相手と生まれ変わることができて」
「長い年月お互いがお互いを思い続けていたなんて 結構すげぇーな」
仙堂は誠の強い気持ちが叶ったことをしみじみ実感していた。
「本当によかったな。じいさん生まれ変わるとき笑ってたな」
「相当嬉しかったんだろうなぁ」
老人の生まれ変わりを祝福していた仙堂だが、あることに気がついた。
「ん? あれ・・・・」
「オレなぜかサエメンおっさんとじいさんの生まれ変わりに立ち会ってる?」
仙堂はいち早く生まれ変わりたいと思っていたが、なぜか真人や誠の生まれ変わりを見届けてしまっていた。
「あぁー・・・・ オレ生まれ変われんのかな~」
少し不安になってきた仙堂。
「はぁ~ ひとりになちゃったしなぁ~」
「これからどうすっかなぁ~・・・・」
真人や誠の生まれ変わりを見届けた仙堂は、ただ単純に美人な母親を探すことはやめた。
二人のようにしっかりとした意思のある生まれ変わりをすることを決めた仙堂。
「じいさんも赤ちゃんになったし、せっかく幽霊になったんだからちょっとぷらぷらするか」
仙堂は現世に下りるために守護霊という移動手段を使って老人の生まれ変わりを見届け、老人が生まれ変わった病院をふわりふわり浮きながら散策を始めた。
「お~ 結構赤ちゃんいるんだなぁ~」
「一階に下りてみるか」
仙堂は何気なく病院の一階に床をすり抜けて下りた。
一階は小児科のようだ。
「へぇ~ 二階は産婦人科で一階が小児科か 便利だな」
「へぇ~・・・」
仙堂は病院内を散策つもりで一階に下りて来たが、どうやらもう飽きてきているようだ。
「う~ん 病院にいてもつまらないし、どっか遊びに行くか・・・」
「どこ行こうかなぁ~ ん?」
仙堂が現世を楽しもうとしていると、仙堂の生涯でたった一度しか会ったことのない人物が仙堂の目の前を横切った。
「ん? あの坊主・・・・」
「オレが助けた坊主だよな!?」
そこには仙堂が命を助けた男の子がいた。
仙堂自身は男の子の命を助けたことで、自分の命を落としてしまったことを後悔していた。
「そうだ・・・ あの坊主だ」
仙堂は自分が助けた男の子を追いかけた。
幽霊になると移動手段が簡単で、すぐに男の子に追いついた。
[コラ! ふらふらしない!]
男の子を追いかけていた仙堂の後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「へぇ!? あっ オレじゃなかった」
仙堂は幽霊なのだが、自分が怒鳴られたと思い、振り向いた。
もちろん仙堂ではなく、仙堂が追いかけていた男の子に向けての怒鳴り声だった。
[勝手に走っちゃダメっていつもいているでしょ! 翔太!]
[この前だって横断歩道で危ない目にあったでしょ]
やはり仙堂が助けた男の子で間違いないようだ。
仙堂が助けた男の子の名前は翔太。
仙堂のおかげで助かった男の子。
「やっぱり・・・・・・ オレが助けた坊主だ」
老人が生まれ変わった病院で、仙堂にも不思議な運命の再会が待っていた。
仙堂は現世の散策などもう頭になく、翔太を観察し始めた。
自分が助けた命。
本当に自分が命をなげうって助けたのは正解だったのか知りたくて。
老人には人助けを褒められたが、今でも自分が命を亡くしてまでの人助けを後悔していた。
[ほら 帰るよ翔太]
翔太と母親は病院に来ていたことから、なにか病気で通院しているのだろう。
仙堂が助けた翔太は、母親に連れられ病院を出てから一軒の花屋へと向かった。
仙堂も無意識に親子について行った。
花屋に着いた親子は、きれいな花や明るい色の花ではなく、白い花束を買った。
花を購入後、母親は翔太の手をひき、母親はある場所へと足を進めた。
白い花 白い花で連想できる目的地は限られるだろう。
そう 親子が向かったのは仙堂の墓の前だった・・・。
買ってきた白い花を供えた母親。
[はい 翔太手を合わせて]
[翔太のこと助けてくれたお兄さんにお礼しなさい]
「・・・・・・」
なにも言葉がでなかった仙堂。
自分の墓を目の前にしたからではない。
親子が自分の墓参りをしていたことが、仙堂はなんとも言えない気持ちになった。
嬉しい訳ではない。
なにか複雑な気持ち。
感謝されている。
感謝されていても素直に喜べない。
なぜなら自分が死んでしまったから・・・・・・




