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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
佐藤 真人という男の人生
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アイ・デェー 再び

「マジかよ~ じーさん! ぷっ!」

「ふ~ん 初恋かぁ~ 初恋?」

「初恋って! じいさん いつの初恋だよ?」

『・・・う うるさい!』

『おまえさんには関係ないだろ!』

「そうだな~ じいさんがずーっと同じ人を好きだなんって俺には関係ないなぁ~ 

ぷっ!!」

「初恋を忘れられないじいさんのことだもんなぁ~ オレには関係なかった」

ここぞとばかりに老人をからかう仙堂。

しかし 仙堂はふとあることに気付いた。

「ん? でもその初恋の人はまだ生きてんの?」

「もう生まれ変わってたりするんじゃないか?」

『そうじゃな。生まれ変わってしまったかもしれんな』

『まあ もし生まれ変わってしまっているのなら、それもまた運命じゃ』

『わしが待っていることは意味のないことかもしれんが、わしは意味があると信じて待っていたい』

『気持ち悪いか? わし』

老人は小さく笑って、つい自分が生の世界に残っているのかの理由を説明してしまった。



「じゃあ 検索すれば?」

「モニターに初恋相手の名前入れればいいんじゃね?」

仙堂はめずらしく良い案を出した。

『それは無理なんじゃ』

『モニターで検索できるのは、これから親になる者だけなんじゃ』

中央のモニターで検索ができるのは、これから親になる者だけ。

老人の初恋相手は既に親になっているだろう。

『わしもこの世界に来たときに検索してみたが、検索されなかったんじゃ』


「そうなのか」

「じゃあ どうしようもないな・・・・」

『そうじゃな まあ わしのことはよいから、おまえさんはおまえさんの生まれ変わりに専念しろのう』

「う~ん そうか・・・・でもじいさんの生まれ変わり手伝ってもいいぜオレ」

「じいさんにはこの世界でいろいろ教えてもらったし」

仙堂は生の世界に来てから老人には手取り足取り教えてもらった恩があった。

『よい わしはわしで頑張るからのう』

『それにおまえさんは早く生まれ変わりたいんじゃろ?』

『わしが待っている人はいつこの世界に来るのかもわからんし、もう生まれ変わっておるかも知れないしのう』

『わしはずいぶんこの世界で待っておる。もう人を待つのには慣れたわい』

『おまえさんの性格じゃ 人を待つのは苦手じゃろ』

「む! なんだよ! こっちが親切に手伝うって言ってるさぁ~」

仙堂は性格を言い当てられ、イジけた。

「あー わかった ぜってぇー 待つ」

「待つつったら待つ!!」

「百年だろうが、千年だろうが待ってやるよ! じいさん!」

仙堂は大口を叩いた。

ケンカ腰の言い方だが、仙堂は老人に恩返しがしたかったのだ。

『わしのことは良い』

「うるさい! 待つつったら待つの!」

「そ それに・・・ それに いや やっぱなんでもない」

仙堂はなにか言おうとしてやめた。

『なんじゃ? なにを言おうとしたんじゃ』

「いいって 今のなし」

『なんじゃ 気になるじゃろ』

『ほれ 言ってみい 恥ずかしがらずに ほれ』

「う うせぇ~な! もしじいさんの待っている相手が、オレにいろいろ教えてくれたときに生の世界に来てて、なにも知らずに生まれ変わってたら、なんかしゃくだし、オレのせいにされても困るから」

「だから待つんだ」

口は悪かったが、きっと老人の力になりと思っている仙堂。

『そうか』

そんな言葉足らずの仙堂の思いをちゃんと理解し、心の中で感謝した老人。

『じゃがな 待つしか方法はないぞ?』

『おまえさん 本当に待てるのか?』

「だ! だから待つって言ってんだろ しつけなぁ~」

「てか本当に待つしか方法はないのかよ?」

『ないと言っておるじゃろ』

「いや まて! 今考えるから」

そう言うと仙堂はなにか解決方法はないかと考えた。




《数分後》


生の世界の扉の前に座っている仙堂の姿があった。

どうやら解決方法は見つからなかったようだ。老人と仙堂は、交代で扉の前で待つことになった。

すると扉の前に座っている仙堂に、女性が歩み寄って来た。

[あの~ すいません]

[今 お暇ですか?]

生の世界の扉の前でボーっとしている仙堂に、話しかけて来た一人の女性。


「ん?」

老人と交代で扉を見ることになった仙堂だったが、下を向き、ボーっとしているときに女性に話けられ、顔上げた仙堂。

「え! うわ!!」

顔を上げると、そこには肌の白いとても美しい女性が仙堂が目の前にいた。

「・・・・! な なんですか?」

女性に見とれていた仙堂は、ふと我に返り、ちょっとかっこつけて聞き直した。

[今お暇ですか?]

とても上品な聞き方の女性。

「全然暇です!」

仙堂は即答した。

老人との約束はいったいどうなったのだろう。

[本当によろしんですか?]

「はい! 大丈夫です! どうされました?」

[実はですね。私はこの世界にとても長くいるんですが、中央のモニターの使い方がいつもよくわからなくて]

「教えます!!」

食い気味で即答する仙堂。

[本当ですか! 本当に助かります!]

[この世界にいるみなさんは、とても忙しそうで、話しかけるのがおこがましくて]

簡単に言うと仙堂が暇そうだったから勇気を出して声をかけたということだ。

「オレで良ければ全然教えます!」

美しい女性に話しかけられ、気分が良くなった仙堂。

「さあ! 行きましょう!!」

仙堂は意気揚々と中央のモニターに女性と向かった。

老人との約束はいったいどうなったのだろう。

中央のモニターに着いた仙堂は、美しい女性にモニターの操作方法を教えた。

「いいですか? このモニターで生まれ変わりの申請などします」

「そして自分のIDを入力します」

[アイ・デェーですか?]

「え? いやいや IDですよ。知りませんか?」

美しい女性は、老人と同じ間違いをした。

今の若い女性なら、IDを知らない者はいない気がするが。

[え!? 私 なに間違いましたか?]

「あ! いえ! 私が間違えました」

「アイ・デェーです」

自分がなにか間違ってしまったのではないかと、困った顔して美しい女性を見て、自分が間違ったことにした仙堂。

「いいですか このアイ・デェーを使ってですね」

美しい女性とふたりっきりで、浮かれている仙堂に、老人との約束を破った罰があたった。

『なぜ ここにいるんじゃ』

仙堂の後ろの方から、老人の声が聞こえた。老人の声が後ろから聞こえ、仙堂は自分の体温が冷たくなっていくのを感じた。


「やっべぇ~ 絶対怒られる~」

仙堂は小さく呟きながら、ゆっくりと振り向いた。

ゆっくりと振り向くと、老人の顔には、怒りの表情ではなく、涙が見えた。

「ん? どうした じいさん?」

『ど どうして そんなに若いままの姿でいるんじゃ』


『由美子さん!』

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