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67話・将来が楽しみだ

ずっと弟



寒いです。ああ寒い。


迷子の推定美人さんを探して、僕とレオさんは砦の敷地内を歩き回ってます。

どうもレオさんは飽きっぽいのか、こっちにいなければあっち、と行ったり来たりです。



普段は用の無い所には、怒られないかもしれないけどなるべく近付かないようにしていたので、探検してるみたいで楽しいです。人を探している事を忘れてしまいそうなくらい。



「っかー、さみぃなぁ。固まってきたぜ」



顔をバシバシ叩きながらレオさんが叫んで、冷えた顔には刺激が強すぎたみたいで顔を押さえてしゃがんでしまいました。



「大丈夫ですか?一旦戻って暖まりませんか」



笑いそうになるのを我慢しながら声をかけます。

レオさんはボッシュさんとタメはるくらい強いらしいけど、何というか、いたずら三兄弟レベルというか、子供っぽい所があります。

強くて陽気で格好よくて、少年ぽさが残っているのが素敵、というのが女性陣からの評価です。

ケラーさんやボッシュさんは隙の無さが逆にポイントを下げてるらしいですが、玄人(何の?)にもてるそうです。



「あれあれ、見てみろ。あそこ動いてるよな」



しゃがんだままのレオさんが指差す方向を見ると、単なる雪道にしか見えませんでした。

首を傾げる僕を見て立ち上がると、レオさんはずんずん道から外れて雪の深い方へ進んで行き、しばらくしてひっくり返ったような声をあげました。


慌てて僕もレオさんが開いた道を辿って追い付くと、雪に埋もれていた何かを引っ張り出した所でした。



「レオさん…まさかとは思いますが、迷子の美人さんですか?この幼気な、鼻水垂らした少女が?」



全年齢対象ですか?そうですか。



「お?おぅ。あ、いや何その目。リョータよ、変な勘違いをしてないか?」



こんなに小さいとは思わなかった、とぶつぶつ言ってるのは置いといて、胸辺りまで雪に埋まっていたこの子が心配です。

震えてるし、垂れた涙と鼻水が凍りかけだし。



「ほれ、これ着ときな。すぐ暖かいとこに連れて行ってやるからな?」



おぉ、さすが。

自分も寒いでしょうに、レオさんはにっこり笑って重ね着していた防寒着で女の子をくるみました。


女の子は鼻をすすりながらレオさんと僕の事を交互に眺めて、毛皮に埋もれるようにしています。

意外と冷静?

迷子のわりには泣き喚きもしてないし、ただ寒さに参ってるような。



「そういえば、この子なんでこんな所にいるんでしょうね?何もないのに」



「ん~?迷子だからだろ」



レオさん適当すぎます。ざかざか雪を蹴りながら肩をすくめました。女の子を抱えてるのに、器用ですね?僕を追い越してさっさと帰ろうとしています。


ここは砦の本棟からも離れていて、あの森があるのと反対側、岩山の斜面と塀が合体している端も端、こんな子供が来て楽しいような場所じゃありません。



「ねぇ、こんな所で何していたの?」



後でいいじゃねぇか、という面倒くさそうに呟く人の肩越しに、ひょこ、と女の子が顔の上半分を覗かせました。



「でっかい、のが、いたから~っクシュ、おとさんよりでっかいの」



くしゃみしながらも、答えてくれましたね!イイ子だなぁ。何言ったかわからなかったですけどね。



「ほらな、さっさと……」



言いながら振り返ったレオさんが、僕を見て、それからその後ろを見て言葉を途切れさせました。

いつもと違う鋭い視線は初めて見る騎士としての顔。

無言のまま僕に向かって女の子を押し付けてきたので慌てて受け止めましたが、不安定な足場のせいで落とさないようにするのがやっとです。



「先、行け。な~んか、ちょっと」



え、ちょっとってナンデスか?


雪が積もって真っ白な空間を見ていると、どこに視点を合わせたらいいか分からなくて、不安になってしまいます。


女の子がまたくしゃみをして、反動でずり落ちかけたので慌てました。知的好奇心を満たすより先に、人助けを優先するべきでした。


重いですがなんとか落とさずに雪深い場所を抜けて、ちゃんと雪掻きされた道に出ました。



「リョータ、食堂で何か食わせといて。救護班と親連れて行くから」



相変わらず辺りを気にしながらもレオさんは行ってしまいました。


重いんですけど。

女の子に失礼かもしれませんが。

腕がぷるぷるしてきましたが、どうしましょう?






食堂に辿り着いた時には、腕はつる寸前。筋肉痛決定です。だって女の子を下ろした後も力が入らなくて固まったままでしたから。


こっちに来て、結構鍛えたつもりだったんですけど。



「これ、おいしーねー。でっかいおにいちゃんも食べる?いる?」



女の子は、あつあつのポタージュのような料理を出してもらってご満悦です。

涙と鼻水を拭いて、髪をとかしてもらって漸く人類に見えてきました。


こうして見ると、背中までの赤みがかった金髪、しっかりした眉、くりくりした暗緑色の目で美人の予感はしますね。まぁ見た感じ5歳以下っぽいのでわかりませんが。



しかし、僕の事をでかいと言うのは解せません。

同じテーブルにはもっとごつい騎士達がいて、興味深そうにこちらを見ているのに。彼らの事はどう表現するんでしょう?



「アーニャ!」



僕の子供観察は、食堂に泣きながら駆け込んできた女性によって中断させられました。


きっとこの子の母親。

走ってきた勢いのまま、アーニャちゃんを抱き上げました。

周りが見えない程取り乱して、泣きはらした顔は母娘そっくりです。


アーニャちゃんの将来は美人確定です。



遅れて来た救護担当の女性騎士が手早く診察すると特に怪我もなくて、食堂にほっとした空気がながれました。まぁ、少しシモヤケになりかけらしいですが、命に関わる事ではないでしょう。



「ありがとう、ございました。広くって、中々見つけられなくて」



まだちょっとしゃっくりのような声を出しながらも、お母さんは皆に礼を言うとへばりつくアーニャちゃんを連れて帰りました。


アーニャちゃんの捨て台詞「おにいちゃんもらってあげる」を残して。






夜、疲れてさっさとベッドに入った僕は、ロボを撫でながら、色々忘れていた事を思い出しました。


姉への指輪の話、戻って来なかったレオさんの様子がおかしかった事。



まぁ、人助けができたことだし、欲張るのはいけないですね。





お久しぶりです!


だらだらしすぎですね…

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