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80話・誰かを幸せにしようと考えているときが幸せ

弟視点です



姉の幼児化という、異世界トリップの定番イベントから幾日か過ぎました。


熱を出して寝込んで僕達を心配させましたが、平熱に下がった日の朝起きたら、戻っていたそうです。

風邪だったのか副作用だったのか、他には症状が出なかったので医療班の人達にも判断し難いようでした。



元凶はやりたい放題やってトンズラしていて、ボッシュさんは怒りの矛先を向ける場所がなくなってかなり不機嫌でした。


あのレイジーさんは、所謂チートですね。


しばらく食堂でのおしゃべりの話題はあの人の事でした。



「それにしても、子供っていいわねぇ」


「そうそう、近所の子達が避難してきてから、遊んでるのを見かけるとね、自分の子供も欲しくなってくるんだよね」


「きゃあ、アガサさん、気が早くないっ?」



イケメンの話から子供の話に飛びましたね。


アガサさんの子供だったら逞しく育ちそうです。



「あたし達より、トモの方が先でしょう。色々あったけど落ち着いてきたし、そろそろでしょ」


「そうですよ、いい加減先輩が機嫌直してくれないとこっちの身が持ちません」



ちっ。

ほのぼのした想像をしてたのに、いつも最終的には二人の婚姻成立がもうそろそろでしょ、という話題になります。


今日はパイクさんまで真剣になって頷いていました。まぁこの人はボッシュさん大好きだから……。



「確か婚姻は、立会人の元で契約書のようなものに署名して、贈り物を交換して終わりなんですよね?いつでもいいんですか?」


「いつでも……って、まあ特に決まりは無いわよ。身分の高い人はお披露目の準備もあるから、周りの都合も影響するでしょうけど。あの二人なら隊長の許可があればそれこそいつでもいいんじゃない?」



イケメン以外の話題にはてきぱきと答える女性騎士さん。

この国には大安吉日みたいのはなさそうです。


「リョータからも言ってくれないかな。隊長も口には出さないけど、気にしてるみたいだったから」



皆がジリジリしてるような気がしてきました。


延び延びになってるのは、実に間が悪かったというか運が悪かったというか。




プロポーズそのものや入籍しようとするとタイミングが合わなくてずるずると中途半端なままで過ごし、結果として別れた、なんて芸能ニュースを見た覚えがあります。


結婚が全てではないけど、それによって得られる安心というのもあるはずです。


うちの両親は失敗しましたが、観察の結果、ボッシュさんなら大丈夫なんじゃないかと思いますし。


ちょっと背中を押してみましょうか。





「ケラーさん、お疲れさまです。相談にのっていただきたいんですが」



ある意味一番マイペースなんじゃないかと思う、ケラーさん。

どんな騒ぎだろうと、仕事の手は止まらないし、興味があれば寝食を忘れて突き進む。


レオさんや、最近ではあのパイクさんでさえぐいぐいジルさんに迫っているのにこの人だけは付かず離れずのまま。



ちまちまと僕達の知識を刷り込むことで仕事の効率が格段にあがり、お陰で僕は他の皆よりも優先して話を聞いてもらえます。



「君が相談とは珍しいな?何かあったのだろうか」



初老の部下の人がお茶を煎れてくれて、優雅にカップを傾けながら目を細めるケラーさん。

先日の美形チートのレイジーさんとやらとは違って、甘さの無い美形なので、こうしていると遣り手弁護士みたいです。スーツと眼鏡姿が是非見てみたいです。



「僕のことじゃなく、うちの姉達をですね、いい加減どうにかしようということで、代表して来ました」


「書類の事だけ言えば、準備は出来ている。帰ってきてすぐだと思ったものだから」


「ソウダッタンデスカ」



僕の答えに、片方の眉が少しあがって見えました。



「棒読みになっているな。まあ、年齢の近い家族の婚姻は複雑なものか」



仰る通りです。



「ケラーさんは結婚しないんですか?」



からかわれた腹いせに、そんな事を聞いてみました。答えが反ってくれば、食堂に集うお姉様方にいい餌、いえ、土産話が出来るというものです。



「私の噂話くらいは聞いているだろう。どうにも、言い寄ってくる女性が信じられなくてな」



ケラーさんの噂と言えば、宮廷の女性に熱烈に迫られたというアレですね。

貴族の女性だとか、家庭のある人だとか、ライバル同士で陰湿な戦いが繰り広げられたといいます。


ケラーさんは青ざめて、目頭をグリグリ押してため息をつきました。


モテていた過去を思い出してこうなるって、どんな目にあったんですか……。

彼女が欲しい!と叫ぶクルト達が聞いたら、爆発しろと言われそうですね。





できれば砦の皆で祝いたいので、あっちの世界の結婚式、この場合は披露宴って言うべきでしょうか?

アガサさんに言わせると酒宴だそうですが、そういうのをやってもらいたいのです。


ただ、僕達が異世界から来たというのは上層部の一部しか知らないので、こっちの常識とかけ離れたことをやってしまわない為にも、知識人・ケラーさんの協力は必須です。


ただ現実の結婚式には行った事がないので、ドラマや映画の知識ですが、思い出しながら伝えました。

教会でやる結婚式のアレは省きましたがね。



色々話し合った結果、食堂でパーティーをすることに落ち着きました。まぁ物資に限りある砦ですからね。





「とにかく、良縁は速やかに結ぶべきだな。隊長にも話をつけるのだろう?嫌なことが続いたから、出来るだけ皆で祝えるようにしたいな。まあ、そのくらいの予算はなんとかなる。食堂にも通達しなくては」


頭から嫌な事を追い出すのに成功したらしいケラーさんは、突然やる気を出しました!

何かのスイッチが入ったようです、ポンプ開発の時みたいに。




考えていたよりも大事になりそうですが、お祝い事は皆で楽しむ方がいいですからね。

あの二人も怒りはしないでしょう、たぶん。





もっと間をあけずに更新できたらよいのですが。


今後はしばらく明るい話題です。

羨ましいです。



ここまで読んでくださりありがとうございます!

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