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41・そろそろお暇します

ずっと姉視点です

弟とボッシュさんと3人でだらだらしていると、部屋の外から誰かが走ってくる音がして、ズバーン!と扉が開いた。



「アガサ!」



開いた瞬間、ボッシュさんは椅子から立ち上がって、私達が座っているベッドの前に立ち塞がっていた。

一瞬緊張したけど、入って来たのはアガサさん。


実を言うと忘れてた。



「ああ、良かった!2人とも大丈夫そう!ごめんよ、私が役立たずで!」



大きな体を縮める様にしてアガサさんはベッドの横に膝をついた。

ボッシュさんはまた元の椅子に座り直して、ため息をついている。傷が痛むんだろうか?



「やだなぁ、アガサさんが気に病むことじゃないですよ?」



弟はにっこり笑って、アガサさんの手を取った。



「僕達は言ってみれば客の立場だったんですよ?警備の不手際で変なもの飲まされちゃったんだから、アガサさんも被害者ですよ」



アガサさんの罪悪感を晴らすように、優しく声をかける弟。

知らない間に大人っぽくなってきたなぁ。

あと、タラシになりそうでちょっと不安。




「私も、早く帰りたいな。せめてボッシュさんの家は無理かな?」



ぽつりと言うと、弟にシーツを握っていた手の甲を叩かれた。


このお城は綺麗だし、王様もいい人だったけど、なんというか、落ち着かない。



「ここは居場所じゃない」



また私が呟くと、ちょっとぐったりしていたボッシュさんが立ち上がった。



「じゃあ、ちょっと兄貴に言ってくる。アガサ、ここは頼む」



お兄さんに挨拶して、帰らせてもらうのかな?

勝手に帰ったら失礼だもんね。



「それにしても、陛下のおわす城内であんな事が起きるなんてねぇ。近衛はともかく警備騎士がなっちゃいないよ」



アガサさんが腕組みして憤然と言った。同じ警備の人として許せない点があるんだろうなぁ。

いつも真面目にやってるもんね。



「それにしても、あんたら本当に体は何とも無いのかい?あたしは夜には目が覚めたのに、あんなに長く効き続けるなんて」



体質の違いかな、と言おうと思ったけど、ちらっと見た弟が目配せしてきた。 なになに?



「アガサさんは僕達より大柄だし、鍛えているからあんまり効かなかったんじゃないですか?僕達は慣れない旅で疲れていたし」



あ、そっか。アガサさんは異世界から来たこと知らないんだった。面倒臭いな。

表向きは隊長の養子になったので顔見せとか、ひどい目に遭った可哀相な子(私だ)を王様が直々に労うとか、お世話になったマルキンさんにご挨拶とか、そういう事になっていた。


本当は何だったんだろう?やっぱり王様も珍獣が見たかっただけ?

遠距離を呼び付けるところがすごく王様っぽいよね!





それからしばらくダベってると、扉がノックされて開いた。



「失礼します。陛下が御越しです」



初見の近衛騎士さんが入って扉を支えると、ロデリックさんとボッシュさんを従えた王様が入って来た。


ボッシュさんはさっきより顔色悪い。早退?させてもらえないのかな。



「…やぁ。トモも気が付いたのだな。医師からは薬が抜ければ問題ないと聞いている。だが念のため暫らくは安静にするとよい」



王様はわざわざ顔を見に来てくれたらしい。

お疲れ?それとも罪悪感?なんともいえない顔をしてるなぁ。



「お前達にはできれば城に残ってもらいたいが、の」



とんでもない事言いやがったよ!あいつと同じか!



「有り難いお言葉ですが、あんな怖い目にあったところに居られる程、僕達図太くありません」



弟がにこやかに拒絶する。なんだろう、丁寧なのに失礼な気がするよ?



「君もかね?婚約者と居られるように、彼を近衛に取り立ててもよい。私としては姉弟2人共欲しい。特にリョータ、君はその年にしては知恵が回るようだし」



王様はボッシュさんを手だけで示して言った。

近衛の人と違ってだるそうに立つボッシュさんは、物凄〜く不機嫌な顔をしている。

というか。上から目線がむかつく。いや、王様だから当然なんだけど。


だいたい何で弟狙いなの?この国の人って。

危険だわ。



「弟はまだ14歳です。誉めて戴いて嬉しいんですけどまだ子供です。私もただの子供です。珍獣でもないし何の価値もありません」



敬語って難しいな。どう言ったらいいんだろ。



「私は弟が大人になるまで守る義務があるし、隊ちょ――義父みたいに立派に育てて、可愛くておとなしいお嫁さん見つけて一緒に遊ぶという野望があるのだから!だから弟は渡さないし私達は帰ります。ここは私達の居場所じゃない」



む、混乱の余り余計な事まで言っちゃった。弟が半目になって引きつっている。



「…弟想いなのだな。いやお互いか」



王様が微妙にずれた反応をしてくる。諦めたの?



「先に生まれたからには、当然だと思いますけど」



まぁ、相続争いで殺し合いなんて事件も聞いたことはあるけどさ!

普通は大事にするよね。

そこのでっかい兄弟だって同じ筈だ。


暫らく王様が黙ってしまったので、居たたまれない雰囲気になった。



「まぁ、解ってはいたのだが。諦めるとしよう。さて子供達。レヴァインは追放刑となる。初めての試みだが、腑抜けた貴族にはよい見せしめになるだろう」



王様はちょっと意地悪そうに笑って、弟をちらっと見た。ほんとに諦めたんだろうなぁ?


そして言うだけ言うと、お供を連れてさっさと部屋から出て行ってしまった。



「はぁ、アンタ達は物怖じしないねぇ」



文字通り胸を撫で下ろしてアガサさんが言った。大げさですなぁ。



「ちょっと、トモ、色々言いたいことが…」



にじり寄ってきた弟を躱して、ボッシュさんの腕を掴んだ。

早く帰ろう。

なんだか倒れそうだ。



「ボッシュさん平気?」



いつものように撫でる手が熱い。やばいんじゃないのかな。



「じゃあ行くか。馬車は頼んである」



全然なんともないですよーという顔で言うから、しょうがない、騙されてあげよう。

戻ったら看病してあげる。まだお部屋チェックしてないし!

多分 次回でトモ待望の

ドキドキお部屋訪問☆

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