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番外編・派手にお仕事

マイヤーさんお下品です


食事中の方は読まないで下さい


ここが王都か、ちゅーくらいくたびれて暗くて汚い店やな。


全員とっ捕まえてどついたったらボロボロ悪さを白状しそうな、胡散臭い客しかおらん。


むかつくのはそこに溶け込んで疑われもせんちゅうことや。



清く正しく、お国のために日々精進しよるのにぃ。



「おっちゃん、おかわり」



おまけに酒は薄い。薄すぎる。



「兄さん荒れてんなぁ」



10杯目か、11杯目を飲み干した後、隣に男が座った。この店女っ気が無さすぎ。変な店やないやろなぁ?


「仕事について考えてんねや。怖い親分は人使い荒いし、連れには犯罪的に可愛らしい恋人ができるし、ええ人やと思っとったら腹黒いし」


愚痴りながら隣の男を観察する。

40か50か、どこにでもおる老け顔の男。白髪混じりのぼさぼさの茶色い頭に充血した目は、黒っぽい。

貧相な痩せた体はちょっくら猫背で、いかにも不健康そうで、ぼろっちい濃灰色の服。


右の耳たぶに黒子。


あれ?こいつちゃうん?


にこにこボッシュ改め腹黒ブライアンが言っとったのは?


向こうから寄って来るなんて、日頃の行いがええからやな!


「あぁ、世の中は要領のいい奴だけがうまい汁を吸うようにできている」


嫌な笑い。声を出さずに、引きつったみたいに笑っとる。気持ち悪ぅ。


「まぁあんたも飲みぃな」


店の親父に合図をして、男にどんどん酒を飲ませる。


暫らくすると、ふらつきながら便所へ立った。

気付かれん様に後を追って時間を置く。

だってほら最中は見とうないし?


音をさせずに扉を開き、閉めた扉を掃除用具でつっかい棒する。窓はなし。臭すぎや。

逃げ道を塞ぐと、尋問の効果はあがるんで。


「おっさん」


後ろから声をかけると、肩がビクッとする。

ここ一人用やもんな!

てか、まだなんかい。年とると時間がかかるっちゅーんはホントなんや。


「あんた、何でここにっ」


声が裏返ってる。アレを仕舞ながら顔をきょろきょろさせて逃げ道を探す。無いよん。


俺がにっこり笑って近づくと、男は必死で首を振る。



「ち、近づくな」


「なんもせぇへんよ?聞きたいことがあるだけ〜。楽しい噂聞いたんよね」


手で胸元を強めに突くと、呆気なく尻餅をついた。


うわきったな!最悪!俺のせいやけど!


座り込んだおっさんの、汚い床に着いた両手の外側に足を広げて立つ。

おっさんを跨ぐ形やね。傍から見たらちょっとあれやね。


「おっさん、面白いモン、売ってくれるんやて?俺人生に行き詰まってん。だからええ玩具が欲しいなぁ」


「そうか、あ、あんた客なんだな?そうか…」


おっさんは尻をもぞもぞさせ、目をさ迷わせて唇を舐めた。

打算と不審。


「おっさんが巻き込まれたないなら、教えてくれたら直接仕入れに行ってもえぇで」


にこにこ。はよしてくれんかな。鼻が曲がりそうなんやけど。


「仕入れ…じゃあ、なく。俺が作ってるんだ。俺の作品なんだ!」


はい?

こいつ、魔導士かいな!


おっさんは目を光らせ、口から唾を飛ばしながら作品の解説を始めた。


うーん。面倒やなぁ。

魔導士かぁ。生まれ故郷にはおったけど、小さかったからあんま覚えてないわ。

ここから逃げ出されん時点で駄目っぽいのは解るけどな!

道具とか薬とか作る分野の魔導士なんやろな。



こいつ引きずってったら任務完了やな。

仲間がおったらブラさんがなんとかするやろ。あんま手出ししたら苛められて帰れんなったら怖いし。


「そうかぁ、おっさん凄い人やったんやなぁ。手荒な真似して悪かったわぁ。飲み直そか」


床に着いた手を触りたないから、おっさんの服の前面を掴んで引っ張りあげ、腹に膝をたたき込んだ。

吐かんとってや〜?


ちょっとの間観察。よし、おっさんは静かになった。

棒を外して男を引きずりながら外にでたら、なんでか店中の視線が集中した。


「おっさん、こいつの分もお勘定な」


薄い割りにはそこそこの代金を取られた。

世知辛いなぁ。


意識のない男は重いわ。臭いし。


「兄さん、そいつは…」


「お持ち帰りや。なんや文句ある?羨ましい?」

椅子に尻が接着しとるように飲み続ける野郎が声をかけてくるので返事をしてやると、別の奴が進路を塞ぐように立ち上がった。 

なんやの、面倒な。


「太っ腹な兄さんよ、こっちにも奢ってくれよ。これからお楽しみなら財布だけ置いていっていいぜ」


不愉快な誤解をされとる?


「大事な金やねん。あんたにやったって小便になるだけやし、もったいないわ。そこどかんとこいつ持って通れんやろ」


せっかく穏便に済まそうと思ったのに。

なんか増えたわ。


まぁええ運動になるかな?



§§§§§§§





「どうして営業停止になるほど店が壊れたんですか」


不思議やねぇ?


「酔ってたんですか?」


「まさかぁ。水みたいに薄かったです」


「いい意味でも悪い意味でも、目的以上の結果を導きましたね、マイヤー君」


副隊長と話しとるようですよ、ブラさん。


笑顔を崩さずにこっちを見とるのに、圧力がかかる。


「店を片付けるので、手伝って下さいね」


ええ?そろそろ帰って寝たいんやけど。


「平時は民の為に尽くすのが防衛騎士ですよ。あなたは元気が有り余っているようですから、我々の手助けをしていただきます」



なんで俺は、どこにいても怖い人に使われるんやろ?


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