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マキナの落とし子  作者: Doya tsuchi
第3章 ガラクタ川の向こう
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Ⅱ. 裁縫師オンブレの店

おどけた道化師みたいな案内人の、

「耳寄り情報」で、結局私は街に出た。


「耳寄り情報」としてディアンが私に話したのは、

「街に出ればイイコトがありますヨ~」

というもの。

一体何処が、耳寄りなんだ。

これだけじゃ分かんない。


という思いを顔に思いっきり表した私へ、

ディアンはにやりと笑みを浮かべて、こう続けた。

「モチロン、キミの記憶の欠片に関係するヨォ・・・」

いつもとは違う物言いに、何かがありそうな気がして、

私はこうして街へ出たのだ。


私はガラクタを集めて作った街のなかに並ぶ店の中の一つ、

『Sewer・Ombre’s Shop』(裁縫師・オンブレの店)へ来た。

この手芸屋に来たのは、単に一番街に入口に近かったからだ。

店には以外に人がたくさんいた。


でも、なんだか異様に騒がしいような気がする。

しかも、何かが手芸屋から出てきた。

「・・・嫌な予感がするわ・・・」

「そーですネー」

「!?」

いつの間にか隣ににディアンがいた。


「貴方、いつの間に・・・!」

「ずーっと追ってましたヨォ?

ワタシを置いていくだなんて、ひどいナァ~」

「連れて行く気なんかなかったわ!」

「エェ~?ワタシとキミはパートナーみたいなもんでショ?」

「そんな訳ない。・・・それより」


店から飛び出してきた「何か」が、こっちに来た。

現れたのは巨大な裁縫鋏。

「怪異みたいね・・・」

こう何度も何度も出くわすといい加減慣れてしまう。


鋏は刃を開いたり閉じたりを繰り返しながら、

街の広間を突き進む。

進み方は本当に滅茶苦茶で、デタラメ。


「ホント、困ったことに、

キミがいるところには必ず怪異が来るんですカラ」

「仕方ないでしょう、そんなもの・・・。

私が怪異を起こしてる訳じゃないし、

そもそも勝手に向こうが来るんだもの!」

そう言って私はディアンから、彼が持つ黒い杖をひったくった。


「ちょっと!何するんですカ!!」

という声が聞こえたが、もちろん無視。

私は地面を杖で数回大きい音が出るように叩く。

鋏は向きをこちらへぐるりと変えた。

目も耳もないが、この音に対して反応出来るようだ。


私はさらに続けて杖を打ちつけ、人気のない方へと誘いだす。

相変わらず鋏は、刃を閉じたり開いたりしながら、

私が出す音の方へやって来る。

私は鋏の刃が閉じた隙に、一本足のような刃を杖で叩きつけてやった。


鋏は一本足状態だったので、すぐに倒れてくれた。

起き上がりもせず、すぐに欠片もぽろりと出てきた。

今までに比べて、ずいぶんとあっけない。


欠片を取り、小さくなった鋏も杖と共に持って、

ディアンの所に戻った。

「私の剣じゃ、前みたいに折られてしまうと思って。

ちょうどいい物持ってたから貸してもらったわ」


杖を返しながらにこっと笑って言ってやると、

杖を受け取りながらディアンもいつもみたいに笑って、

無言で・・・私の手の欠片をひったくった。


「!!何するの!」

「仕返しデス」

「返しなさい!」

「・・・」

「ちょっと聞いてるの!?返しなさいってば!」

「・・・嫌デース」

ディアンは私の記憶を前回の馬の時と同じように、

杖の中にしまい込んでしまった。


返せ、返さない、の言い争いをしていたところに、

「お嬢さん、大丈夫ですか!?」

と誰かが声をかけてきた。

「・・・え、えぇ。・・・あ!」

ディアンが走って逃げて行っていた。

しかも、走ってる方向、私の部屋の方だ。


「・・・えと、いいですか」

「えぇ・・・私に、何用かしら」

「どうも、ありがとうございました。

さっきの『怪異』、僕の鋏でして・・・。

ご迷惑をおかけしました・・・」

ぺこりと一礼してみせるのは、茶髪に橙色の眼の男。

齢は少年と青年の間ぐらいのように見える。

「裁縫鋏の持ち主ということは、貴方はあの裁縫屋の方?」

「はい、僕が店主のオンブレです」


私は彼に招かれ、彼の店へと入る。

あれだけ鋏が暴れまわったのだが、すっかり片付いていた。

私が外で戦ってる間に、片付けてたらしい。


「・・・いやぁ、それにしても驚いた。

貴方も、『怪異』と戦ってるんですね!」

私は用意してくれた椅子に腰かけながら話を聞いている。

かっこよかった~などと、やたら褒めて来るのだが。

褒めちぎると同時にオンブレは今、

私の針のむき出しだった剣の鞘を作ってくれている。

裁縫鋏のお礼、だそうだ。


「私もって・・・。なら、私以外にも、闘っている人がいるの?」

「はい!」

「へぇ・・・」

「って言っても、貴方以外に一人しか僕は見たことないですけどね。

男性の方でしたよ」

「男性・・・」


私以外にも、怪異と戦っている人がいるとは。

まぁ、そうじゃないと町中怪異だらけになっているだろうし・・・

ってあれ?

怪異を倒してるなら、私の記憶の欠片は・・・!?


私は思わず椅子から立ち上がって、彼に問う。

「あの、『闘っている方』がどこにいらっしゃるか、知ってますか?」

「え、えぇ、知っていますが。

でも多分僕よりかは、魔女さんに聞いた方が良いかと」

「・・・魔女?」

「この店の3つ隣の『灯り屋』の店主の方ですよ。

物知りですし、この町のこととか、怪異についてもよく知ってますよ」

「・・・そう。ありがとう」


「よし、できました!どうぞ!」

ほんの少しの時間だったのに、立派な革製の鞘が出来た。

「着ていらっしゃる服に鞘を通せるようにしましょうか?」

鞘入りの剣を渡しながら私に彼は聞いてきたが、

「構わないわ。手で持ってる方が、

突然襲い掛かられても応戦できるから。

鞘、わざわざありがとう」

「いえいえ!またいつでも、いらっしゃって下さいね!」


明るい声で見送られながら、私は「灯り屋」へと向かうことにした。




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