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マキナの落とし子  作者: Doya tsuchi
第4章 廃墟の人形達
19/20

Ⅰ. 廃墟の剣士

「・・・ね、ねぇ。ディアン」

「なんですカー・・・?」

遠慮がちに声をかける私に対して、

ふてぶてしい返事が返って来る。


怪異を倒す、紫の剣士がいるという廃墟へ、

今私はディアンに案内してもらっているのだが、

どういう訳なのか、廃墟に近づくたび、

ディアンがどうも不機嫌になっている。


「・・・やっぱり、何でもないわ・・・」

「用がないなら話しかけないで下さいヨ。

心配しなくても、すぐ着きますカラ」

「・・・分かったわ」

変な空気のまま、店の並んでいた道をずっと奥まで進むと、

瓦礫のような建物が見えてきた。


「あそこが、廃墟デス。じゃ、ワタシはこれデ」

「え、来ないの?」

「別に行きたくないデスしー」

「あ、そう・・・」

やっぱり、何か嫌なことでもあるんだろうか。

いつもと様子が全く違ったので少し心配になる。


「そ・れ・ト・モ」

一度背を向けたディアンが、また振り返って言う。

「やーっぱり、ワタシのコト好きだからァ、

一緒に来てほしいんですカァ~?」

「・・・」


前言、撤回。

心配して損した。いつも通りだった。

「そんなことあって、たまるもんですか!」

灯り屋では言えなかったけど、ちゃんと言えた。

「じゃー、ワタシは帰りマース!」

ディアンはいつも通りの様子で帰っていった。


「全く・・・なんなの、ディアンは・・・」

溜息をつきながら、私は瓦礫の中―廃墟へと入ってみた。

何かの建物を、わざと壊したような場所だった。

ひびいる壁、倒れた柱が散乱する床。

誰かがいる気配は、全く感じられなかったが、

ここにいるという剣士を探しに、空間を進んでいく。


瓦礫が床に散乱していて歩きにくい空間だったが、

進んでいくにつれ、空間の中央の道が開けてきた。

一番道が広がった所―そこに、「彼」はいた。


「君・・・」

黒い剣を片手に座っている彼は、私に目を止める。

左耳の方に紫の花飾り。

肩に零れ落ちる髪は灰色。

じっとこちらを見る目は柘榴の赤。


声をかけられ、今更ながらに勝手に入り込んでたのを思い出した。

「あの、ごめんなさい。勝手に入ってしまって」

「構わないよ。僕も勝手に住んでるだけだから。それに」

立ち上がって、彼は私に歩み寄る。


「会えるのを待ってた。・・・ずっと」

「私のことを?貴方は・・・」

「ああ、そうか。君は全部忘れてしまっているんだったね・・・?」


私は黙って頷いた。

彼は、私にとって一体何なのだろうか。

私にとって、彼は一体どんな存在なのか・・・。

私には、分からない。


彼に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

謝ろうとした―が、

先に、別の言葉が口から出ていた。


「・・・教えて、貴方のこと。私に」


知りたい。確かにそう、思った。

彼自身のこと。

彼から見た、「私」。


そして、彼を見た時から感じていたこの、感情。

以前にも何処かで感じたような、不思議な気持ちを。

知りたい。思い出したい。


そんな思いのままに彼を見ると、

遠く昔を見つめるような―そんな、目が見えた。


「僕はデュランタ」


彼は笑む。その笑みと、名前。

それらは、確かに。

私の中の何かを打っていた。


私はあの不思議な感情を共にして、耳を傾けていた。

デュランタは、昔話を次々と紡ぎ出していく。









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