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69話・好物は独り占めしたいのが人の子ってもんでしょう

パイク 姉 視点です



久しぶりに、ほんっとうに久しぶりにボッシュ先輩と巡回!


怪我も心配だったけど、今は何よりトモとのことを聞き出さないとね。食事時や休憩時間の話題はその事ばかりで、分かってないのは本人達くらい。



「もう、誓約は済ませたんですか?」



遠回しに聞いたらはぐらかされそうなので、疑問をそのままぶつけてみる。毎回失敗してるからね。


何日か前、トモが部屋に戻らなかったという噂があって、あの娘を狙ってた若い奴等からはそれも調べて来いって言われたけど。


無理だよ。無理無理。



「まだだが?」



片方の眉をあげて答える先輩からは、夜の冷たい空気より更に凍てつく何か、または夜の闇より黒い何かが漂っているような気がするような気がする。


気のせいだよね?


好きな娘を手に入れられたんだから、今は何より幸せなはず。


僕と違ってね!



「あ、あの、広い部屋へはその後で移るんですか?家族用の宿舎は余ってるからいつでも大丈夫ですよ」



姉弟の部屋を分けてから、トモは部屋に戻る時に寂しそうだったから、喜ぶだろうな。家族でも例え小さな鳥でも、空っぽの部屋に帰るのとは大違い。ましてや大好きな人だったら。


考えると自然と胸が暖かくなってくる。


「トモの様子が変じゃなかったか?」


幸せな様子を想像しながら無言で進んでいると、ポツリと先輩が呟いた。



トモの様子はどうだったろう?

いつも通りに食堂で地道に働いて、リョータやイアン達とじゃれて――いつも通り過ぎるのが気になる、と言えば気になる。


強いて言えばにこやかに笑顔で接客。にこやかに?



嬉しいから笑顔が増えたかと思ったけど、あの娘だったらこういう時はあからさまに喜びを顔には出さないだろうなぁ。



「最近、やたら笑ってますね」


「あれは寧ろ機嫌が悪いような気がしてな……」



あ、ため息ついた。最近減ってたのに。


でも、どうしてだろう?


僕にとって食堂ではジルさんが優先で、二人を観察する輪から若干離れているから細かい様子まではわからない。




何となく考え込んでいたけど、先輩は肩をすくめてこの話題を打ち切った。


自分で何とかしなきゃな、と言って。


さすが!



今一歩踏み出せないでいる僕とは大違いだ。

だってジルさんに完全にふられたら、なんかもうこの砦に居られない気がする。それこそ『森』に突入しそうなくらいの事はやりそうだ、我ながら。










「そう言えば、先日レオが進言して警戒を強化させてるようだが、何か聞いてるか」



「雪の間は避難してきたりで、かなり増えてますからね。新顔さんも多くて大変なんじゃないですか」



うちの領は大きな町が無くて、住民の家と家がすごく離れている。農民だけじゃなく猟師や森番は、雪が積もってしまうと行き来し難くなるので、家族を砦に避難させる事が多い。


人が増えるとそこは商売の機会ということで、小規模な隊商も長く滞在するし、少し離れた小さな町からも色々遠征してくる――雑貨屋やら、まぁ、色気ふりまく女性やら。



興味ないなんて事はないしお世話になった事もあるけど。


あからさま過ぎるのもね、なんと言うか女性陣の視線が気になるし、何より本命の女性、ジルさんには、知られたくない。


恋人じゃなくても、不潔、とか言う人いるしなぁ。女の人って、難しい。



「レオが気にするくらいだからな、おかしなのが混じってるかもな」



対人関係におおらかなレオさんは、大抵の人と仲良くなってしまう。

女性は特にね。



そういう事を鑑みて、思い付くのは間諜が入り込んでる、という事態。

他国で育った者は、どんなに溶け込もうとしてもちょっとした点で違和感を醸し出す。

レオさんは野性の勘で捉えたのかもしれない。



でも、この国の中でも、うちみたいな貧乏な領地に来たってしょうがないと思うのだけれど。


考えすぎかな?







○ ○ ○ ○







うーん。

最近、悩んでいる。

ある意味贅沢な悩みなんだけど。



わざわざ嫌みを言いにお姉さんが来てから、視界にちらちら入ってきて、すごく気になる。



どうも近くの町から避難してきた中の一人らしいんだけど。

雪の間ずっと居るのかと思うと、胃が痛いよ。



ボッシュさんに確かめた訳じゃないけど、元カノなのかな、食堂で働いてる間は勤務態度をチェックされてるような気になるし、部屋は当然女性用の区画に振り分けられてるから廊下でばったり、もある。



「はぁ~、もう殴っちゃおうかな。面倒くさい」



「はぇっ?俺何かした?」



おっと、心の声が駄々漏れだった!


晩御飯をガツガツ食べていたイアンが、口に入れようとした肉をフォークから落としてしまった。

三秒ルールだ、ちゃんと食べてね。



「ごめん、ちょっと苛々してて」



「あぁ、そういや時間が合わないよな、最近。すれ違いは寂しいよな」



隣のセオがわざとらしく腕を組んで頷く。



「お兄さん達に相談したまえよ」



微妙に違う気もするけど、誰かさん関係なのは間違いないか。



「別に、会えなくて寂しいって訳じゃ…ちっちゃい子でもないし」



最近弟にじゃれてる女の子を思い出した。お母さんが回収しようとすると半泣きになる、アーニャちゃん。

一桁の歳の子と同じレベルで見られるのは何だかとっても嫌だぞ!



「心配しなくても、大丈夫だよ」



「……笑顔なのが怖いのはどうしてなのかな」


「おかしいよな、可愛いのに背筋がぞくっとした」



男二人がおでこをくっつけて、ぼそぼそ喋るな。



「今日はもう終わりだろ、先輩が巡回終わるの、部屋で待ってたら?きっと喜ぶよ」



ひそひそ話が終わると、二人はすごい勢いで残りのご飯を詰め込んで、目をキラキラ輝かせながらそう言った。

また、イアンがピッキングするんだね?

喜ぶ前に怒ると思うけど。それかため息。



一応抵抗したけど、でかい男二人には敵いません。


なんてね。


会いたかったから、背中を押してもらって勇気がでたよ。


ちゃんと会って、話さなきゃ。


自分の気持ちを伝えなきゃね。



いくら言っても言い足りないくらい、大好き。




なんと申しますか、大変お待たせしたにも関わらず


こんだけかい?!


な進み具合で申し訳ありません。



待っててくださった方、初めましての方、どうもありがとうございます。




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