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スタートライン~はじまりはこれから~  作者: 葵
死の後~はじまりはこれから~
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生の世界の扉が「今」

 人は死んだらどうなる・・・・・・


 天国に行くのか? 地獄に行くのか? はたまたどちらも存在しないのか。

 誰もわからない。誰もが一度は考えて、結論が出ずに生活し、一生を終える。

一生を終えたのなら、人は死んだらどうなるかの結論を体験できるだろう。

しかし、体験しても誰にも伝えることができない謎の空間。



 謎・謎・謎  謎とは、この世に数えきれないほどあり、死の世界にも謎がある。


 では、生の世界にも謎はないだろうか。どうして私は生まれてきたのだろう。

私なんか生まれてこなければよかったのに。そう思ったことはないだろうか。


「死人に口なし」

死の世界はわからない謎だが、その先にある生の世界がわかるとしたら。


「輪廻転生」

「輪廻」とは車輪が回転し続けるように、人が何度も生死を繰り返すこと。

「転生」とは生まれ変わること言う。

 人は余程の悪事をしなければ、人にまた生まれ変わることができる。

そしてどんな人間に生まれ変わるかを自分自身で選択することができるが、誰もが生まれ変わるなら、よりよい人生を送れるように金持ちの子供や芸能人の子供になりたがる。

しかし、選択ができるからといってすぐに決まることではない。


 そんな話をしていたらまた、死の世界から生の世界へと続く扉が開いたようだ。

真っ白な扉がゆっくりと開いた。

雲のような白い壁にやさしい光が差し込む世界。



 真っ白な空間にある真っ白な扉から不思議そうに顔を出している男がいた。

「・・・・じいさん、ここは?」

男が扉を開け、目の前にあぐらをかいて座っている白髪の老人に話かけた。


男の名前は仙堂せんどう はじめ  二十五歳

仙堂の目の前にいる老人が仙堂の問いに答えた。

『ここか? ここは生の世界じゃよ』

「生の世界・・・・」

老人は意味のわからないことを仙堂に告げた。

けれど、ひとつわかることは仙堂がたった今、この世にいないということだ。


「生の世界って・・・・・・ だってオレ死んだばっかだぞ!」

『死んだら生まれ変わるんじゃよ。ここは生まれ変わるための待合室のようなものじゃ』

「待合室?」

待合室と言った老人だがこの世界にはイスなどなく、老人は地べたにあぐらをかいて座っている。

そしてこの世界はやさしい光をさえぎる物は一切なく、良く言うと几帳面な人の部屋のように家具が必要最低限しかない部屋のようで、悪く言うと殺風景な世界だ。



『おまえさんは、どうして死んだじゃ?』

「事故死」

仙堂はさらりと自分の死因を発表し、老人は驚くことなく死因を受け入れ、話を進めた。

『事故死かぁ~、事故死はポイントが低いぞ』

「ポイント?」

「なんのポイントだよ?」

現世にも数多くのポイント制度があったが、この世界にもポイント制度が存在した。

『ポイントと言うか、ここでの通貨のようなものじゃ。その通貨を使って、生まれ変わる人生を選ぶんじゃよ』

「生まれ変わるのか・・・・・オレ?」

仙堂はまた生まれ変われることに素朴な疑問を思った。

「・・・で、オレのポイントが低いって何ポイントなんだよ」

『申請しなければ詳しくわからんが、事故死はざっと500ポイントくらいかのう』

「そんなに低いものなのか?」

ポイントの基準がわからない仙堂は、自分のポイントの低さがよくわかっていないようだ。


『寿命を生き抜けばもっと貰えるんじゃよ。それにポイントはまだ貰える方法があっての。人生の中で人助けや良いことをするとポイントが貰えるんじゃ』

老人の人助け発言に、あることに気付いた仙堂は自分の事故死の詳細を少し早口で語り始めた。

「それだったらオレ、人助けて死んだ。子供が横断歩道を渡っていて、そこに車が突っ込んで来たから・・・・・・ 子供は助かったらしいが、オレは死んじまったんだ」

『・・・・・それは勇気ある行動だったのう』

老人は仙堂の勇気ある行動に敬意を称してやさしく声かけたが、仙堂は老人の敬意を素直に受け入れることができなかった。



「勇気ある行動じゃねぇーよ! 自分が死んだらなんも意味なんってないんだよ!」

自分の死という重さを仙堂は声を大きくして老人にぶつけることで、老人の敬意を一掃した。

そんな仙堂の興奮を冷静に受け止めた老人は、静かにやさしい言葉を仙堂にかけた。

『意味など、すぐになど出んのだよ。 意味はおまえさんの言動や行動すべてのものにあって、おまえさんの心からの行動だったんじゃ』

『人を助けた行動も今は意味をなさんでも、ずっと先のおまえさんのためになるんじゃ。必ず』


「死んだ先には未来なんってないんだよ。じいさん。死んだら終わりなんだよ」

仙堂はさらに大声で否定し、老人は受け入れられない否定を受け止め、またやさしく言葉をかけた。

『死んだ先にもこうして未来があるじゃないか』

『死んで終わりじゃない。死んでまた、生まれ変わるんじゃよ』

『生まれ変わった先に何があるかは、わしにもわからん』

『だが、こうして生まれ変わることができるのは前世で過ちを起こしてない証拠じゃ』 

「そうか・・・・そうかよ」

「だったらオレはなにがなんでも次の人生を有意義にしてやるよ!」

仙堂は前世での人助けを人生の汚点と捉え、来世への幸福を老人に強気に誓った。


「じいさん さっき自分で人生選べるって言ってたな。どうやって選ぶんだよ」

「教えろよ」

強気になった仙堂は老人に命令口調で問いかけると、老人は先程までのやさしい言葉使いではなく、少々ドスの利いた声で仙堂に言い放った。


『教えろよ? それは人にものを頼む言葉かのう』

「・・・・・・教えて下さい。」

老人の威圧感にさっきまで強気だった仙堂は頭に上った血が急に下がり、冷静になったようだ。

『よろしい』

仙堂の素直な頼みを聞き入れ、微笑みながら小さく頷いた後に生まれ変わりについて説明し始めた老人。



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