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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
誠という男の人生
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誠と由美子の はじまりはこれから


《生の世界》


[私は誠さんからの最後の手紙を受け取ったあの夜に、誠に会いに行ったんです]

由美子はどうして自分が若いままの姿でいるのかを話し始めた。

『じゃあ・・・・ どうして・・・・ 私達は会うこともなく、ここ 生の世界にいるんだい?』

ふたりは現世では、由美子が実家に連れ戻されてから一度も会ってはいない。

誠は人生をかけて由美子を待ったが、誠が老人になっても由美子は現れなかった。

[誠さんからの最後の手紙をもらったあの夜・・・]

[私は最終の電車に乗って、誠さんに会いに行きました]

[その日の夜は、強い雨が降っていて視界も悪く、悪天候でした]

[私は誠さんに会える喜びで、幸せいっぱいだったときに、電車が急ブレーキを掛けました]


キィー  ドン!

[運転手の操作ミスでした・・・ オーバースピードでカーブに差し掛かり、急ブレーキを掛けられ・・・・]

[私が乗った電車は、脱線しました・・・]

『そ そんな・・・・!』

由美子の乗った電車は事故を起こした。

由美子は重傷となり、病院で息をひきとった。

由美子が生の世界に来た経緯を聞いた誠は、自分を責めた。


『私が会いに行けばよかった・・・ 毎日会いに行けばよかった・・・』

『そして最後などと言わず、手紙も毎日書き続けていれば、由美子さんはまだ生きていたかも知れない』

『すまない・・・ 私が未熟だった・・・』

誠は毎日由美子に会いに行っていれば、最後と書いた手紙がなければ、由美子は死なずにすんだのではないかと考えて、由美子に謝罪した。

誠の謝罪を切なそうな顔で由美子は否定した。

[謝らないで下さい。誠さんに謝られては、私は悲しくなります]

[誠さんの最後の手紙があったから、私は両親を説得できたんです]

[それに誠さんを待たせてしまった分、私は生の世界であなたが来るのを待っていました]


『・・・そうか 私より先に生の世界で待っていてくれたんだね』

『ありがとう』

『現世で私が由美子さんを待っていたつもりが、私が君を待たせてしまっていたね』

『どうやら私は少し長い生きし過ぎたようだ』


「それは違うぞじいさん」

状況がまだよく理解できていない仙堂だったが、老人となった誠が長生きしてしまったことを後悔しているような発言を聞いた仙堂は否定をした。

「人は長生きしてこそだろ。そんなことを言うなよ じいさん」

「オレだってもっと長生きしたかったぜ」

「なにがあろうと、なかろうと、長生きし過ぎはねぇーよ。 じいさん」

「長生きは三文の徳だろ」

状況がわかっていないわりには良いことを言った仙堂だが、少し訂正するなら早起きは三文の徳である。


『そうじゃな。それはわしが間違っていた』

『長生きは良いことじゃ。こうして由美子さんに生の世界で会えたわしは、長生きもできて良い人生じゃった』

『由美子さん もう謝りません』

『ありがとうしか由美子さんには言いません』

『私は現世で由美子さんに出会えて幸せ者でした』

『まだふたりが子供だった頃、仲良くしてくれて ありがとう』

『私を好きになってくれて ありがとう』

『最後に私に会いに来ようとしてくれて ありがとう』

『生涯を添い遂げることはできなかったけれど、こうして生の世界で待っていてくれて ありがとう』

『私も勝手ながら生の世界で由美子さんを待っていたんだよ』

『もう生まれ変わってしまったかも知れないし、もう他の相手と結婚し、幸せに暮らしているかも知れない』

『でも私には信じて待つことしかできなかったから』

『だからもし・・・ 由美子さんさえ良ければ、もう一度私にチャンスをくれませんか』

『もう一度 私のそばにいてくれませんか』

誠は男として あの頃できなかったプロポーズを由美子にした。

かっこいいプロポーズなんてできなかった。ただただ、由美子に対する素直な気持ちを伝えた。


誠の変わらない気持ちを聞いた由美子。

答えなど決まっていた。

由美子だってあの頃から気持ちは変わっていないのだから。




《小さな田舎の病院》


一日に何人も人が生まれ、何人の人が亡くなっているだろう。

そして何人の人が同じ誕生日になったり、同じ時間に産まれたりするのだろう。

さらには同じ血液型だったのなら、なぜか親近感もわいてくるだろう。


けれど同じ誕生日でも、同じ時間じゃなくても、血液型だって違っても。

なぜか不思議な縁を感じることがある。

不思議な 不思議な 縁。

小さな田舎の町に小さなふたつの命が誕生した。

誕生日は一緒ではないし、血液型だって違うふたつの命。

唯一一緒なのは産まれた病院。

病院のベットの隣同士で寝ているふたつの寝顔。

小さな顔に小さな体、小さな手足。

小さくてかわいい ふたりの赤ちゃん。


そう このかわいいふたりは、誠と由美子の魂が入った赤ちゃん。

ふたりの記憶などはない。

また新しい人生が待っている命達。


子供の成長は早い。ふたりはいずれ、よちよち歩きや立って歩くようになって。

お話しができるようになって、保育園行く。

保育園に行ったら友達ができるだろう。

ふたりはのちに同じ保育園に通う幼なじみとなる。


きっと、このふたりにも誠と由美子のように、まだ小さな小指だが、きれいな赤い糸がついていることだろう。


のちに素敵な家庭を築くことを祈ろう。


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