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マキナの落とし子  作者: Doya tsuchi
第2章 人形使いの人形
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Ⅰ. 埋もれる隠者

隠者:いんじゃ

   タロットの大アルカナ、カード番号は9。

   正位置の意味は、「経験則、高尚な助言、秘匿、思いやり、変幻自在」

   逆位置の意味は、「陰湿、消極的、無計画、誤解、悲観的、劣等感」

さて、破れた(いや破った)ぬいぐるみを直すため、

裁縫道具があるという場所へ、私とディアンはたどり着いた・・・と。

言いたいところなのだが。

残念ながら、私達はとある問題に直面していた。


「こりゃー進めませんねェ・・・」

私が今左手に持っている黒うさぎが大暴れしたせいで、

もともと何もなかった所に、大量にガラクタが流れ込み、見事な川を作ってしまっていたのだ。

人間からすれば、きっと何ともないぐらいなのだろうが、

体の小さい私からすれば、通ることなどまるで叶わなかった。


「どーしますカァ?」

「どうするって言ったって・・・。

進めないんじゃ、どうしようもないわ。

はぁ・・・。

ここで怪異でも起きて、ここら辺の物を蹴散らしてくれれば良いのに・・・」


そう、ポツリと言った時である。

カタン、と音がした。

次いで、ギギギッ・・・とも。


「ねぇ・・・。まさかとは思うけど、怪異?」

「さァ?」

「どうせ、協力するつもりもないんでしょ」

「えぇ、まァ。私よりキミの方が重要ですカラ」

役立たずのディアンをほっといて、私は音を辿る。


音は近かった。

流れ込んでいるガラクタの川の一部が、小刻みに震えている。

幸か不幸か、手の届くところだ。

私はその場所に近づき、そっと、慎重にガラクタ達を剥いでいった。


大きな木枠の額縁やら、キャンバスやら(美術系統のモノが多かった)を

取り払うと、小刻みに動く白い物が見えた。

私と同じ、白磁の手。

何かを探るように、ずっと動いている。

現れた手を頼りに、次々とガラクタ達をのけていくと、

そこに埋もれていたのは、一体の人形だった。


手と同じく顔も白磁で、瞳は閉じ、長い睫毛が見える。

両の睫毛に一本だけ長い特徴的なものがある。

また、口とまぶたには薄く化粧が施されていた。

服はピエロのような、ゆったり、だぼっとした装飾の少ない物。

髪らしきものは見られず、頭には縦長の王冠のような帽子をかぶっていた。


「・・・怪異、ではないようだわ」

「あ、そーですカ。・・・ん?おやこの子は」

「何、知り合い?」

「いえ違いマス」

「・・・」

「あ、いえ。違いますケド。

この子もワタシ達のように意志があるんダナ、と」

「分かるの?」

「ここでは何かの動力無しに、人形やからくりが動くことはないんですヨ。

キミも、ワタシも、意志が生まれてこうして動いてますカラ」

「そうなのね。でも、どうやって意志が生まれたのかしら・・・?」

「さァ・・・ワタシも、知りませんネェ」

「ふぅん・・・。あら」


いつの間にか、目の前の人形が、ぱっちりと目を開けていた。

目の色は、金緑色。

「ようやく、助かりました。

急にガラクタの波が来て、埋もれてしまいまして・・・。

助けて下さったのは?」

「あ、ワタシです」

ディアンがすかさず言った。・・・協力なんて全くしてないのに!

「貴方、何にもしてないでしょう。

・・・私よ」

「チェー・・・」

「あぁ、貴方でしたか。本当に助かりました。ありがとうございます」


白い滑らかな肌に、にこりと笑みを浮かべていた。

小さな口から発せられるのは、少し高めの女性の声。

聞いていると、落ち着くような穏やかな声だ。


「私は、ミルティフォリア。人形使いの人形・・・」

そう言って彼女は両手に何かを持つ。

両手に一体ずつ、私よりもさらに小さなマリオネット。

白い手で器用に人形を動かしながら、彼女は続ける。

「私はここに遣わされた、この世界の住人を、導く隠者・・・」

マリオネット達が、ペコリと私達2人にお辞儀する。


「名前を知らなくては、貴方達を導けませんわ。

さ、貴方達のお名前を教えて・・・?」




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