俺の輝かしき青春 1
工藤広作は美しい光に包まれていた。
乱反射する光が、まるで万華鏡のように頭上から照り返してくる光景は神秘的であり、ともすればいつまでも眺めていたいと思うほどに心踊るものであるのは間違いない。しかし、広作はそんな光に見苦しく脚をばたつかせ、もがきながら、思い切り腕を伸ばしていた。
「ぶはあっ!」 広作は過呼吸気味に呼吸を繰り返した。
「おい、大丈夫か?」ザバザバという水を掻きすすむ音が近づいてきたかと思うと、そんな声をかけられた。
「ああ……、なんとか」まだ乱れている呼吸を抑えながら、声のする方へと振り返った。そこにはザバザバという水を掻きすすむ音が近づいてきたかと思うと、片手で濡れた髪をかきあげながら、にやにやと笑っている色の黒い猿みたいな男、服部秀平が立ち泳ぎをしているのだった。
「あんまり無茶はするなよ。広作は素人なんだから、下手するとお陀仏だ」秀平はやはりにやにやとしながらそんなことを言うが、俺から言わせてもらうとそれは冗談になってない。実際に、先程もうっすらとあの世を覗いた気がする。「まあ、何事も慣れが肝心だ。なれるまで何度でもチャレンジしてみることだな。でも無理はするなよ。お前の分も俺がゲットしてやるからさ」秀平はそう言い残すと、まさしく野生児といった豪快なフォームで、大きな水飛沫をたたせながら再び海底へと潜っていった。
俺たちは一体なにをしているのか、それを語るにはまず、話を一週間ほど前に遡る必要があるだろう。