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42・一番の薬は愛情

弟 ボッシュ 姉 です



挨拶もそこそこに、というか王様が余計なことを言わない内に、そそくさと馬車に乗って帰りました。

ちょっとスカウトっぽいことを言いだしたので焦りました。あれがハウィットと同じ事だとなんで解んないんでしょ?生まれた時から上から目線の人にとっては何でもないことなのかな。


断れたから良かったです。あれ以上しつこかったら姉がキレてたかもしれませんね。

まぁお陰でというのも変だけど、とんでもない野望を聞いてしまったので、阻止しなくてはいけなくなりました。


未来のお嫁さんは自分で見つけたいですよ・・・。姉と2人の尻に敷かれる生活は悲しすぎます!

帰ったら砦のお兄さん達に知恵を仰がねば。



ボッシュさんの家に着いたらすぐにルシンダさん達が出迎えてくれました。



「あぁ、よくぞご無事で!大変な目にあいましたね」



今にも泣きだしそうな勢いで、逆にびっくりです。

感情の起伏が激しい方ですね。

それに、大変なのはボッシュさんなんですけどね〜。



「僕は眠ってただけだから何ともないですよ〜。でもトモとボッシュさんは休ませてあげて下さい。マーシャル君は僕と遊ぼうか」



事情を知らないマーシャル君がちょろちょろしてたら療養にならないですし。

簡単な字の勉強もしたいし絵本が読みかけだし。


流石に真剣な顔のマルキンさんにも挨拶して、僕達は子供部屋に向かいました。




○ ○ ○ ○





肩の傷が熱を持って疼くのも不快だが、今はそれだけではない、と自分で解っている。


今回の謁見は、レヴァイン卿を捕らえるための仕掛けだった。

王家を脅かす勢力を早めに摘み取るのは当然だが、なぜ子供達を使うのか。

なぜ俺とアガサに明かされなかったのか。


所詮、騎士は使い捨てということか。身に染みて解ってはいるが、たまに情けなくなるな。


そんな事よりも、今回の件についてリョータが感付いたという。

囮にされ殺されかけたというのに、表面上は変わりなくトモやアガサを気遣い、笑っている。

少しは疲れているようだがどこか他人事のように冷静だ。


その素質は王が欲しがったように政治向けだが。


痛々しく哀れだ。


トモもリョータも、自分達が誰かに守ってもらえると思ってないのではないだろうか?




帰宅すると、珍しく真面目な顔のジジィに呼ばれた。トモは着替えに行き、リョータはマーシャルと共に遊ぶという。



「ロディから簡単に事情は聞いている。まずは、よく守った」


「あんたは知ってたのか、今回のこと」


「知っとれば止めるわ」



ジジィは苦々しげにそう言った。まぁそうだろうな。



「ロディを責めてやるな」



ぽつりと言う姿が驚くほど小さく見えて、思わず笑いが零れた。



「兄に八つ当りをするほどガキじゃない。勅命は絶対だ」


「…そうだな。あの子等は大丈夫か?」


「どうだろうな。リョータは知っててあれだ」



そう言うと、ジジィは肩を落としてため息をついた。机の上の書類が飛ぶ。



「あの子はお前さんに似てる。決して弱みを見せまいとする所が」



余計なお世話だ。


いい加減目眩がしてきたので、自分の部屋に避難することにした。


トモの顔が見たかったが、止めておこう。



○ ○ ○ ○




疲れた。あ〜疲れた。

寝たのにな。寝すぎか?


寝てる間に着せられてたネグリジェ?があったかいし楽だったからそのまま帰りたかったんだけど、皆して怒られた。


王様とか皆に見られたからもう遅いと思うけど。別にスケスケじゃないんだからいいじゃん。普通に可愛かった。



帰る前にお城のメイド部隊に着せ替えされたんで、ルシンダさんにもっと楽な服をお願いした。

お姫様はいっつもあんな格好で大変だな〜。本物のお姫様と王子様に会えなかったのはザンネンだ。テレビでは見たことあるけどね!現代版は夢が無いから。



「まぁ、トモ、額に怪我をしたのねっ?!」



髪を梳かしていたルシンダさんが、この世の終わりみたいな声で言った。櫛を持つ手がブルブル震えて、今にも泣きそう。



「怪我?ってしてないよ?ん?あ、倒れた時に打ったのかも。全然まっったく痛くないからね」



意識飛んだから覚えてないんだよね。かさぶたになりかけだし。





「あれ?ボッシュさんは」



居間に戻るとマルキンさんが陽なたぼっこをしながら本を読んでいた。

手招きされて寄って行くと撫で撫でされる。

ふふ。照れるぜ。



「あいつは情けないことに部屋でボロっちくなっとるよ」



厳しいっすね!これが漢の教育?

しかしこれがチャンスだ。



「あ、私、看病してきますねっ」


「お前さんも、疲れてるだろ」


「イエ全く。寝すぎて多分一晩中でも平気です」



マルキンさんはなんとも言えない微妙な顔をして私を見た。うぅ、病人が出て喜んでるみたいに思われたかも?



「無理はせんでくれよ?」



そう言って、ポン、と軽く頭に触られた。


よし、お父さん公認だ!





ボッシュさんの部屋の前に来ています!昔見たテレビみたいだ。寝起きに行くやつ。起こしてはいけないので、緊張するぅ。

熱があったので、水と手ぬぐいも何枚か用意した。私の手も冷え症だから氷代わりになりそうだ。 

よし、突入!



そっーと入った部屋は、深緑色で統一されていた。

子供部屋と違って全面絨毯じゃなくて硬い床がちょっと寒そうだけど。


砦の部屋と同じように、家具は少ないけどその分よく解らないものが転がっている。

透明な水晶玉?とか、いろんな長さの剣、謎の木箱。やっぱり本棚には色々詰まっている。読めたらいいんだけど。


机にたらいをそっと置いてから、手ぬぐいを浸した。絞ったそれを持って、慎重に、ボッシュさんの眠るベッドに近付いた。

脱いだ上着やシャツが散らばっているのを拾って、それも机に置いた。水差しとグラスがあるから、水分は摂ったみたいだね。


苦しそうな息をして、眠っている。


ぎゅっと心臓を掴まれたみたいに、胸の奥が痛い。


汗の浮いた顔と首をそっと拭くと、うっすら目が開いた。やばい、起こしちゃったかな〜。



「ト、モ?何やってる」



わりと冷静に聞かれた。

前に部屋に忍び込んだ時の事を思い出して、顔が熱くなった気がする・・・。



「お見舞い、看病、しようと思って…嫌だった?」



ドキドキしながら聞くと、ボッシュさんの手が掛布団から出てきたから、思わず握る。

その手は引っ張られて、熱い顔にあてられる。

顔、私の手、ボッシュさんの手。ああぁ熱い。


ボッシュさんは、今まで見たことのない、なんというか、うっとりと、気持ち良さそうな顔をしている!

やばい!なにそれ!反則だよっ!

嬉しいのに今すぐ逃げ出したいよっ?!



「トモ……ここにいて」



ふわぁ〜!!


心臓が持たん!


『いて』って言ったよ。

ボッシュさんが私におねだりした!

弱ってるボッシュさん可愛すぎ!赤い顔で、潤んだ目で見ないでぇ!


頭の中の永久記憶に保存した。


恋で人は死ぬと思う。



それから、ボッシュさんが眠って手が放れるまで悶えた。



そっと手を伸ばして、頭を撫でた。

可愛い可愛い。


私がしっかり看てあげるからね。



トモちゃん若干危ないですね

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