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30・いまさらですが

弟 姉 視点です

「2人には、王都へ行ってもらうことになった。雪が積もる前に行って帰って来なさい」



ある朝、久しぶりに隊長室に呼ばれた僕と姉は、ラーソン隊長に重々しく告げられました。



「あちらではフォザーギル家に滞在することとなっている。同行者はアガサ、ボッシュ、マイヤーの3名」



そこで姉がおずおずと手を挙げたので、隊長は無言で首を傾げて発言を促しました。



「ふぉざーぎる、さんてどなたですか」


「……ボッシュの実家だ。今はマルキン殿と、長男のロデリック殿がいらっしゃる。城に泊まるより安全であるし、気安かろう」



そう言って僕達を交互に見て、珍しく微笑みました。ボッシュさんのご家族はとてもとても気になります。どんなお家かチェックしなくては。

マルキンさんには誘拐事件でお世話になったのにお礼も言えてないし。


単純に、遠出が楽しみでもあります。遠足気分とでも言いますか。



同行者が、ボッシュさんはともかくアガサ姐さんとマイヤーさんという面子なのが不安な所ですね。

それぞれ皆、強すぎる個性とマイペースさを誇っているし。まぁアガサさんはトモの為の人選なんでしょうね、おとーさん。



「ボッシュさんのお兄さんかぁ…」



部屋に戻って来て、姉が首を傾げて呟きました。



「あんまり想像つかない。兄弟か。お兄さん1人なのかなぁ?でも末っ子って感じしないよね」


「確かに。家族の話とかしないの?」



僕が聞くと、困ったような顔をしてベッドの上で体育座りをしました。



「うん。おじい…マルキンさんの事を聞いたら遠い目をして、あれのことは聞くなって言うんだよ」



なんだそれ?親子仲が悪いのでしょうか。これはマイナスポイントですね。


ボッシュさんのお宅拝見はいいとして、ナマ王様に会うのはちょっと緊張しますね。王族なんて当然テレビで見たことしかないし、実際に統治をしている現役バリバリ。どんな人なんでしょうか。もっさりヒゲがあるイメージなんですが。 



「そう言えばさぁ。この国なんて名前なんだろうね」



考え事をしていると、突然姉が言いました。


国名?


そう言えば知らなかったですね。



「まぁ、今更聞きにくいしその辺はスルーね」



話題を振っといて、姉はあっけなく打ち切りました。この辺は相変わらずです。まぁ、色んな人と話をしていたら、国の名前がでることもあるでしょう。




「マイヤーさんてどんな人なの?この前ちらっと会ったんだけど。隊長呼び捨てだったよ?」


「すごく強くて、よその国から移住?してきたらしいよ。なんかいっつも剣に触ってるんだ。すごく若く見えるけど…呼び捨てはすごいね」


変わった人多いよな、と思います。

よく姉にちょっかいかけてる3人組は、いたずらに命と騎士生命をかけているかのように、色んなとんでもない事をやっていますし。

ヒゲの副隊長さんを落し穴にはめたり、レオさんの練習用の剣の鞘に油を流し込んだり。たまに砦を抜け出して、綺麗なオネーサンのいる店に行ったり。



この砦の人が個性的なのか平均的に愉快なのか。


都に行くのが楽しみです。





○ ○ ○ ○





「トーモー!都に行くんですってね、もう用意はできた?」



隊長から指令?を受けた次の日の夜、ジルさんがやってきた。

アガサさんから貰ったトランクには服とか下着とか適当に詰め込んである。それを見てジルさんは苦笑し、持っていた包みを手渡してくれた。



「化粧道具とか、細々したものね。アガサには借りられないわよ?」



女子は色々必要なのです。有り難く貰っていくことにしました。

丁寧な手つきで荷物を整えてくれるジルさんに、気になっていたことを聞くことにした。



「この前の…パイクさん」



名前を言った途端、バン!とすごい音を立てて蓋を閉めたので、部屋の隅で遊んでいた弟と毛玉達が飛び上がった。びくびくしながらこっちを見ている。



「何もないわよ?」



引きつった顔で言っても説得力無いんだけどな。

じーっと見ていると、ジルさんの顔は段々赤くなってきた。



「ほんとだってば!あ、あんなことトモが言うから、なんか意識しちゃうのよ?最近」



てことは、やっぱり本気でパイクさんのことはなんとも思ってなかったのか。



「「不憫…」」



いつのまにか寄って来ていた弟とハモった。



「ジルさん、僕達がいない間パイクさんのことお願いしますね。ボッシュさんも行くから寂しいと思うんですよね〜」



弟よ。微妙に失礼だと思うぞその台詞。あ、でもなんかジルさん頷いてる。

いいのか。楽しみだなぁ。



明日はもう出発だ。

やたら乗り気なアガサ姐さんが決めた。ボッシュさんは嫌そうだったけどため息まじりに頷いて、マイヤーさんはいつでもいい感じなことを言っていた。

姐さんは普段は砦内の警備だから、遠出が楽しみらしい。

やっぱ遠足のノリかな。


私も楽しみになってきた。

ボッシュさんの実家――ということは、ボッシュさんのお部屋!好きな人の部屋ってテンションあがる。

うふふふ。


「トモ、ボッシュさんが一緒で良かったわね」



立ち直ったジルさんがそう言って、1人でうんうん頷いた。 



「マイヤーさんも強いし、安心ね」



ん?



「寒い季節って、薄暗いからかわからないけど、野盗が多いのよね」



なんですと?



「あの2人は騎士団の中ででも並外れて強いらしいから。やっぱり、隊長さんはあなた達を大事にしてるわね〜」



感心したように言うジルさんを横目に、弟と顔を見合わせてしまった。

そう言えば初日に言われたわ。危ないからって。


ボッシュさんには初日から守られてたんだなぁ。パイクさんもだけど。うん。


何か恩返しができたらいいけど。

鶴や宇宙人だって受けた恩は忘れないのだ。

細かいことに拘らない姉弟です。

国名聞いたってどうせ知らないんだからいいかー、

というノリで放置していた二人。

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